21 女王の心
■登場人物■
ラクラミキオアラ…主人公の女の子。物語が大好き。『オズの魔法使い』のドロシーや『モモ』のモモなど、大好きな物語の主人公たちに会うのが夢。
ドイナ…ラクラミキオアラが本屋さんで出会った女の子。ムネアカヒタキという鳥の妖精。物語が大好き。
ペイズリー3世。…魔法使いの少年。偽名はコーネル。
ペイズリー1世…3世の祖父。偽名はゲオルゲ。
ガブリエラ…森の女王。「物語の宝石箱」の所有者。物語が大好き。
エレナ…樹の精霊ドリュアスの一人だったが、人間であるアレックスと恋におち、ともに生きていくために、精霊として長く生きられる命を捨てて人間になった。物語が大好き。
アレックス…エレナの夫。ペイズリー1世の友人だが、1世よりずっと若い。これまた物語が大好き。
バズム…エレナの家で飼われている黒猫。
■物語が大好きな登場人物がやたらたくさん出てくる物語です!笑
しばらくすると、ラクラミキオアラの心の中に、森の女王ガブリエラの声が響きました。その声はエレナにも、ドイナたちにもきこえていません。ラクラミキオアラだけが、きくことのできる声なのです。
"ラクラミキオアラ…きこえる?"
"はい!きこえます!"
"わたしは、ガブリエラ。この星にある、すべての森をつかさどる女王なの…。でもね、わたしにも、あなたのように小さな子供だった時期は、あるのよ"
ラクラミキオアラは、"えっ。そうなんですか?"と、心の中で言いました。
"もちろんよ…。それに、今だってわたしは、寂しいと思うときもあるし、傷つくときもあるの…。そういう部分は、あなた達と、何も変わらないのよ"
ラクラミキオアラは少しの沈黙のあと、こう言いました。
"そうなんですね。でも、きっと、そうなんじゃないかと、わたし、思っていました"
ガブリエラは少し驚いたような声で、
"どうして、そう思っていたの?"
とききました。ラクラミキオアラは、
"だって、寂しいと思ったり、傷ついたりしないような人が、物語を好きになるわけ、ないですから"
とこたえました。
"ラクラミキオアラ…あなたって、わたしが感じていた通りの、素敵な子ね。わたし、早くあなたに会いたいわ。あとね、ひとつ、あなたにお願いしたいことがあるの"
"えっ。なんですか?わたしに出来ることがあれば、何でも言って下さい!"
"エレナを、連れて来てほしいの。わたしは、あなたにもすごく会いたいけれど、エレナにも、会いたくてたまらないの。自分からエレナに『人間になる決意をしたのだから、もう、わたしのところに来てはいけない』なんて、えらそうに言ったくせに、本当に情けないわよね…でもね、エレナは、たくさんいるドリュアスの中でも、一番、わたしと気が合ったのよ。物語が好きだっていう共通点もあったし、わたしは彼女のことが可愛くて仕方なかったの。ドリュアスの中には、わたしに冷たくする子もいるのよ。わたしにあまり興味が無いような子もいるしね。でも、エレナは違った。いつも、わたしにやさしくしてくれて、わたしのそばにいてくれたのよ。自分でも本当に馬鹿だと思うけど、わたし、エレナがいない毎日が、こんなにも寂しくて、むなしいものだとは思っていなかったの"
ガブリエラの声は、泣いているようにきこえました。
"ガブリエラさん!あなたは、エレナさんのためを思って、心を鬼にして突き放したんです。だから、ぜんぜん、馬鹿なんかじゃありません!情けないなんて、思わないで下さい!わたしが必ず、エレナさんを連れて行きますから、楽しみにして、待っていて下さいねっ!!わたしとも、たくさんたくさん、物語についてお話をして、盛り上がりましょう!"
"ありがとう…ありがとう…ラクラミキオアラ。あなたって、なんて、やさしい子なんでしょう…まるで、太陽のような子ね、あなたは…"
ガブリエラは相変わらず泣いている声でしたが、さっきとは違って、それは嬉しい涙、温かい涙を流している声でした。
"ラクラミキオアラ。その家に、バズムっていう黒猫がいるでしょ?その猫ちゃんはね、元々は、わたしが飼っていた、たくさんの猫の中の一匹なの。その子が、わたしのいるところまで、道案内をしてくれるわ。エレナはもう人間になっているから、無理なのよ"
ガブリエラの言葉をきいて、ラクラミキオアラは驚きました。
"えっ!?バズムちゃんに、そんなこと出来るんですか!?ふつうの猫に見えますけど…"
"うふふ。その子ね、本当は、ぜんぜん、ふつうじゃないのよ。その子、樹齢千年を超える黒檀の樹の精霊なの。だから黒いのよ。その子、いつもノンビリ寝ているだけで、賢そうには見えないと思うけど、実はこの星の生態系に関することは全て把握しているし、あなたに少しすりすりしただけで、あなたの心の中は全て分かってしまうのよ。ものすごい猫ちゃんなの"
"え〜っ!!!!!"
ラクラミキオアラはあまりにも驚いて、心の中だけではなく、本当に大きな声を出してしまいました。なので、周りにいたエレナ、ドイナ、3世、1世は、びっくりして少し身体が跳ね上がりました。




