19 黒猫バズム
■登場人物■
ラクラミキオアラ…主人公の女の子。物語が大好き。『オズの魔法使い』のドロシーや『モモ』のモモなど、大好きな物語の主人公たちに会うのが夢。
ドイナ…ラクラミキオアラが本屋さんで出会った女の子。ムネアカヒタキという鳥の妖精。物語が大好き。
ペイズリー3世。…魔法使いの少年。偽名はコーネル。
ペイズリー1世…3世の祖父。偽名はゲオルゲ。
ガブリエラ…森の女王。「物語の宝石箱」の所有者。物語が大好き。
エレナ…樹の精霊ドリュアスの一人だったが、人間であるアレックスと恋におち、ともに生きていくために、精霊として長く生きられる命を捨てて人間になった。物語が大好き。
アレックス…エレナの夫。ペイズリー1世の友人だが、1世よりずっと若い。これまた物語が大好き。
■物語が大好きな登場人物がやたらたくさん出てくる物語です!笑
「さ、どうぞ、中へ入って」
ラクラミキオアラたちはエレナにそう言われ、二人が暮らす家の中に入りました。決して広い家ではありませんでしたが、ラクラミキオアラは"とても温かくて、やさしい感じのお家だ"と思いました。棚の上には、二人が肩を寄せている写真や、可愛らしい陶器の人形が置かれていました。そして食卓の上の大きなお皿には、焼きたての、とっても美味しそうなコルヌレッテがたくさん乗せられています。食卓があるダイニングの横には、ソファが置かれたリビングがあり、ソファの上で黒猫が丸くなって、ラクラミキオアラの顔をじっと見ていました。
「きゃー!猫ちゃん!可愛い!!名前、なんていうんですかっ!?オスですか、メスですかっ?」
ラクラミキオアラが興奮してアレックスにききました。
「オスだよ。バズム(※ルーマニア語で『童話』『物語』を意味する言葉)っていうんだ。」
「きゃー!バズムちゃん!本当に、物語に出てきそうな猫ちゃんですね!!」
「アハハハ。そう?バズムはいつも、寝てるか、食べてるか、ノンビリしてるかの、どれかだけどね!」
アレックスはそう言って笑いました。ペイズリー3世はそれをきいて、
「やばい、おれといっしょだ…」
と言いました。エレナは、
「でも、バズムはとってもやさしい子なのよ。私が本を読んで感動して泣いていると、何かつらい目にあって泣いているんだと勘違いして、心配そうな顔でニャーニャー鳴きながらすりすりしてくるの」
と言って微笑みました。
「え〜!バズム君、やっさし〜い!!」
ラクラミキオアラはそう言って、バズムの頭をナデナデしました。バズムは目を細めて、気持ちよさそうにしていました。
「お、おれだって、やさしいところ、あるんだぜっ!」
ペイズリー3世がそう言うと、ラクラミキオアラは、
「ペイ…コーネル、なにバズムちゃんに対抗意識燃やしてるのよっ!」
と言って笑いました。ラクラミキオアラは、間違えてペイズリーと呼びそうになったのですが、ギリギリのところで気づいたのです。"コーネルっていう設定なのを、忘れないようにしなくちゃ"と、ラクラミキオアラは思いました。
「さ、みんなでコルヌレッテを食べましょう。手を洗った方がいいわね。みんな、こっちに来て」
エレナはそう言って、洗面所にみんなを連れて行きました。アレックスは玄関からエレナに向かって、
「エレナ!子供たちにはオレンジジュースを飲ませてあげて!コーヒーが切れてたから、ちょっと買ってくるね!」
と大きな声で言いました。エレナが「は〜い!」と返事をしたのを確認して、アレックスは外に出て行きました。
洗面所から戻ってきた子供三人は、食卓の椅子に座りました。食卓の椅子は四脚しかなかったので、エレナは「私はソファに座りますから、ゲオルゲさん、ここにお座り下さい」とペイズリー1世に言いましたが、1世は「いや、それでは、意味が無いのじゃ。この子たちは、おぬしから話をききたくて、ここに来たのじゃ。わしが、向こうに座る」と言って、ソファの方に行きました。そして、
「おぬし、なかなか貫禄があるのう」
と言ってバズムの横に座り、頭をナデナデしていました。




