18 エレナとの出会い
ラクラミキオアラは小さな子供ですが、アレックスの話をしっかり理解しました。それはドイナやペイズリー3世も同じでした。三人が理解したのは、とても素敵で、そして、とても重い話でした。
樹の精霊ドリュアスだったエレナは、精霊として長く生きることよりも、人間に生まれ変わって、愛する人と短く生きることの方を選んだのです。ラクラミキオアラは、しばらく何も言えませんでした。アレックスと生きることを選んだときのエレナの気持ちや、その決断を初めてきいたときのアレックスの気持ちを想像すると、言葉が出てきませんでした。そのかわりに、涙が溢れてきました。横を見ると、ドイナの目からも涙がこぼれ落ちそうになっていました。
「アレックスさん。おれ、まだ子供だし、何も分かっちゃいませんけど、アレックスさんとエレナさんの生き方、かっこいいと思います。すごく、素敵だと思います」
ペイズリー3世が、アレックスの目を真っすぐ見て、言いました。ラクラミキオアラとドイナは、涙を指でぬぐいながら、黙ってうなずいていました。
「ありがとう」
アレックスが3世に向かって、やさしい笑顔で言いました。ラクラミキオアラは、
「わたし…会いたいです。エレナさんに、会ってみたいです!」
と言いました。アレックスはラクラミキオアラの顔を見て、静かに、やさしく微笑みました。
「ぜひ、会って下さい。エレナもきっと、喜びます。彼女も本を読むのが大好きなので、きっと話が盛り上がるでしょう。ガブリエラに会う方法も、教えてくれると思います。だけど君たちは帰りが遅くなると、ご家族が心配してしまう。お茶会が終わってからぼくの家に行くのではなく、今からすぐに、行きましょう」
アレックスの提案をきいて、ラクラミキオアラは目を丸くしました。
「えっ。それはちょっと、悪いですよ。だってアレックスさん、今日はバックギャモンをするのを楽しみにして、このお茶会に来たんですよね?」
ラクラミキオアラがそうきくと、アレックスは、
「アハハハ。大丈夫ですよ。ぼくも、ここでバックギャモンをしているより、君たちとエレナが楽しく会話するのを眺めている方が、ずっと楽しい」
と言いました。ラクラミキオアラは、"なんて、やさしい人なんだろう"と思いました。
「ありがとうございますっ!アレックスさん!」
ラクラミキオアラはお辞儀をして、ていねいにお礼を言いました。
「ほほほ、良かったの、ラクラミキオアラ。それじゃ、皆で向かうとするかの。アレックスの家に」
ペイズリー1世がそう言って微笑むと、みんなも笑顔でうなずきました。
五人は楽しくおしゃべりしながら歩き、やがてアレックスの家に到着しました。
玄関のドアを開けたエレナは、アレックスが、予定していた時間よりもずっと早く帰宅したうえ、たくさん人を連れて帰ってきたので、とても驚きました。
「あら、あら!こちらの方たちは…?」
「エレナ、紹介するよ。こちら、ゲオルゲさん。いつも"タブレのお茶会"で仲良くしてもらっている方だ。そして、こちらの可愛い子たちは、ゲオルゲさんのお孫さんで、ラクラミキオアラさん、ドイナさん、コーネル君だ」
「あら!いつも主人が、お世話になっております」
エレナはまず、ペイズリー1世に向かって頭を下げました。それから三人の子供たちに、
「まあ、なんて可愛い子たちなんでしょう!」
と言って、やさしく微笑みました。
「ちょうどさっき、コルヌレッテ(※ルーマニアの伝統的な焼き菓子)を焼いたところなの。よかったら、みんなで食べましょ?」
「わーい!!」
ラクラミキオアラとドイナは、無邪気に喜びました。その笑顔を見て、エレナもとても嬉しくなりました。




