17 ドリュアスの選択
「うわ〜!めちゃくちゃ広いね!!人もたくさんいるし、これじゃアレックスさんを探すの、大変だね」
ラクラミキオアラはペイズリー1世の後に続いて大広間に入ると、そう言ってドイナの顔を見ました。ドイナは1世に、
「見つけられそうですか?」
とききました。
「なあに、わけないことじゃ。彼は窓から庭の景色を眺めるのが好きなんじゃ。じゃから、窓際を探せば、必ずおるのじゃ」
そう言って1世は大きな窓が並んでいる方に歩いていきました。そしてすぐに、
「お、おった、おった。お〜い、アレックス」
と、窓際に立っていた一人の男性に向かって呼びかけました。男性は窓から庭を眺めていましたが、1世の声に反応して、顔をこちらに向けました。
「あ、ゲオルゲさん!」
ゲオルゲというのは、伝説の魔法使いであるペイズリー1世が、人間の世界で人と関わるときに使っている名前です。
「今日は、わしの可愛い孫を連れてきた。この子がラクラミキオアラ、こっちがドイナ、そしてこの子が…コーネルじゃ」
1世は、あらかじめペイズリー3世に魔法をかけておいたので、ラクラミキオアラ以外の人間にも3世の姿が見える状態になっていました。しかしペイズリーというのはネクタイの模様からつけられた、魔法使いとしての呼び名なので、1世はとっさにコーネルという、よくある名前で3世をアレックスに紹介したのです。3世はコーネルと紹介されて一瞬、"えっ!?"という顔をしましたが、ラクラミキオアラに後ろからお尻を叩かれて、"あ、話を合わせなきゃいけないのか!"と、やっと気がつきました。ラクラミキオアラとドイナは、1世の言葉をきいてすぐに、"あ、わたしたちは、孫っていう設定なのね"と、1世の考えをすぐに察しました。
「どうも〜!はじめましてっ!!ぼくが、コーネルです!!」
3世がそうあいさつをすると、ドイナはラクラミキオアラのうしろに顔を隠し、手で口を押さえて、必死に笑いをこらえていました。
「やあ、よろしく、コーネル君。ぼくはアレックスだよ。君のおじいさんには、いつも仲良くしてもらってるんだ。とっても明るくて、楽しいおじいさんだよね」
そう言って、アレックスは微笑みました。
「まだ、誰もバックギャモンをしていないようだけど、このお茶会って、バックギャモンをするためのお茶会なのよね?」
ドイナが1世とアレックスの顔を交互に見ながら、ききました。
「そうなんだけど、いつも最初の二時間くらいは、みんなで紅茶を飲んだりして、まったりおしゃべりするんだよ。その後にバックギャモンを始めるんだ」
アレックスがそう説明すると、ドイナは納得した様子で、
「そうなんですね!」
と言いました。
「実はの、今日、この子たちを連れてきたのは、おぬしに、ききたいことがあるからなんじゃ。この子たちが、知りたがっていることなのじゃ」
1世がアレックスに向かってそう言うと、アレックスはきょとんとした顔で、
「え?何ですか?ききたいことって」
と言いました。1世は周りの人達にきこえないよう、声を小さくして、こうききました。
「おぬし、樹の精霊ドリュアスに案内されて、森の女王ガブリエラに会いに行ったことがあったじゃろ。そして、物語の宝石箱から出て来たヘラクレスと対面した。そうじゃったな?」
「あ、はい。それは事実です」
「ここにいるラクラミキオアラは、物語を心から愛している子なのじゃ。この子は、どうしてもガブリエラに会いたいと思っておるのじゃ。そして物語の宝石箱から出てくる、物語の登場人物に会いたい、と」
1世がそう説明すると、アレックスは真剣な眼差しで、ラクラミキオアラを見ました。ラクラミキオアラの方も真剣な顔でアレックスの目を見て、視線を決してそらしませんでした。
「…分かりました。この子は、とても純粋な心を持っていますね。ふつうの子供とは違うので、きっとガブリエラのところに案内してもらえると思います。エレナに頼んでみます」
「エレナというのは、誰じゃ?」
「ぼくをガブリエラのところに案内したドリュアスです。このことはゲオルゲさんにも今まで言っていなかったのですが、実はぼくは、そのドリュアスと結婚して、今は一緒に暮らしているんです」
「な、なんじゃとっ!?」
「え〜〜っ!!」
アレックスの言葉に、1世も他の三人も、びっくりして声をあげました。
「もちろん、ドリュアスは樹の精霊ですから、そのままでは、人間と結婚することは許されません。エレナは、ぼくと結婚するかわりに、精霊としての自分を捨てたんです。精霊でいれば、人間よりもずっと長く生きることができますが、その精霊としての命を森の神様にお返しして、人間に生まれ変わり、人間の短い寿命で、ぼくと生きることの方を選んでくれたのです。そして、精霊だったときにたくさん可愛がってくれた森の女王ガブリエラが彼女に、エレナという名前をつけたのです。"この名前で、これからは人間として、立派に生きていきなさい"と言って」




