16 変なあいさつ
そのあとも楽しくおしゃべりしながら歩き続けた四人は、ドゥミトレスク家の邸宅に無事、到着しました。
「うわ〜!すっご〜い!おっきなおうち〜!!!」
ラクラミキオアラが目を丸くして言いました。無理もありません。ドゥミトレスク家の邸宅は、ふつうの家の十倍くらいの大きさだったのです。家ではなく学校ではないかと思うほどの大きさで、横に長い二階建ての建物でした。二階部分には美しい白壁と、バルストラーダと呼ばれる、彫刻が施された石の手すりが見えました。一階は垂れ壁と呼ばれる、アーチを描いて柱につながる美しい白壁が、修道院のような気品をただよわせていました。
「ほほほ。すごいじゃろ。ブルンコヴェネスク様式という、ルーマニアの伝統的な建築様式じゃよ。まあ、わしも、ドゥミトレスクさんに説明してもらって、覚えたんじゃがの。ほほほ。さ、入るとしよう」
ペイズリー1世はそう言って、開いていた門から入っていきました。ドイナは慌てて、
「おじいさん!勝手に入っちゃって、大丈夫なんですか!?」
とききました。1世は平然とした顔で、
「ほほほ。大丈夫じゃよ。"タブレのお茶会"には、たくさんの人が参加するからの。一人ひとり、いちいちチャイムを鳴らしていたら、かえって迷惑なのじゃよ。"勝手に入ってきていいですからね"と、わしらはドゥミトレスクさんに言われておるのじゃ。ほほほ」
1世の説明をきいて、ドイナたちは安心しました。1世は建物の入り口のドアも、チャイムを鳴らすことなく、勝手に開けて入っていきました。三人も、後ろからついていきました。しばらく歩くと、大広間の入り口に到着しました。アーチ型の大きな扉が、開かれたままの状態になっていました。扉の脇には、執事と思われる初老の男性が立っていました。黒いモーニングコートにウイングカラーの白いシャツ、黒いネクタイという服装で、白い手袋も着用していました。
「この人、いろんな物語の中によく出てくる、執事さんじゃない!?かっこい〜い!」
ラクラミキオアラが、ドイナの耳元で、小さな声で言いました。ドイナはラクラミキオアラの素直過ぎる反応が面白くて、可愛くて、笑いを必死にこらえていました。
初老の執事は1世に向かって丁寧にお辞儀をして、それから、ラクラミキオアラたち三人にもお辞儀をしました。三人は緊張していたので、少しアタフタした感じで、ぺこりとお辞儀しました。ラクラミキオアラは緊張のあまり、
「このたびは、まことに、おせわになります!」
と、少し変なあいさつをしてしまいました。後ろでドイナが、また必死に笑いをこらえていました。ドイナは後ろからラクラミキオアラのお尻をたたいて、
「ちょっと、もうっ!笑わせないでよ、ラクラミキオアラっ!」
と小さな声で言いました。




