14 1世のほうき
「おじいさん、さっきペイズリー…あ、ペイズリー3世のことですけど、ペイズリーといっしょに歩いて現れましたよね?ペイズリーみたいに、懐中時計に乗ってド派手に登場するのかと思っていたので、すごく意外でした!!」
ラクラミキオアラがそう言うと、ペイズリー1世は笑いました。
「ほほほ。ちょいと、期待はずれじゃったかの。ほほほ。実はの、わしは、おぬしらより、かなり早く公園に着いてしもうての。暇じゃったから、ラスノフの町をぶらぶら散歩しておったんじゃ。最初に着いたときは、わしが七十年以上も愛用しておる、ほうきに乗って来たんじゃよ。やはり、魔法使いといえば、ほうきじゃからの。ほほほ!その場面を見せてやれば、おぬしらも、喜んだかも知れんの。ほほほ」
ペイズリー1世はそう言うと、スラックスのポケットから、人形遊びに使えそうな手のひらサイズの、ほうきを出しました。1世はそれを片手で空中に放り投げ、それが地面に落ちる前に、放り投げたのと同じ右手の指をパチンと鳴らしました。すると一瞬でほうきは、人形サイズではない普通のほうきの大きさになりました。そして1世はそれが地面に落ちる前に右手でキャッチしました。左手はずっとスラックスのポケットに突っ込んだままで、全て右手だけで行ったのです。ラクラミキオアラはその様子を見て、"さ、さすが1世だ!!3世のペイズリーよりも動作に夢があるっ!!"と思いました。
1世は右手でほうきを持ったまま、今度は左手をポケットから出して、左手の指をパチンと鳴らしました。するとほうきが、三倍くらい長くなりました。1世はそのほうきを横にして空中に浮かせ、前の方に、またがりました。そして、
「ラクラミキオアラ、ドイナ。わしが登場する場面を見せなかった、おわびじゃ。後ろに乗るがよい。これで、ドゥミトレスク家の邸宅まで行くぞい。ほほほ」
「え〜〜っ!!ほんとですかっ!?いいんですか!?」
ファンタジーが大好きなラクラミキオアラは大喜びして、1世の後ろに乗りました。ドイナも、
「わたし、ほうきに乗るのはじめて〜!」
と言って、ラクラミキオアラの後ろに乗りました。
「このほうきは、わしの魔法が効いておるから、落っこちたりすることは無い。安心せい。じゃが、しっかりつかまっておらんと、乗り物酔いするからの。しっかりつかまるのじゃぞ。よいな?」
「はいっ!!」
ラクラミキオアラとドイナは同時に元気よく答えました。
「では、いくぞい!」
1世がそう言うと、ほうきは全く音をたてずに五メートルほどの高さまで垂直に上昇しました。
「こ…こわい!!思ったより、こわい!!」
ラクラミキオアラは思わずそう言いましたが、遊園地のジェットコースターが動き出したときのような表情をしていました。つまり、"こわいが半分、ワクワクして楽しいが半分"という感じの表情です。ドイナも同じような表情で、
「ほんと!こわいけど…楽しい!!」
と大きな声で言いました。次の瞬間、ほうきはものすごい速さで前進し始め、角度をつけて、ものすごい高さまで上昇しました。ラクラミキオアラが下を見ると、人の住んでいる家が切手よりも小さく見えました。
「このほうきに乗っているときは、ラクラミキオアラも、ほうき自体も、人間からは全く見えない状態になっておるのじゃ」
1世はそう言って、どんどん速度を上げていきました。後ろからは、3世が懐中時計に乗ってついてきています。ラクラミキオアラは風を顔に受け、髪をなびかせながら、
「さいこ〜〜う!!!」
と叫びました。そのとき、すぐ横に、ハヤブサが来ました。ほうきと並んで飛んでいるハヤブサを見て、ムネアカヒタキの妖精であるドイナは、
「きゃ〜〜!!!」
と叫びました。小さな鳥にとってはハヤブサは、とても怖い存在です。
「ドイナ、大丈夫じゃよ。このほうきに乗っておるときは、ハヤブサにおぬしの姿は見えてはおらん。ほほほ」
1世がそう言うと、ドイナは、
「そうなんですか?良かったあ〜」
と言いましたが、まだ、すぐ横をハヤブサが飛んでいたので、緊張した顔でチラチラ、ハヤブサを見ていました。




