第五話 ソロ最強、別れ…からの…ピ、ピンチ!?
長めです!!
「どういう…こと…?」
「つまり、お前があのゼノ・クラウディアだと?」
「………ああ。そうだ。アイン・レクス支部長は俺の師匠でな。しかも例によって俺は探索において大分特別扱いをしてもらってる。その分こうやって定期的に任務に駆り出されるんだ。」
「……にわかには信用できないぞ。どう受け取ったらいいのか…」
困惑するアルサに対し、ゼノは落ち着いていた。
「戦闘でも見て貰えば信じてもらえるか?とも言いたいところなんだが、そうも行かない。俺はお前たちには今回の件で被害にあって欲しくはないと思ってる。すぐに退団手続きをしてくれないか?俺が調査を引き延ばせば、この第16部隊がアイギスと無関係になった上で報告することができる。」
「そうだな。すまないメイナ。行ってきてはもらえないか?手続きに。私はどうしても彼に聞きたいことがあるんだ。」
「わかった…けど…。ねえ、ルアくん?君は本当にあの鬼剣なの…?どうしても、1人で孤高を気取って戦うような人には見えなくて…。」
「そうか。…なあ、みんなは、俺の昔話を聞く気はあるか?長くなるが、恐らく今アルサが聞きたいと思っていることもこの話を聞けばわかると思う。」
「私は聞きたいな。せっかくだし。」
「俺もフィナと同意見だな。」
ガルドも同意する。
「私の質問の答えがわかるのだろう?聞くしかない。」
「じゃあ、手続きに行ってくるからちょっと待っててくれる?」
「ああ。わかった。メイナが帰ってきたら話そうか。」
「ありがとう。少し待っててね。」
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しばらく待っていると、メイナも戻ってきた。
「じゃあ、話そうか。俺の過去についての話だ。」
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ややあって、ゼノは自らがパーティを決して組まない理由にあたる過去の事件などについて、その全てを皆に話した。
「そっか……。あんなに恐れられて最強だなんだって言われてるあなたにも、そんな過去が…。」
「なるほどな。確かに聞きたかったことは聞けた。なぜ鬼剣がパーティを組まないのかとずっと疑問だったが、そういうことか。いわゆるトラウマというやつだな。すまなかった、そんなことがあったとはつゆ知らず無理に聞き出そうとしてしまった。」
「いや、いいんだ。俺はそもそも、正体を明かした時点で追い出されるんじゃないかと思っていたんだよ。過程はどうであれ、仲間割れとか自分がのけものにされたりってことに敏感になりすぎているしな…。とにかく、こうやって俺の話をしっかり聞いてくれただけでも、俺は心底感謝しているよ。」
ゼノは本当に嬉しそうな顔で笑っていた。
「まあこれで全てだ。後は退団が出来次第、ギルドに来てくれ。俺も当分はみんなを待ってギルドの宿泊部屋に泊まっておくようにする。みんなが来たら、第16部隊については触れずに今回の件については処理しておく。」
「ありがとうな。今回の件。はじめメイナから聞いた時には本当に終わりかと思ったが、お前がいてくれて助かったよルア。あーいや、ゼノ、か。」
ゼノはふっと微笑んだ後、立ち上がった。
「じゃあ、俺はこれで。短い間、本当に短い間だったが、楽しませてもらったよ。ハウスから退団ともなればしばらくは大変だと思うが、まあ頑張ってくれ。」
「やっぱり、まだパーティを組む気にはならないの?まあ騙されてはいたけど、結局私たちのこと一番に考えてくれて嬉しかったし信用してるし、来てくれるっていうならうちで迎えるけど…」
「ありがとなフィナ。でも…そうだな。やっぱりまだパーティを組む気にはなれない。まあまた縁があったらその時は頼むよ。」
そうして扉を開け、最後に、
「騙していて悪かった。ありがとう。」
そういって、ゼノはハウスを後にした。
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ゼノの潜入操作が終了して1ヶ月。
アウヘルからは一つのハウスが消えていた。
ハウス・アイギス。
彼らの悪行の数々は鬼剣の手によって公となり、確かな証拠をもってハウス・アイギスは解散。
例によってペナルティが課せられた。
また、当時の第16部隊は、現在はシドロフォスと名を変えてパーティ申請し、ダンジョン攻略を続けていた。
ハウスに所属していないとダンジョンに入れない、というルールについては、ゼノが裏で手を回し、シドロフォスにハウスそのものを設立してもらう形で依頼を出したため、解決していた。
シドロフォスは、ベッラートールという名のハウスを設立し、勧誘を続けていた。
「ねえ、メイナ?私たちさ、結局ゼノが入ってから1回もダンジョンの深い階層に行かなかったじゃん?せっかく到達階層伸ばすチャンスだったのに、今となっては勿体無いよねえ。」
「うーん。それは少し思ったけど、でもゼノくんとは正式な仲間には結局なれなかったわけだし、私たちの力で到達するべきって意味ではこれでよかったのかもよ?」
「そうかもだけどさあ…。」
「ほーら。アルサとガルドも待ってるから。ダンジョンいこ?今日わたしたちで到達階層伸ばしちゃえばいいわけだしさ!」
「そうだね…。よしっ!いこっ!」
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一方のゼノはというと、今日も今日とてダンジョンに潜っていた。
最深層、第124層。
人類でこの階層に到達しているのは、ゼノともう3組ほどのパーティのみ。
ゼノは1人、頭上を飛び回る5匹ほどの飛龍を刀で薙落としているところであった。
「やっぱソロが性に合ってるよな…。というかソロが板につきすぎてるのか…。」
その時であった。
『シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ——』
目の前に突如黒い影が現れた。
ゼノの50倍以上は軽くありそうな大きさ。
ゼノは一瞬でその正体を悟った。
「緑龍…!」
世界で最も強いと謳われるモンスター、ドラゴン。
その中でも比較的上位の存在、緑龍。
流石のゼノも焦りを隠せなかった。
「おいおい…」
あの時かつての仲間たちを危険に晒した火龍出なかっただけマシと思うべきなのだろうか。
しかしいくらゼノといえど、1対1で対峙したことのあるドラゴンなんて、先ほど倒した比較的Levelの低い飛龍くらいのものである。
緑龍ともなればLevelはゆうに15を超える。
前回100階層で倒した時も、1組の上位パーティと協力してだった。
「くっそ…!流石に勝てねえぞ…!?」
逃げることも浮かんだが、ダンジョン内である以上地の利は向こうにある。
加えてこちらはどんなに急ごうにも、低空飛行ではスピードの出ない飛翔魔法を使うか、障害物だらけの地面を走るしかないが、相手は自らの体の一部が翼であり、自由な飛行手段を持っているのだ。
逃げる事が叶うとはとても思えなかった。
「どうすっか…」
じっくり倒そうにも、龍種には過去のイレギュラーのトラウマもある。
もし、81層から貫通しているあの落とし穴でも使って上に行かれた日には、おそらく下層あたりで甚大な被害が出るだろう。
その時だった。
まさにその穴から1人の冒険者が落下してきたのだ。
正確にはこの124階層で穴は終わりではないので1つ下の125階層まで落ちていったのだが。
ややあって、その女性は125階層から這い上がってきた。
「よいしょっと…。はあ、散々な目に………」
硬直。
「は…はあああああ!?緑龍!?」
その時であった。
緑龍の尾が、女性めがけて振り下ろされた。
「おい!よけ…」
ゼノの叫びも虚しく、女性は尾の下敷きに……ならなかった。
「あっぶなあ…。ちょっと、キミがこの緑龍の相手してたの?ちゃんとそっちに引きつけてよ!てかソロで緑龍を相手取るとかどうかしてるわ…。ん?ソロ?なんでソロでこの階層までこられてるの?えまって!もしかしてあの鬼剣だったりする!?」
さ、騒がしい…。
この状況を理解していないのか…?
「あ、ああ…。俺はゼノ・クラウディアだ。そっちは————」
ゴッという音がしたかと思うと、今度はゼノの方に前足が飛んできた。
「すまないがこいつの相手をするのを手伝ってくれないか!あんたもこの階層まで落ちてくる時点で元からそれなりの階層にはいたんだろう?よりによって周りに他のパーティがいない時にこいつが現れたもんだから、どうしようかと途方に暮れていたところなんだ!」
ゼノは必死の形相で緑龍が踏みつけようとしてくるのを避けながら女性に呼びかけた。
「やあっぱり!鬼剣なんだ!」
「いいから手伝ってくれ!あんたもこの階層から出られなくなるぞ!」
「ええ…それはやだしなあ…。わかった。手伝ったげ…わぁ!!」
尾は女性を追いながら前足はゼノを踏みつけんとする。
「ったく…器用なことしてくれるわね!」
ゼノがまさに思ったことを思い切り口に出し、女性は先端に鋭い刃を取り付けた長い杖を取り出した。
「時間を稼いで!私、近接戦闘もできないわけじゃないけど、本職は魔導士なの!こんなの相手に近接は流石に無理!」
「わかった!助かる!」
ゼノはそう叫んで刀を鞘から抜き、緑龍の懐へ潜り込まんとして駆け出す。
それとほぼ同時。女性は走って銭湯の場から距離を取り、長文詠唱を始めた。
魔法には、無詠唱魔法、短文詠唱魔法、長文詠唱魔法、特殊魔法がある。
無詠唱魔法は、詠唱がいらない分威力は落ちがちであり、短文、長文の順に威力が上がるというのが基本。
しかし、ゼノも持っているようなユニーク魔法の中には、無詠唱ながら長文級威力を持つ魔法、長文と魔法陣を要するが他のどんな魔法も敵わないほどの絶大な威力を持つ魔法なども存在する。
ちなみに特殊魔法というのは、相手を何かしらの異常状態にさせたりするものである。
ゼノは、何度か懐に潜り込もうと試みるもなかなか成功しないでいた。
幸い魔導士の女性はうまく隠れて詠唱を続けているため緑龍の視界には入っていない。
時間稼ぎという面ではうまくいっている。
しかし、結局、実質1人で緑龍を相手取っている状況のゼノの体力の消耗は激しかった。
魔法を使うことも考えたが、自分の魔法によって発せられた魔力であの女性の詠唱を妨げてはいけないと思いとどまった。
ゼノは必死に緑龍の猛攻を凌ぎながら、あの魔導士が決定的な魔法を持っていることに賭けていた。
そうして1人でゼノが戦い続けること10分ほど。
「おーけー!そこから離れて!」
という声が聞こえる。
見ると、女性の足元には大きな魔法陣が描かれ、彼女の体ともども強い光を放っていた。
ゼノは、やけに長い準備時間が魔法陣の用意にも割かれていたことを知り、彼女の魔法の威力が非常に大きいものであると、自分の期待に匹敵するか、それ以上のものであると、そう確信した。
「わかった!俺が思い切り後ろに飛ぶから、それを見て放ってくれ!」
「了解!」
そう言葉を交わし、ゼノはさらに数太刀緑龍めがけて刀を振り、最後の一太刀を合図に、後ろ向きに思い切り飛んだ。
《大爆発魔法》
最終詠唱を合図に、女性魔導士の足元にあったはずの巨大な魔法陣が、緑龍の頭上に移動した。
かと思うと、さっきまで黄色く光っていた魔法陣がみるみるうちに色を変えて赤色となり…
『ドォォォォォォォォォォォォォォォ』
という音と共に真下に向けて光を放った。
一、二分の後、光と爆炎が全てはらわれてから、2人が恐る恐る緑龍に近づくと…
「ひっ!」
女性魔導士の方が、悲鳴をあげて飛び退いた。
「驚いたな…。あれほどの魔法を喰らってまだ生きているとは。」
ゼノはそう言って刀を振り上げ、一気に緑龍の胸目掛けて刃を突き立てた。
緑龍は灰となり消え、そこには暗い緑色の菱形の鱗が数枚と、一本の巨大な爪が残った。
「や…やった…」
ゼノは腰から崩れ落ちた。
「やったねー。でも、鬼剣ならこれくらい1人で倒せるだろうと思ってたけど、そうも行かないみたいね。それに、なんか思ってたより人間味あるね!」
ゼノは彼女を強く睨みつけた。
「俺をなんだと思っていたんだ…?」
ゼノたちは思わず笑い合いながら戦利品をバックパックに詰め、立ち上がった。
今回少し長めですねー。
新たなキャラクター。
謎のげきつよ女魔導士!
次の展開もお楽しみに!




