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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
挿話 あなたがいたから
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中学生になって〈小雪〉

 お兄ちゃんが中学に入学して早2年が経とうとしています。


 お兄ちゃんは勉強も仕事も順調にこなしています。何でも出来ちゃうお兄ちゃんはやっぱり一番かっこいい人です。


 私はと言えば、勉強は大変でいっぱいいっぱいだし、仕事も疲れてる時はキツいし、うっかりミスして怒られることが重なって落ち込んだりして、なんで私はここにいるんだろ?って疑問に思えて来て、もう全部投げ出してどっかに行ってしまいたい‥‥‥なんて思う事もたまにあるよ。


 けど、ここにいれば楽しい事もあるし、本郷先生に褒めて貰えた時はすごく嬉しいし、あったかいご飯も食べられるし、お風呂もあるし、かわいいワンピースドレスでおめかしだって出来るんだよ。


 それにお兄ちゃんと一緒だし、梅子さんも、新月さんも奥様もいるし。


 住み慣れてしまうと 居心地よいところみたいです。



 私たち兄妹は、相変わらず仕事に勉学に忙しい日々を続けていますが‥‥‥


 目の前のことだけで精一杯のような日々ですが、振り返ってみればこの2年で、私もお兄ちゃんも周りもずいぶんと変わっています。


 昨年はついに新月さんが中学校に入学しました。

 なので昼間はお屋敷内に子どもは私1人だけになってしまっていました。


 それに伴い家庭教師の先生は中学校に入学した新月さんに合わせて、週に3回、夜いらっしゃることに変更されていました。

 だから私は昼間は大人に混じってお仕事で、その合間に宿題をして、授業は夜受ける生活にかわりました。



 もう1つ大きく変わった事は‥‥‥


 ‥‥‥奥様は、新月さんが中学校に無事合格し入学した後、ご実家に戻られてしまいました。


 突然のことだったのでとても悲しかったです。新月さんたちは何も言いませんでしたし、変わりなく振る舞っていますが、きっと陰では泣いていたに違いありません。


 私はそれ以来、いつ奥様が戻ってもいいように奥様のお部屋は週に一度お掃除しています。


 家具だけ残された空っぽの奥様のお部屋は虚しいです。お掃除していると楽しい思い出がよみがえって今でも涙が出てしまいます。


 奥様の話は禁忌の雰囲気なので誰も敢えて口には出しません。

 たとえ新月さんとでも奥様のお話をする事はもうありませんでした。


 奥様のお話が出来るようになるまでにはきっと時間が必要です。


 

 そして私は12才の春を迎え、桜咲く頃、ついに地元の中学校に行くことになりました。

 お兄ちゃんは同じ中学校の3年に。新月さんはというと、希望叶わず私立のお坊っちゃまお嬢様が通う中学校に通っていて、今度は2年生に進級です。


 やったー! 私もやっと学校に行けるの! お兄ちゃんも新月さんも学校に行ってるのに私だけ取り残されてたんだもん。すごく楽しみ!


 学校の手続きなどは五十嵐さんがきっちりやってくれました。必要なものは風間さんがきちんと揃えてくれました。


 私はたくさんの人にお世話になってここにいる。だから弱気心も怠け心もなるべく封印してがんばんなきゃね! たくさん勉強していつに日にか恩返ししなくっちゃ‥‥‥なーんて思うの。


 私、なんだか心も体も大人になってきたって感じしない?


 この辺とか。えへんっ


 このセーラー服と赤いスカーフも結構似合ってるよ。うふふ~



 お兄ちゃんと私は、キッチンで賄いをいただいてから歩いて学校に行きます。だいたい30分くらいかな。


 お兄ちゃんと一緒に学校に行けるようになって本当に嬉しいです。


 新月さんは今年も運転手さんに駅まで送ってもらってから電車で学校に通っています。学校までそのまま送ってもらえばいいのにと思いますが、電車の方が着くのが早いし帰りも友だちと途中まで電車で一緒に帰るのが楽しいそうです。


 

 私が中学校に入学してから次第に、私がお兄ちゃんの妹だって知れ渡って注目されることになりました。


 お兄ちゃんは学校でいい感じに有名人みたいでした。


 お陰で私は先生方から訳もなく褒められ、ちょっとしたことで、『さすが大鏡の妹だ!』と言われます。


 私のクラスまでわざわざ私を見学に来る人たちまでいます。


 女子先輩たちが来ては、『大鏡くんの妹さんってあなたなの? 今度クッキー作ってくるから二人で食べてくれるかな?』などとか優しくされ、男子先輩が来ては『さすが大鏡の妹かわいいな。困った事があれば俺らに言えよ』なんて親切にして下さるし、クラスのお友だちはそれを見て、私のことを意味もなく尊敬の眼差しで見てきます。


 これってお兄ちゃんの七光りっ? 


 たまに嫌みを言って来る人もいるけれど、これだけ優位に立ってしまうと特に気にもなりません。


 学校での勉強は、私は既に習い終わっている単元なので問題無し。ただの復習回! 順調です。



 私が入学して数週間過ぎ多少慣れてきた頃、新月さんが私の学校の様子を聞いて来ました。


 二人で学校の先生あるある話してたら、おもむろに私が誰かにラブレターを貰ったりとか、渡した事があるか聞いてきました。


 私は『無いよ』って答えたら新月さんたら、『ふう~ん‥‥‥』とニヤニヤしてきてスッゴくやな感じでした。


 なんでも新月さんは、電車で見かける女学生からラブレターをもらったりする事がままあるとかで、先日は駅の入口に女の子が数人で待ち伏せしていて、その内の1人に封筒を渡され、それからきゃーきゃー言いながらみんなで逃げて行ったそうです。


 なあに? 私にモテてる自慢されてもね、『ふーん、そう』しか言うことはありませんよ? 私、『良かったね!』って言ってあげるべき?


 別にいいんだけどね、でもね、なんとなくそんな風に言ってあげたくない気分だよ。


 『ふ~ん、小雪ちゃんは無いんだ』


 何なんでしょう? その得意顔。


 もしかして新月さんたら1つしか違わないのに、私を子ども扱いしてマウント取ってるつもりかもしれないです。そんな態度こそお子様だと思うし。


 最近の新月さんはなんか嫌。





 ペタ、ペタ、ペタ、ペタっ‥‥‥


 これは新月さんのスリッパの足音。

 廊下からスマホ片手に顔を覗かせた新月さん。


 あらあら、また来たわ。新月さんたら、ちゃんと片付けは進んでいるのかしら?


「小雪さ~ん! 今ね、古典婦人クラブの方からね、急にランチのお誘いが来たんだけど、どうしようかなぁ~?」



 まったく‥‥‥あなたという人はあの頃とちっとも変わってらっしゃらないようね?

 男の人っていくつになってもそういうものなのでしょうかね? はぁ~‥‥‥



「お好きになさいな。行っても構いませんよ? 今日中に本と洋服の整頓を終わらて下さるのなら」


「‥‥‥‥小雪さん冷たいなぁー」



 焼きもちを焼いて欲しがるなんて、新月さんたらおじいちゃんになったというのに‥‥‥あの時の、お子様のまんまですわね、はぁ~‥‥‥


 じゃあ、私も。


「あらいやだ、私にも朝のうちに来ていたわ。落花生(おかき)囲碁クラブの聡太こと藤川さんから 本日の昼食ご一緒にいかがですかって‥‥‥‥」


「‥‥‥‥こっほん、あー‥‥僕は今日のお誘いはご遠慮しますからね、小雪さんもそうした方がいいですよ? 出掛けていては片付けは今日中に終わりませんよ! 僕が今からおいしいうどん作りますからっ!」


「まあ、ありがとう! じゃあ、私お断りしておくわね」



 もう、とっくにお断りしてありますけどね。



 ‥‥‥私が操っている訳ではないのです。新月さんは優しいから操られてる振りをしているだけだと思いますよ。


 だって、新月さんが本気を出せば地球が滅びるそうですし。


 





 

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