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ヴェクサシオン  作者: 杜若表六
第二章

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 さて、事件はこれっぽっちもひと段落していないが、このあたりでまた新たな挿話(エピソード)を語っていくことにしよう。いったん気になるところでやめておいた方が、あとで面白みも増すというものだ。

 新たな挿話とは、正確には新たな挿話ではない。神やマネージャーがもともといた世界の物語である。読者にこの騒動の全貌をご理解いただくためには、ぜひとも二つの世界のことを並行して語る必要があるのだ(まずはそこをご理解いただきたい)。

 神やマネージャーが不在の世界の住人、彼らもまた、それぞれ問題に直面し、悩み、そして行動する。誰もが答えを見出そうとする。ひょっとしたら、その問題には答えがないかもしれないのに。だが答えのない問題などありえるのだろうか? それこそ一種の『矛盾』ではないだろうか?

 おそらく実際のところは偉い数学者に訊いてみなければわかるまいが、しかしこの物語の主軸は『矛盾を創造すること』と序文で既に説いたので、読者には役者たちの奮闘ぶりが意味のない、虚しいものに感じられることはないだろう(おそらくは)。私とてそこまで残酷ではない、鼠を車輪に入れて走らせ続けるような真似はしないつもりだ(なるべくは)。

 かといって容易に答えを用意するようなことも避けたい。なぜなら、なんとしてもこの手で確固たる『矛盾』を創り上げたいから。たとえこの小説自体が空虚な、惨憺たる結末に陥る危険があるとしても、である(必ずそうなるとは断言できない)。

 私は役者たちが素晴らしい演技をみせてくれることを望む。どうにか、彼らの目の前に立ちふさがる問題の数々を解決してほしい。もちろん、その為にはまず自分たちの直面している問題を明らかにしてもらいたい。話はそれからだ。多くの役者はまだ、その問題さえも認識していない。読者諸君、現実の我々だってそうではないか? 問題とは何か? それが問題なのだ。

 なんにせよ、私が密かに心配している、例の『空虚な、暗澹たる結末』というものは、杞憂に終わるに違いない。それがどんなに問題のある脚本を持とうと、物語の炎は役者を糧にして燃え続ける。彼らの指から指へと伝わってそれは消えることがない。役者たちはやがてみな燃え尽きて消えていくが、舞台には次々と新たな糧が登場する。困ったことに、物語の炎はあらゆるものを飲み込んでゆく。それは裏を返せば、あらゆるものが役者になりえるということだ。そして物語がひと段落し、舞台の幕がひとまず降りれば、燃え尽きた役者たちもまた、灰の中から不死鳥のごとく蘇るであろう。

 これは夢想だろうか? おそらく半分は。しかし半分はこういえよう、どんな荒唐無稽な物語にも潜んでいる、一つの真実であると。

 さあ、新たな舞台の、新たな役者たちによる、新たな芝居をお見せしよう……。

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