あなたは誰?(前編)
<ザラ視点>
「つ、次は体育だから...ごめんなさい!!」
僕は魔力操作ができない。それを気づかれたのだと思う。誠一が僕を休憩時間に呼び止めた。それを僕は断った。なぜなら、
------------------------------------------------------------
<女子トイレ>
「“分かる~?”」
「“う、うん。分かるよ。”」
僕は女子トイレに呼び出されたからだ。
「“いや、わかってないよねww。あんたが選ばれたのはたまたまww。”」
「“そうそうwww翻訳が仕事なら”、日本語を話せる私たちの方がいいでしょ~。」
「わざわざEランクのあんたを選ぶ必要なんかないのよ。どうせ顔と胸で色仕掛けしたんでしょ?」
「ち、違うよ!僕もわ、分からなくて...!」
僕は、普通の人よりも容姿は優れているらしい。ただ、色仕掛けはしていないし、僕自身も選ばれた理由は分からない。
「嘘をつくんじゃないわよ!!」
思い切り顔を殴られる。
「ちょっと!!顔に傷をつけたら、男ひっかけさせて金を稼がせることができなくなるかもでしょ!!」
口の中に鉄の味が広がる。前までは、唇をかんで出た血だったのに、最近は違う。
「洗えば大丈夫よ!!」
バケツに水を入れて運んできて、そのまま私にかける。
「あっはは!!これで今日は帰るしかないわね!」
その瞬間、窓が割れる音がした。
「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
3人の悲鳴が聞こえたので顔を上げると、野球ボールが中に入ってきた。遅れて聞き覚えのある人が入ってくる。
「ここは女子トイレよ!!?ボールはあるけど..」
それはそうだ。その瞬間、誠一と目が合う。
「.....は?」
今日の誠一を見ていると想像できない位の低い声だった。その直後、息すら満足にできないような殺気が誠一から放たれる。
.............やっぱり、強いんだ。
「ヒッ....いやぁぁぁぁぁ!!」
「「っ!!!」」
殺気にやられて3人全員がトイレから逃げる。
そのまま誠一は僕に近づいて手を差し伸べる。.....また同情だ。僕より圧倒的に強い人は同情をするか、性的な目で僕を見てくる。校長が守ってくれているらしいけど..
「...大丈b「うるさい!!どうせ誠一も僕の事を見下してる癖に!!魔力操作での身体強化ができない僕の気持ちは分からないくせに!!」ちっ、ちがっ!」
僕の気持ちが分からない相手に可哀そうという気持ちを押し付けられてる。可哀そうという目で僕を見てくる。僕が地面を這いずっているのに、平気で立って僕を見る。
それがどれだけ屈辱か。
「強い人に僕の気持ちは絶対に分からない!!頑張っても強くなれない僕に!!日本1が同情したって僕が惨めなだけ!!だからもう..っ!!」
そう言って誠一の顔を見た瞬間、はっとする。誠一がした顔は、同情じゃなかった。《《怒り》》。僕に向けてじゃない、他の生徒に向けての。
僕は、他の人と同じと決めつけて、ずっと欲しかった手を振り払ったのかもしれない。そう考えると血の気が引いた。気付けば、走って家に帰っていた。
違う。誠一だってきっとみんなと同じだと言い訳をしながら。家に着いた瞬間、母からは
「“また授業をサボったの~?全く、面倒ごとは増やさないでよね~。せっかく高い学費を払ってるのに~。”」
僕の顔のアザを見て、面倒ごとと言い切った。そのまま、厚化粧をして出て行った母を見送り、自分の部屋に戻る。父はいないので1人だ。
あの調子だと、母は朝まで帰ってこないだろう。そう思い、ベッドで寝ようとするも、さっきの誠一の顔が出てくる。
「ち、違う....僕の行動は正しいんだ。...あれは確かに同情の目だったんだ。」
身体の震えが止まらない。違う。違う。違う。そう否定し続けないとおかしくなりそうだった。昼どころか夜ご飯の味さえしなかった。
違う。違う。違う。違う。心のどこかから、『僕は振り払ったんだ!ずっと欲しかった手を!』と聞こえる。違う。僕は正しいことをしたんだ。
違う....違うんだ..僕は..........
------------------------------------------------------------
<翌日>
昨日はあまり寝れなかった。朝ごはんを用意しながら欠伸をする。...時間的にはもう昼だけど母はまだ帰ってきていなかった。その時、玄関のチャイムが鳴る。
「あ、あの~ザラさんいます~?」
誠一の声がした。今は会いたくなかった。なので居留守を使った。『これで誠一も僕に呆れるはず。だって誠一は皆と同じだから。』と聞こえる。誰なんだろう。
「あれ...まだ寝てる?本気で気配探すのはデリカシーが.....」
と言って去っていく。『ほら、すぐ諦める。』...声が聞こえる頻度が増えてきている気がする。気のせいかな。
結局、この日も母は帰ってこなかった。あと、1週間の停学処分に僕はなったらしい。誠一たちが何か僕関連でやったのだろう。
------------------------------------------------------------
<さらにその翌日>
僕は4:30に母に叩き起こされる。
「“ちょっと!!停学ってなによ!!!後!なんで私の朝食がないのよ!!”」
この日の母は機嫌が悪かった。男漁りが上手くいかなかったのだろう。急いで母の朝食を作る。
「“やっぱ要らないわ~。りーきゅん待っててね~~”」
朝ごはんを食べずに再び外出する母。そのご飯を食べて、僕はまた眠りにつく。すると、また昼過ぎにチャイムが鳴り、
「ザラさんいますか~?停学の件..実は俺のせいでして...謝罪をと...。」
『帰らせよう?どうせ僕とは違うんだし、物を投げて当たってもケガしないし。』そ、それはちょっと...でも帰らせた方がいいのだろうか。
「謝罪は要らないから帰って!」
...僕は何をしているのだろう。もしかしたら、本当に誠一は他の人と違うのかもしれない。
『違う。どうせ誠一だって僕を見下してるんだ。もう、あの期待を裏切られたくはないでしょ?』
...確かにそうかもしれない。
『あの時のトイレのときの目だって、実は見下してたんだ。』
..え?でも誠一の顔は怒ってて.......あれ?
あのときの誠一は、どんな顔をしてたんだっけ。




