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成長限界を迎えた男の「最強」防衛録  作者: 烈育
まずは「最強」へ
17/43

本質

  <蜜瑠視点>

私は昔から気配を消すのが上手く、暗殺者としての素質があった。ジョブもお父さんと同じくアサシン。それだからだろうか、


「おい、例の暗殺者アサシンだ...逃げよう..」


と探索者協会で避けられるようになった。学校でも、


「み、蜜瑠さん..お、おはよう、ございます..。」


と機嫌を取られる。静かに人を殺せるジョブだから怖がられるのは理解できる。でも、友達なら、ジョブじゃなく、私の本質を見てほしかった。人を殺しはしないって。


だから私は常に一人だった。そんな日々を過ごしていたとき、


「おらぁっ!お前らっ!手を挙げろ!!」


銀行強盗がやってきた。見ただけで分かった、強い探索者だと。


しばらくして、


「お、お金を入れましたぁっ...!」


大量の紙幣が入った袋を女性が強盗に渡すが、遅かったのだろう。


「警察だぁっ!!」


警察が突入してきた。


「ちっ!!ファイアランス!」


その警察に向けて火の魔法を使おうとしている強盗。この強盗は強い。警察側にも死者が出るかもしれない。強盗が入ってきた瞬間に全力で気配を消したためか、強盗は私に気づいていなかった。





この日、私は、初めて人を殺した。


そのまま気配を消しておけばよかったのに、殺人の罪悪感や自己嫌悪のせいで吐いてしまった。そのせいで気づかれてしまった。新聞やテレビにヒーローとして報道されたが、学校では


「ひっ...ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃっ!」


「うわあぁぁぁぁっ!」


「馬鹿ッ!そんなことしたら殺されっ..!ご、ごめんなさい!こいつを許してくださいっ!」


ついに人を殺した私を友好的な目でみる人はいなくなった。


------------------------------------------------------------

  <探索者協会・本部>

ある日、お父さんに呼ばれたため、探索者協会本部でお父さんを待っていると、


「山本さんと師匠が言ってた強いやつって君!?頼む!俺を鍛えてほしい!《《最強》》になりたいんだ!師匠は街から出て行ったし..」


綺麗な目だった。山本さん...ということはお父さんに紹介されてきたのだろうと一瞬で理解できた。


「ん、私はアサシンだから他の」


「アサシン!?かっこいい!!!!」


...話が通じない。それなら私の力を見せたら、怖がってどこかへ行くだろう。と私は考えた。彼の後ろへ移動し、首にナイフを当てる。


「...ん、これが私の力。怖いならもう私に関わらないで。」


「....み、見えなかった!!強い!!くぅぅ~~!もう一回戦わせてくれ!」


それから彼は私と戦いに探索者協会にくるようになった。


次の日も


「あ、何か掴めたかも!!」


次の週も


「避けれた!!見た!?避けれた!!!」


次の月も


「くぅ~避けれるようにはなったんだけどなぁ~。」


次の年も


「初めて勝った~~!!!」


更にその次の年も


「これで5連勝!」


もう彼に勝つことの方が難しくなった。


「......ん、もう教えることはない。だから明日から.....」


その続きが言えなかった。この二年間楽しかったのだ。でも、もう彼は私より強い。会いに来る理由もないのだと思った瞬間、涙が出そうになる。でも、彼は会いに来るかもしれない。なら、言うしかない。


私は人を殺したことがあると。


「...明日から、もう会いに来る必要はない。..わ、私は、人を殺した..ことがある....アサシン.....だから....」


涙を必死にこらえながら、そう告げる。


「.......」


黙る彼。頷いてほしい。これ以上仲良くなったら、怖がられたとき、私は壊れてしまう。お願い、頷いて。『嫌、私を受け止めて。』違う。拒絶して。『寂しい。』私から離れて。『嫌なくせに』うるさい。黙って。『本当は辛い。こんなの全部嘘。』


黙れ!!!!!!!!!!!!!!!






「..そんな顔をして泣いてる人は悪い人じゃない。そんな綺麗な目をしてる人が、殺人の過去を背負い続けてる人が、悪い人だと思わない。」


立って俯いている私の横にしゃがむ彼。もうやめて...。


「俺を鍛えてほしいと頼んだのは、ただ強いからじゃない。優しいと思ったからだ。その目を見て確信したんだ。」


嫌っ...もう....私の心に入ってこないで....『ほら、彼は受け止めてくれる。分かってくれる。』


「アサシンだからって、君の本質は悪いなんてことはない。俺がそれを認めない。」


..................『ほしい言葉をくれる』







「君は、優しいんだ。どうしようもなく。それが君の本質だ。」

『私は、優しいんだ。どうしようもなく。それが私の本質だ。』







彼が撫でてくれた。


「っ!!ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


彼に抱き着く。


「ずっとっ!!見てほしかったっ!!!私をっ!!!!アサシンとしてじゃない!!!本当の私をっ!!!!!ずっと!!!ずっとずっとずっと!!!私は悪くなんてない!!!ずっと言いたかった!!!!」


そんな私を優しく抱きしめてくれる彼。


「...本当の君を見てくれる人はもっと見つかる。絶対に。俺も手伝うから。一緒に探そう。」


泣きながら頷く。....でも、今はこの暖かさを味わいたい。そう思って、泣きながら彼の胸に顔をうずめた。


------------------------------------------------------------

  <現在>


「ここがナナとかいうやつの実家か。」

「所長も悪い人だよな~!ww」

「暗殺に失敗したやつに価値ないだろ。」

「おいお前ら、とっとと親二人を始末するぞ。」


予想通り、暗殺者らしき集団がナナの実家に集まるが一足遅い。もう二人を助け出し、探索者協会・那覇支部に向かっている。


「あ、あの!ありがとうございます!」


左脇に抱えているナナの母親が私に言ってくる。


「ん、このまま安全なところまで送る。それまで感謝は要らない。ナナも私の好...弟子が守ってる。」


「…どうして、私たちを助けてくださったんですか?」


そう聞いてくる、右脇に抱えているナナの父親。


「....ん、泣いてたナナが、昔の私とちょっと重なったから。ナナの本質は優しい子。」


そう言うと黙る2人。刑務所に戻れるのは5:00を超える位だろうか。それまで私の好きな人達に何も無いことを祈る。


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