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このパーティには呪われた者が一人いる  作者: おおま えいき
第一章 凪無千馬は呪われている
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その5 樹海の植物


 何処に行けば良いのか分からないからこそ、進行するための道選びは簡単だった。


 できるだけ体力の消耗を抑えるため高低差の少ない平坦な場所を通り、外敵が存在した場合に急襲されないよう、見晴らしの悪い茂みなどを避けて歩く。


 しかし体力の消耗は激しく、足の疲労や喉の渇きは限界を迎え、次第に移動する時間よりも休む時間が増えてゆく。


 千馬が膝程の高さの岩に腰を掛け体を休ませていると、突然上から滝のような雨が落ちてきた。


 どこかに避難しようとするが、姿勢を保つことが精一杯で、座ったまま岩の上に押しつぶされ身動きすることすらできない。


 鼻や口から水を吸い込み呼吸すらもままならず、このままでは溺死してしまうと思い、下を向いたまま両手で鼻と口を覆い、呼吸をするための空間を確保する。


 そうしているうちに滝の勢いは少しずつ弱まり、大粒の雨へと変わる。


 岩から立ち上がれるようにはなったものの、滝のような雨は辺り一帯を湖に変え、気づいた時にはすでに歩くことが出来ないまでに水位が上がっていた。


 あったはずの陸地は見えず、どこを見渡しても水面が続き、そこに巨大な木だけが立ち並ぶ、異様な景色が広がる。


千馬は少しでも高い所に移動するため、泳いで近くの巨木の根っこの部分に辿り着く。


 迫ってくる水から逃げるようにして木の根を這い上がっていると、根元の方から振動が駆け上がる。


「地震か!?」と思うや否や、湖に波紋が広がり水面が勢いよく波打つ。


 ミシミシと音をたて巨木が揺れる。千馬は滑り落ちないように必死で木にしがみ付き、揺れが収まるのを待った。


 一分ほど続いた揺れが収まると、さっきまで確かに存在していた湖は、水たまり一つ残すことなく消えていた……。


 今度は地面まで降りるのに難儀しながらも、どうにか巨木の根から落下せずに下まで辿り着く。


 千馬は足の疲労を和らげるため、杖になりそうな木の棒を拾い、家へ帰りたい一心でひたすら歩き続けた。その間にも、気候や地形が目まぐるしく変化して、百メートル進むことすら容易ではなかった。


 既に半日は歩き、それでも人や文明の痕跡もなく、この先に見えるのは同じような森の景色のみ、なにより、空腹による頭痛と眩暈で、もう真っすぐ歩くことも困難になっていた。


 森には多種多様な植物があり、その中には実が生っているものもあったが、そのどれも色は白く奇妙な形をしている。


「食べるしかないのか……」

 千馬はそう言って、目の前の木に垂れ下がっている真っ白なリンゴのような果実を引きちぎる。




挿絵(By みてみん)




 何処とも分からない世界の得体のしれない植物の実をじっと見つめても、それに毒があるかどうかなど分かりようがなかった。


 その果実に匂いはなかったが、手触りはぶにぶにとした水風船のように柔らかく、腐っているようにも思える。


 千馬は白い果実を見つめながら、このまま辛い思いをして死んでしまうのなら、いっそ毒の入った果実を腹いっぱい食べて、苦しんで死ぬのも、そんなに変わらないだろう考えていた……。


ゴクリと固唾を飲む。そして意を決すると、小さく口を開けて白い果実を一口かじる――。


 ……味はなく、美味くも不味くもない……、例えるなら味のない豆腐を薄いゴムで包んだような果実だった。種が入っておらず、果実と呼べるかどうかは分からなかったが、毒もなさそうだったため、二口、三口と食べ進める。


 千馬は一個を食べ終えると、次々に他の白い果実を捥いでいった。だが不思議なことに、二個めを食べようとしたが既に腹は苦しいほどに満たされ、喉の渇きも収まっていた。


 やはり得体のしれない果実ではあるが、この果実がある限り餓死の心配をしなくてよさそうだと安堵する。

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