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このパーティには呪われた者が一人いる  作者: おおま えいき
第一章 凪無千馬は呪われている
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その4 闇が明けた先

 ――千馬は貴重品の紛失で出鼻をくじかれ、頓挫してしまった周辺の探索を再度試みようと考える。


 遭難していると言える今の状況で闇の中を動き回るのは危険だと理解していたが、不安は募るばかりで居ても立ってもいられなかった。朝を待つにしても、せめて背後を守りたいという本能のようなものが、探索への欲求を強め突き動かす。


 まずは寄りかかれる木か岩がないか、両腕をそっと前方に伸ばし闇の中をまさぐる。次に時計回りにゆっくりと回転、腕が届く範囲には背中を預けられそうな拠り所がないと分かると、意を決し、すり足で十センチほど右足を前に出した。


 この闇の向こうが崖だった場合を想定し、より慎重に、足の爪先に全神経を集中させながらゆっくりと進む。


 元居た場所から数メートル進んだ先で、手の指先が硬い何かに触れる。恐る恐る感触を確かめ、体より少し大きな木であることが分かると、胸をなでおろし、木を背にして腰を下ろした。


 ――嵐が過ぎ去り、騒がしく木々の枝を揺さぶり続けていた風が止み、周囲は虫の鳴く声一つなく静まり返っている。


 木に寄りかかってから数時間が過ぎた頃、手足が薄っすらと見えていることに気づく。


 千馬は今すぐにもここから駆け出したい気持ちを抑え、目を凝らして辺りを見渡す。

寄りかかっている木の近くにも何本かの木が生えていることは分かったが、一メートルも先はどんなに目を凝らしても、まだ深い闇に包まれていた……。


 ――木が一本、また一本と姿を現し、静寂な森の夜明けを告げる。


 千馬は安堵し、表情を緩ませながら立ち上がり、背中を預けていた木の姿を一目見るため振り返った。


 ――顎から落ちた汗の雫が革靴の先端にあたり、パッとはじける。


 朝日が完全に顔を出し、森の鮮やかな色彩が露わになっても、千馬はその場から動くことが出来ずに立ち尽くしていた。


 ……ここは森という枠からあまりにもかけ離れ過ぎていた。


 さっきまで寄りかかり、木の幹だと思っていた部分は、数十本と立ち並ぶ木の根っこが地上にせり出している一部でしかなく、その根の上にそびえたつ幹は、あまりの大きさに雲を突き抜け、葉は空を覆い隠すほどに広がっていた。


 未だ目の前に広がる光景が信じられず、夢ではないのかと、寄りかかっていた木の根を数回叩くも、手に伝わる感触や質感から、それらが実在していると分かり、木の根に手を付きうなだれた……。


 そして、ここが日本どころか外国とも思えず、自分の頭がおかしくなったのかもしれないと目に涙を浮かべ苦笑する。


 ――千馬は服の袖で涙を拭い、どこまでも続く森を見渡す。


 ここにはテレビや本ですら見たことのない植物ばかりが生えており、唯一近い環境をあげるとすれば、恐竜が闊歩していた中生代のような感じだった。


 どう考えてもこの未知の世界に救助隊が来る望みは薄く、例え来たとしても、体力の限界で死ぬ方が先なのは明白。ならば死を待つより人や文明の痕跡を探そうと考え、半ば自暴自棄になりながらも、千馬は森の中を歩き始めた。

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