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このパーティには呪われた者が一人いる  作者: おおま えいき
第三章 怨獣のティサリー
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その7 氷結世界の稲妻

 ――千馬はを周辺を見渡し擬獣の殲滅を確認するも、ダモたちの元へは戻らず一点を見据え言葉を投げる。


「そのまま死ぬか?」

 そう言って、手を前方に突き出すと、地面が火山のように噴火し火柱を立てる。が、それよりも早く、四つ腕の擬獣が土の中から飛び出し千馬めがけて拳を叩きこんだ。


 衝撃波で地面がえぐれ、周辺の木が裂け、岩が砕け吹き飛ばされるも、千馬は一歩も動くことなく擬獣の攻撃を腕一本で押さえ込んでいた。


 風圧で頭巾がめくれ上がり、怒りの形相が露わになる。


 千馬が擬獣の目を睨みつけると、体から冷気が溢れ急速に周辺の木々が凍ってゆく。花や草が凍り付き、突風に吹かれ、崩れ、粉になって舞い上がる。


 擬獣は腕を引き、無傷の千馬に驚いた様子を見せるがすぐに左右から挟み込むように拳を打ち付ける。またしても激しい爆風が巻き起こるが、拳同士はぶつかることはなく、両腕を左右に開いた千馬に受け止められていた。


 こうなることを想定していたかのように擬獣は笑みをこぼし、すかさず残り二本の腕の手の平を合わせ、千馬の頭上目掛けて振り落ろす。手刀が叩きつけられ、すさまじい爆発音が響き、砂煙が巻き上がった。


 ――激しく揺れていた木々が静まり返り、冷たく緩やかな風が砂埃を流し去ると、――そこには分厚い氷に覆われた、腕のない擬獣の姿が現れる。


 時間が止まっているかのような、全てが凍り付いた世界で、黒い服だけが風に揺られてはためいていた。


 凍結した擬獣に目もくれず、凍り付く世界に背を向けて、ダモたちの元へと歩き出す。髪の毛を数本引き抜くと、手から風が巻き起こり、毛は上空高く消えてゆく。刹那、閃光が走り、落雷が氷の世界を消し去った――。


 ティサリーは目の前で起こっていたことがまだ信じられないという様子で、茫然と千馬の姿を見つめる。


泥牙(でいが)! 千馬を迎えに行くぞ。娘、俺にしっかり捕まっとけ」

 指令を受けると、二人を乗せた泥牙は岩場を駆け下り、千馬の元へ向かった。


 千馬はダモにしがみ付く少女の姿を見て、安堵の溜息を吐く。


「体の怪我は大丈夫そう?」

 不安そうにダモの顔を見る。


「ん。俺が作った薬だからな」

 ダモは怪我が完治していることを知らせるため、折れていた少女の腕をポンポンと叩いた。


「……直ってる……?」

 ティサリーは腕をさすり、今初めて体中の怪我が直っていることに気づく。それを見て、ダモは満足そうに頷く。


「ん。俺はダモ、こっちが千馬だ。娘、お前は何て名だ?」


「……ティサリー。……あの……助けてくれて、ありがと」


「うん。無事で良かったよ。それじゃ、日が暮れる前にティサリーを家に送り届けますか」

千馬とダモは目を合わせ頷く。


「ん。聞きたいことは色々あるが、こんな所で野宿は嫌だからな。ティサリー、家は何処だ?」


「……この、ずっと上。……もう、帰れないよ」

 ティサリーは断崖絶壁の崖を見上げるが、またすぐに顔を下に向ける。


泥嘴(でいし)!」

ダモが叫ぶと、葉と土が巻き上げられ、上空から鳥のような姿をした泥人形が大きく翼を広げながら降りてきた。


「ん。この程度の崖なら、泥牙でも登れるんだがな。きっと俺もティサリーも振り落とさるからな」


 泥牙が膝を折り二人を降ろすと、ダモはティサリーの手を取り、泥嘴の背中に乗り移る。すると突然上昇気流が起こり、泥嘴はそれに合わせるように羽ばたいた。


「千馬は!?」

ティサリーが心配そうにダモの腕を握る。


「さっき吹き上げた風がそうだな。もうとっくに崖の上だ」


 ティサリーが見おろすと、すでに千馬の姿はなくなっていた――。

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