その4 孤独な戦い
――魚の目玉も白くなり、皮の表面に薄茶色の焦げが付いていた。串に刺さった魚を手に取り背中からかじる。白い身から湯気が立ち、中までしっかり焼けていた。
食事を終えると空の籠を持ち、魚の頭と骨を家から少し離れた穴へ捨てに行く。帰りは廃村を大回りして鳴子の調子を確かめる。木と木の間の根本にピンと張られた蔦を指で軽くはじくと、遠くに聞こえていた川の音をカラカラと乾いた音が打ち消した――。
鳴子を跨ぎ進んでゆく。大きな木を一本一本見上げ、熟れた果実を探して回る。良さそうな木を見つけ、拳を握り金槌を振るように叩く。「ドンッ!」と音が響き、四つの果実が落ちてきた。それに合わせ、瞳に力を入れる。すると果実がゆっくりと落ちて来るように見えた。
一つ……、二つ……、三つ……と、空中で掴み籠に入れ、最後の一つは手に持ったまま、食べながら家の方へと戻ってゆく。
家に着いても中には入らず、そのまま川へ向かう。河原で石を数個拾い、果実の入った籠の中へ入れる。それを浅い川の中へ沈めた。
ティサリーは冷えた甘い果実の味を想像して笑みをこぼし、軽快な足取りで家へと向かう。
――突然歩く足を止め、目つきが変わる。遠くから微かに鳴子の音が響いていた。
急ぎ走って、家の横に積み重ねていた石を拾う。自分の拳よりも一回り大きな石を両手に一つずつ持ち、音をさせた鳴子の方角を見据え警戒を強める。
右手の石を振りかざしたまま、辺りをゆっくり見渡すと、立ち並ぶ木々に違和感を覚え視線を留めた。木の幹が少し太くなっていることに気づき、そこをめがけて力いっぱい石を投げる。
地面に積もる枯れ葉が一直線に巻き上がり、「ボンッ」と破裂した音をさせ、木の真ん中に大きな穴が開く。見る見るうちに木は元の化物の姿に戻り、そのまま倒れ絶命した。それを見て小さなため息を吐く。
人間とも自分とも違う異形な姿をした化物の死骸を前にして、いずれ自分の力を超える擬獣が現れるのではないかとティサリーは不安を募らせていた。
――数十年前から、擬獣の行動に少しずつ変化が現れているのを感じていた。多くの擬獣は、変わらず闇雲に襲ってくるだけだが、稀にこちらの動きを観察し、隙を窺い、無理だと分かると引き上げていく慎重な擬獣もいた……。




