プロローグ 樹海の住人
神大樹の半球には大地を埋め尽くす広大な樹海があり、その先には大海が広がる。樹海の中心部から木は外側に向かって広がり、海に到達する手前で途切れる。その樹海と海の間は境殻地と呼ばれれる大地があり、そこには国が作られ多くの人間が暮らす。
三百年前、国同士の勢力争いが熾烈だった頃、封呪石を見つけるため樹海の大規模な探索が行われた。各国の選ばれし者達は我先にと競いあい、木を切り倒し、道を作り、印を残しながら樹海の奥地を目指した。しかし帰ってこれた者は数人のみで、戻ることが出来なかった者たちが大勢いた。
樹海に足を踏み入れた者達の多くが病気で死に、残った者達も災害や擬獣に襲われ命を落とし、運よく生き残った者達は、川の近くに家を作り、そこを拠点として樹海からの脱出方法を模索した。
幸いにも川では、魚、エビ、カニが一年中獲れ、その周辺には山菜や芋などが豊富に生えていたため、食料に困らず生活ができた。
そして川に隣接する石にしか生息しないアカリ苔は、闇夜を明るく照らすだけでなく、擬獣を追い払う効果があるため、襲われて死ぬ危険もなかった。
数年の時が流れ、樹海から出る方法がないと分かる頃には、田畑が作られ、子が生まれ、家が増え、小さな村となり、いつしかそこでの生活に慣れ親しむようになっていた。
村同士が近かった所では交流が生まれ、発展してゆく場合もあれば、村人が死に絶え、廃墟だけが残されているところもあり、樹海にいくつも流れている川の近くには、今でもそうした村がいくつも点在している。




