その20 創造されし巨木
風に吹かれ、ダモの体毛がサラサラと揺れ、陽の光に反射してキラキラと光る。頬に生えるているヒゲを触り、下を向いていた一本のヒゲを摘まんでピンと伸ばす。そして同時に両足を勢いよく前に出し、すとんと落ちるように尻を付いて座った。
千馬はダモの動きを目で追いながら、体のどこかに神と分かる印がないかと探す。これまでのダモの行動や会話の中に、いくつか思い当たるふしはあったが、常軌を逸した樹海が存在しているこの世界では、それが普通のことのようにも思えていた。
「……こっちの世界では、神様がいるのが普通なの……? 俺がいた世界には、神という言葉はあるけど、存在自体は誰も見たことがないから……」
「ん。その様子を見るに、半信半疑といったところか。無理もないな、俺のこの姿からはただの獣としか思えんだろうしな」
ダモは杖の琥珀を撫でながら話を続ける。
「――質問の答えとしては、この世界には地の神、火の神、水の神、風の神が存在している。幻四獣と呼び、俺はその中の地を司る神だな」
「それじゃあ、幻四獣はみんなダモみたいな姿をしているんだ」
「や。神は肉体を持たない。ゆえに人の目には映らず、触れることもできない。当然、意思疎通を図ることなど不可能だな。きっと千馬が元居た世界の神も、そういった存在なのだろうと思う。ならば何故俺だけがと思うだろうがな……俺はこの世界を見守り続けることに、耐えられなかったんだ……」
ダモの瞳に、頷く千馬が映る。
「ん。……遥か昔の話だな、この世界にまだ何もなかった頃に、俺は一粒の種を創り出した。種は木となり、根は木を覆い隠しながら伸び続け、増え続け、密度を高め、それが大地の基盤となった。その場所はまだ暗く、寒く、物音ひとつしない、とても寂しい世界でな。それを見かねた火の神が大地を温め、感応した水の神が雨の恵みを降らし、気まぐれに風の神が種子を運び、今のこの世界へとめざましい変貌を遂げ、俺たちはそれを神大樹と呼ぶことにした」




