その19 一匹の幻四獣
「……俺はな、様々な物を見て、触れて、知ることが凄く楽しいんだ。自分が知らなかったことを知った時の感動は、何事にも代えがたい。だから俺はこの樹海の中だけでなく、一度でいいから外の世界に出て、もっと色々な物を見て、たくさんの知識を得たいと……そう思っている……」
「ちょっと待って……! 樹海の外があるの!?」
千馬は額に手を当て、目を丸くする。
「ん。樹海の外には原人種や尾人種が大勢暮らしている国や町があるらしい。もう随分昔に、樹海に迷い込んだ尾人種の人間から聞いた話だから、今がどうなっているのかは分からないが、国はいくつかあって、その中にたくさんの町があって、人間達が数えきれないほど暮らしていると言っていた」
「そっか……樹海の外は存在していて……人もいて……」
千馬は力なく笑い、服の袖で涙を拭った。
「ダモの話を聞いて……今日までの旅が報われた気がするよ」
「ん。気が早いな、まだ樹海の外に出れたわけでもないのに……」
「……あ、あぁ、そうだね。……そういやさっき原人種とか尾人種とかって言っていたけど、この世界には二種類の人間がいるの?」
「ん。尻尾が生えていない方を原人種と言い、尻尾が生えている方を尾人種と言う」
そう言うとダモは立ち上がり、千馬の後ろに回り込み、着ていた服の裾をめくる。
「ん。千馬は尻尾がないようだから原人種だな」
千馬は左右に振っているダモの短い尻尾に気づく。
「ダモは尻尾があるから、尾人種なんだね」
「尾人種に会ったことがない千馬からはそう見えるのだろうな……」
ダモは千馬の前に戻り、長い耳をピクッと動かす。
「その言い方からすると尾人種じゃないってこと?」
「ん。そうだな。原人種も尾人種も、見た目は千馬と変わらんな」
「えっ……じゃぁ……ダモは何種?」
「一番最初に言っただろ。俺は幻四獣、人間ではない。……分かりやすく言うならば神獣――神だ」
「……へ? ……えぇっ!?」
ダモの黒く真ん丸な瞳には、驚く千馬の顔が写っていた――。




