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その7 叶われた意志

 ――男は目を大きく見開き、眉間にしわを寄せ、口に手を当て、震えていた。


 何も言葉が見つからない様子で、涙を流しながら、嗚咽を漏らし、ダモの黒くまんまるな瞳を見つめる。そして膝を擦りながらダモに近づくと、抱きしめ、歓喜して、震えながら泣き続けた――。


 ダモはその男の姿に、悪い奴ではなさそうだと安心して、しばらくの間、黙って泣き止むのを待つ。


「――少しは落ち着いたか? いくつか聞きたいことがあるが、まずは俺の泥人形たちを解放して欲しい」

 ダモは凍っている泥人形を杖で指す。


「あ、あぁ……」

 男は立ち上がり、目の前の泥嘴に向け、手で風を扇ぐようなそぶりを見せた。すると突風が起こり、氷が溶けて砕け散る。少し離れた泥裸と泥牙にも同じように手で風を扇ぎ、氷の塊を消し飛ばした。


 ダモはその不思議な現象に理解が追いつかず、ポカンと口を開けていたが、自分の元へ泥人形たちが戻ってくると、気を取り直し自己紹介をする。


「さっきは言葉が通じていなかったから、もう一回言うな。俺の名はダモ。この樹海の地を司る幻四獣の一人だ」


「げんし……じゅう? ……いや、それよりも色々と教えて欲しいことがあって……。さっき俺が飲み込んだ葉は何……? 急に会話が出来るようになったみたいだけど……? あと、ここはどこで、樹海の外はあるの? それと、俺の体はどうなって――」


 男の早口な質問攻めに目を回しながら、ダモは言葉を遮る。


「待て、待て、落ち着け! いっぺんには答えられない。それと、まずはお前の名を教えてくれ」


 男はハッと我に返る。


「あぁ……悪い。……会話なんて久しぶりで……驚いてしまって……。今もまだ何が何だか意味不明で……あっ名前か、えっと……あっ! 千馬、俺の名前は千馬」

 千馬は名を告げ、気持ちを落ち着かせようと、大きく息を吐き出す。


「ん。千馬か。……さっきの質問だが、あれは言の葉と言ってな、葉っぱには俺が習得している言語の知識が詰まっていたんだ。そして千馬はそれを飲み込んだ。だから俺の言葉を理解出来るようになり、会話もできるようになった」


「……やっぱり、ここは俺の住んでいた世界とは、まるで違うんだな……」

 千馬は目をつむり、眉間をつまみ下を向く。

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