その6 光の舞い
ダモは男に手を引かれて立ち上がる。
礼を言うが、どうやら言葉が通じていないようで、男は眉間にしわを寄せ、顔を左右に振りながら、ポツリと呟く。
男の話す言葉はもにょもにょとしており、ひどく聞き取りづらかった。正確な発音ができないのかもしれないと、ダモは大きな耳をピンと立て、熱心に聞き取ろうとするも、そうではなく、どうも男の使う言葉は、この世界の言語とはまるで違っている感じを受ける。
お互い言葉が通じず沈黙していると、草が波打つように揺れ、暖かい風が二人の間を吹き抜けてゆく。風に揺られ、金色に輝く体毛がサラサラとなびく中、飛ばされてきた一枚の落ち葉がダモの顔に当たった。
ダモはハッと何かを思い出した様子で杖を拾い上げ、体の正面に突き立てて両目をつむる。
男が警戒して立ち上がろうとするが、ダモはそれを見越し、安心させるため、手のひらを男に向け、コクンと頷く。その合図を理解したようで、男はその場を動かず、ダモの行動を見守っていた。
ダモは呪文を唱えながら、ゆらりゆらりと踊るように体を左右に振る。すると杖に埋め込まれた琥珀に小さな光が灯る。
明かりは少しずつ強さを増し、太陽のような輝きを放つと、弾けて粒になり、ダモの体に溶け込んでゆく。全ての光の粒が体に吸収され、周辺は元の明るさへと戻り、風に揺られる草の音も止んでいた。
目をつむったまま動かなくなっってしまったダモに向かって、男は顔の前に手をかざし左右に振る。反応がなかったため、小さく溜息を吐き、腕を組んで、そのまま眺め続けていた。
それから間もなくして、ダモが目を開く。それと同時に頭の天辺から光が溢れ出し、そこから小さな植物の芽が生えてきた。黒くて真ん丸な瞳を瞬きさせながら、頭の天辺に生えた小さな葉っぱを抜き、男の前に差し出す。
男は驚いた表情を見せたまま葉を受け取り、それをどうしてよいのか分からず、葉の表と裏をまじまじと観察する。
ダモの方へ目を向けると、何かを摘まんだ指の形を作り、口の中に入れ、飲み込むような身振りを見せていた。
男は一瞬眉間にしわを寄せ、不安そうな顔をしたが、覚悟を決めたようで、葉を飲み込んだ。
「――これは何かのおまじないだろうか……?」
男は腹をさする。
「ん。まじないではないな。お前が今飲み込んだのは言の葉だ。俺が持つ言語の知識を与えた。これでもう会話が出来るはずだ」
そう言って、ダモは片手で杖を持ち、地面に突き立てた。




