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その8 琥珀越しの真贋

「ん。その口ぶりからすると、この世界の人間ではないようだが……どうやってここにきて、この樹海で何をしていた?」


「……どうやって来たのかは分からない……気づいたらここに居て、元の世界に戻るため……いや、人間や文明を探すためだったかな? もう百年以上前だからあまり覚えてはいないけど……ずっと一人で旅をしていた……」


 ダモは杖の頭にはめ込まれている大きな琥珀越しに、千馬の顔をジッと見つめる。


「……ん。百年以上? 話が本当だとして、元居た世界では人間の寿命は百年以上あるのか?」


「いや……普通だったらそんなに長生きできないんだけど、俺はこの樹海に来てから、まったく年を取っていないんだ……」

 千馬は困ったように顔を左右に振る。


「……ん。分からんな……。この樹海に来たのがいつ頃なのか、もう少し正確に分からないか?」


「……百八十年……二百年近いかな……? ここに来てからの月日を記録していたことがあったけど、百年が過ぎた頃にはもうどうでもよくなって、記録するのを辞めてしまったから、もう分からない……」


「ん。……百八十年から二百年前か……何も見えんな……」

 ダモは琥珀を覗きながら、杖を少しずつ回す。


「……その宝石の中に何か見えるの?」


「ん。俺はこの琥珀に閉じ込められた気泡の記憶から、過去の出来事を読み解くことが出来る。だが今聞いた話だけでは、千馬の軌跡が閉じ込められている気泡を見つけ出すことができないな……」


「……ここは俺が見ている夢の中で……本当の俺は、元の世界で寝ているから……とか?」


「それはないな、ここは誰の夢の中でもなく現実だ」


「……まぁ、そうだよね」

 千馬は地面の草を千切る。


「ん。何も分からず、突然この樹海にやってくれば不安なことだらけでそう思っても仕方がないだろうな。その不安を解消してやるためにも、この樹海の事を教えてやりたいし、疑問に応じてやりたいところだが、それは千馬が何者かが分かってからだな。それが知りたくて俺は会いに来たんだ。そうじゃないと、いつまでたっても俺が不安で落ち着かない……」


「俺のことを知るため……?」


「ん。だからここに来てから何をして、何を見てきたのかをもっと詳しく話してくれないか?それにな、本当に別の世界からきて困っているのであれば、俺が力を貸すことだってできるからな」


 ダモの言葉を聞き、千馬は瞳を潤ませ、袖で涙を拭った。


「あぁ……長くなるけど、思い出せることは全部話すよ! デモは凄く良い奴なんだな……」


「千馬、俺の名前はダモな」

 そう言ってダモは千馬と向かい合うように座った。

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