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11話 歴史(テュール視点)



俺が第三部隊に入隊したのは今からおおよそ十年前の頃、十六歳になった直後のことだった。

物心ついた頃から教会で孤児として暮らしてきた俺が、母親のことを知ったのは十六歳の誕生日に俺を育ててくれた神父様から渡された母の直筆の日記だった。


俺が生まれた日から毎日欠かさず書かれていた日記。その日記のおかげで俺は全てを知ることができた。母が王族であること、同じく先代の子どもである兄が自分の命を狙っていること、だからこそ息子である生まれたばかりの俺を教会に預けたこと。

一方で、父親については一切書かれていなかった。神父様にも確認してみたが、日記は母が亡くなった後、母に仕えていたメイドから受け取ったもので、詳しくは効いていない、と話していた。


日記を読んだ俺はすぐに騎士になる決意をした。

別に王になろうと思っていたわけではない。ただ、今の王、母を殺した人間がどのような奴なのか知りたかった。

始めは唯一平民が入隊できる第二部隊に入ろうと思ったが、それに気づいた神父様が特別に話を通してくれて、第三部隊に入隊することになった。


入隊試験のことは今でも覚えている。

どんなに口利きがあったとしても、ローデリヒ隊長とイヴァーノ副隊長は容赦なかった。


こいつから一本でも取れたら合格な、と紹介されたのは、当時第三部隊に拾われたばかりのショウだ。

目をぎらぎらとさせて、俺を殺さんと言わんばかりに殺気立っていたあいつに、俺は本当に殺されると思った。

だって、いくら混血(獣人族は始まりの血を受け継ぐ純血と、そこから派生した混血に分かれる)だと言っても、相手は人間の何倍もの力を持つ獣人族だ。


俺は必死に、言葉通り死に物狂いで、戦った。正直、何度も死ぬかと思った。後々仲良くなってから聞いてみれば、当時のショウは人間の奴隷から解放されたばかりで人間を恨んでいたらしく、本気で殺すつもりだったらしい。……俺、よく生きてたなぁ。


兎にも角にも、そうして俺は、何とか、第三部隊に入隊を果たしたのだった。


「隊長、副隊長、彼女の居場所がわかりました、第一部隊の宿舎です。その地下に連れていかれたようです。」


同じ第三部隊の騎士ですら近づけないほどの殺気をまとった隊長と副隊長に近づき、入手した情報を伝えれば、ぶわりと殺気が強くなる。


つい先程、任務から帰ってみれば、俺たち第三部隊の宿舎の扉が壊されていた。慌てて中に入ってみれば、特に荒らされた形跡はなく、ただ、ここに滞在していたはずの隊長と副隊長の番(になる予定の)アイがいなかった。

彼女を見守って(監視して)いた副隊長の友人(小鳥)によると、突然男たちが乱入してきて彼女を連れ去ったらしい。ただ、どこへ連れ去ったかまでは分からないとのことで、俺が駆り出されたのだった。


調べてみれば、どうやら彼女だけでなく、聖女も同じく第一部隊の宿舎に幽閉されたらしく、全てはあの王が仕組んだことらしい。あいつらしいと思えば、あいつらしいか。


「どうするイヴ。」

「……襲撃するか。」

「部隊同士の喧嘩はタブーですよ。」


殺気立つ二人にショウがため息をつく。俺やショウガ止めたところで、二人は止まらないだろう。

それならやることは一つ。

元々、そろそろ動こうとは思っていた。それなら今が好機だ。


「隊長、副隊長、ひとつ、提案があるのですが。」


俺にその器があるのか、俺には分からない。

ただ、あの男に任せておいたら、この国は駄目になると思った。

だからこの十年で必死に情報を集めた。国内の現状、貴族の派閥問題、王の不正。

そして、味方を増やした。ありがたいことに、貴族の中にも国の将来を心配し、王に不満を持つ人間が俺の味方となってくれた。


「……テュール。」


俺の計画を聞いて、第一部隊の宿舎へ駆け出した隊長と副隊長の後を追おうとしたところでショウに声を掛けられる。


今回、ショウには残りの第三部隊の騎士の面倒を頼んだ。

全てがうまくいく可能性は低い。俺の手にあるこの書状も奪われ、破られてしまえば終わりだ。俺が使えないと分かれば、十二貴族の奴らは俺をいとも簡単に排除するだろう。よくも悪くも、今の十二貴族は国のこと第一と考えている。王なんて、ただのお飾りに過ぎない。

その場合、隊長と副隊長もまた反逆者となってしまう。そうなってしまったら、第三部隊は終わりだ。元々荒くれ者たちばかりのこの第三部隊が何とかやってこられたのは隊長たちのおかげだ。二人がいなければただの荒くれ集団となってしまう。

だからこそ、ショウに残ってもらった。

こいつにはその資格がある。


「あとは頼むぜ、ショウ。」

「……お前ならできる。お前はすごいやつだ。だから。」


王になれよ。

その言葉は、どんな言葉よりも、重く、俺にのしかかる。


「当たり前だ。」


それでも俺は笑う。

それが、国を背負う者の責務なのだから。




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