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夏(仮)  作者: ふゆか
抜け出せない過去
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未定

自宅へ帰るとそのまま畳の上に倒れこんだ。


月明かりで僅かに明かりの差す部屋で一人天井を見つめる。あかりと再開し毎日が明るくなった。あかりが居るのから頑張れる。今も、これからの未来もそれだけが支えだ。それなのに、過去を引きずりいつまでも前に進めない自分がもどかしい。


目を閉じるとあかりが始めて此処にやって来た時の事を思い出す。



ひろゆきが暮らしているのは八畳ほどの事務所の奥に六畳ほどの和室がある事務所兼自宅。風呂や台所もあるため男の独り暮らしには十分だ。


便利屋を始めて五年。今では固定客や口コミで安定して仕事がある。当初はなりふり構わずオフィスや住宅に訪問し、掃除や犬の散歩等兎に角何でもした。現在も主な仕事としては掃除や片付けといったところだ。


そんな中、時々変わった依頼もある。人探しや、不倫調査といった探偵の様な仕事や、草野球チームの人数合わせというのもあった。


あかりがやって来たのは起業して一年を迎えようかという四年前の3月。引っ越しの季節ということもあり、転出していくための荷造りや退去前の清掃。転入の場合は家具の配置や生活に必要な物の買い出し等大忙しだった。


朝から晩まで食事を摂る間もなく働き、事務所に戻ったのは午後10時頃。コンビニで買った弁当を頬張りながら1日分の売り上げを計算したいた。


そんな時に一人の女性が駆け込んできた。


「便利屋って何でも出来ますよね。」


開口一番そう言うと、呆気に取られているひろゆきをよそに来客用のソファに腰掛けた。


ただでさえ疲れきっており、まだ精算もしなくてはいけない。それに加え明日も朝が早い。どんな仕事も引き受けるをモットーにやってはいたが翌日に差し支える。断腸の思いで断る事にした。


「すいません。今日はもう営業終了でして…」


そこまで言いかけたが言葉が途切れる。その美しさに見とれてしまった。それ以上に何故か懐かしさを感じたのだ。


「話だけでも良ければ聞きましょうか。」


本当は「後日改めて…」というはずだった。


インスタントコーヒーを淹れ女性の前に差し出す。思い詰めた様子のその女性は、両手でコーヒーカップを包み込む様にして口元に運んだ。


「それで、どうされたんですか?」


「実は…」


雰囲気から何か大変な事が起きているのではないかと不安になった。


「携帯を落としてしまって。」


「えっ?」


何だか裏切られた気分だった。

(さっきまでの緊張を返してくれ。)

と、心のなかで怒鳴った。さすがに‘これ’には付き合えないと判断し断る事にした。


「大変ですね。警察とかに行ってみてはどうでしょうか?」


出来るだけ遠回しに断ってはみたものの


「警察は行きました。でも、落とし物として届かないとダメだって…。」


「まあ、そうでしょうね。」


苦笑いを浮かべるひろゆきの顔を女性が見つめる。もしかして睨まれているのかもしれないと思ったが、美人な女性に見つめられ少し照れてしまった。


「歯。」


「あっ。すいません。」


「はあ?」と言われたのかと思い即座に謝る。


「歯、欠けてる。」


怒らせてしまったかと思い焦ったが早とちりだった。


「ああ、これ高校の時にやっちゃって。」


高校の頃荒れた生活を送っていたひろゆきは喧嘩に巻き込まれ、その時に前歯が欠けてしまっていた。


「喧嘩ですか?」


「ま、まあ…」


見透かされている様だ。


「それより、どうします?」


話を本題に戻す。女性も思い出したかの様にまた落ち込む。


「一緒に探してもらえませんか?」


「これからですか?」


「勘弁してくれ」と思いながら問いかけると「はい」と返事が返ってきた。


迷った挙げ句、このまま話をしていて長引かせるよりも幾らか探して諦めてもらう方が早いと思い渋々引き受けた。

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