未定
ホテルに戻る途中コンビニに寄り缶ビール数本とつまみを買った。
小さなテーブルに袋の中身を広げ二度目の乾杯をする。
「飲み足りなかったんだ?」
「ひろが飲んでないから、たまには一緒に飲みたいなと思って。」
「お互いのどんくさいから二人とも飲んだらどうなるか。」
「それもそうか。でもどっちかと言えばひろの方がどんくさいよね。」
「そう?」
狭い室内に二人の笑い声が響く。
「せっかくの誕生日だし、本当はもっと良い所が良かったな。」
室内を見渡しぼそりと言うひろゆき。あかりは節約のためと言ったがどこか申し訳なさを感じていた。
「まだ言ってんの?」
酔っ払ったせいか語気が強まっている。一本目を飲み干し二本目に手をかけるあかり。
「相変わらずいい飲みっぷりだね。」
からかうように言うとあかりはひろゆきの飲みかけの缶を持ち上げる。
「全然減ってないじゃん。」
「飲め」と言わんばかりに缶を突きつける。それを受けとると一口飲みテーブルに戻す。
「男らしくないなあ。」
以前に比べるとビールも飲める様になったが、実はこの苦味が苦手な事は変わっていなかった。
「俺は俺のペースで飲むの。」
当てに買ったスルメをしゃぶりながらあかりの顔を見る。酔ったせいか頬が赤く染まり、目が据わっている。それがとても可愛らしく見えた。ひろゆきの視線に気づいたあかりが不思議そうに頭をかしげる。
「可愛いなって思って。」
言った後で臭いことを言ってしまったと可笑しくなり吹き出す。
「からかってる?」
「いやいや、本当に思ってるって。」
日付が変わる頃二人の酒盛りは終わった。酔ったせいか、疲れのせいかは分からないが二人はそのままベッドに倒れ込んだ。仰向けで並んでいたあかりが抱き枕を抱くようにひろゆきに寄ってきた。
「ひろ?」
「ん?」
「私はね、場所なんて何処でもいいよ。こうやって一緒に居られて、馬鹿言い合って、笑っていられれば。それが出来ればどこだって私にとって‘いい’所だよ。」
何も言えなかった。何か喋れば涙が出てしまう。
「あの時、ひろが急に居なくなってもう会えないって思ってた。それがまさか大阪で会うなんてさ。」
表情は見えないが、その声は優しくて聞いていて心地好い声だった。
「最初は本当にムカついたけど段々寂しくなって、何とか会いたいって色々頑張ってたんだけど、いつの間にか諦めてた。でも、そういう事があったからこうやって一緒に居られるだけでいいって思えるの。」
感動と、後悔と、申し訳なさが入り交じり涙を堪えるのも限界に近づいている。
「安上がりな女。」
これ以上何か言われたら涙腺が決壊する気がして強がってみせた。「もう」と言うあかりをより強く抱きしめる。あかりもそれに応える様にひろゆきを強く抱きしめた。




