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夏(仮)  作者: ふゆか
現在
35/38

未定

12月に入り、冬も本番となってきた。寒さはもちろん、夜になると町中をイルミネーションが彩る。人工的な光が並び樹木にまとわりついたり、動物の形を作っている。そして、夏の虫があかりに導かれる様にカップルが引き寄せられる。そんな光景を見ると何だか体がむず痒く感じた。


バイトが終わり、家路につく。山田は結局あのままバイトを辞めてしまった。家に行っても留守にしておりあそこに住んでいるのかどうかすら分からない。一度だけ店長から山田の連絡先を聞き電話をしたが繋がらなかった。「お掛けになった電話は…」というガイダンスが流れただけー。‘あの日’と重なってしまいそれ以来連絡をする事が出来なかった。


この頃バイトが終わると真っ直ぐに施設に戻るようになっていた。一人の夜はあまりにも退屈だった。


「おかえりなさい。」


門限の二十三時前に帰る様になり小野の機嫌も随分良くなった。


「ただいま。」


部屋に戻ると携帯電話を開く。


【お疲れ。バイト終わって今帰った。】


【お疲れ様。私もさっき帰ったとこ。】


こんなふうにあかりとのメールのやり取りが日課になっていた。顔を合わすわけでもなく、声が聞こえるわけでもなくないが何だかいつも近くに居る気がしていた。


【明日会えない?】


あかりからの不意な誘いに寝転がっていた体を思わず起こす。


【いいよ。】



翌日ー。


十三時にいつもの公園で待ち合わせをした。あかりと再会した時にはうだるような暑さだったがすっかり寒くなった。青々としていた木々も葉が落ち、あの時は隠れて見えなかった景色がその向こうに広がっている。


「よっ。」


駆け寄ってきたあかりを右手を挙げながら迎えた。


「ごめん。遅くなった。」


公園の時計を見ると約束の時間を三十分も過ぎていた。色々と考え事をしていて気づかなかった。


「いいよ。俺もさっき着いたとこだし。」


ドラマで見るような優しい嘘をついてみせた。


「じゃあ、私との約束に遅刻してきたってこと?」


そんな冗談を言い合いながら並んで公園を出た。最近、前にも増して親しい関係になってはいるが二人でこうして歩く時には間にもう一人入れる位の隙間が空く。その僅かな距離がもどかしかった。


「今日自転車じゃないんだ。」


「ああ、たまにはゆっくり歩くのもいいかなと思って。」


この日ひろゆきは敢えて歩いてきた。いつも通る道も自転車だとあっという間。どうせ同じ道を通るのならゆっくりとあかりと過ごしたいと思った。


「何それ?私はひろの自転車の後乗るの好きなんだけどな。」


可愛らしい顔でそんな事を言われ思わず目を反らした。時々こうして二人で会う事も増え好きな気持ちが日に日に大きくなっているのを感じている。そんな気持ちを知ってか知らずかあかりは時々思わせ振りな事を言ったり、したりする。それが嬉しい様な、歯がゆい様な複雑な気持ちにさせる。


しばらく歩きファーストフード店に着いた。いつもの様にあかりはコーヒー、ひろゆきはコーラを注文し空いている席につく。


「この時間って人少なくて良いよね。」


平日の昼間ということもあり店内にはサラリーマンがちらほら居る程度。夕方になれば同年代の学生達で溢れ帰るのだがこの時間の店内はまるで違う店かの様に静かだった。


「周りから見たら俺ら二人って違和感あるだろうね。」


「まあね。私まで不良って思われてるかも。」


「そうかもね。」


あかりとは何を話していても楽しい。こんな時間がいつまでも続けば良いのにー。


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