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夏(仮)  作者: ふゆか
過去
32/38

未定

「今、嘘ついたでしょ。」


犯人を見つけたアニメの名探偵の様に言うあかり。心を見透かされた様であたふたするひろゆきに畳み掛ける。


「ひろ嘘つく時の癖出てたよ。」


「えっ、何それ。」


自分自身の事なのだがそんな癖があるとは初耳だ。


「嘘はついてないよ。」


何も慌てる必要はないはずなのに慌てる。グラスの中のコーラを一気に飲み干しあかりを見ると、鋭い目でこちらを見ている。


「嘘‘は’って何?」


どんどんと追い詰められるひろゆきは観念して携帯電話を一緒に買いに行った事を‘白状’した。話している途中、あかりは素っ気ない相槌を繰り返した。


「ねっ。遊んだわけじゃ無いでしょ?」


一通り話し終え、潔白が証明出来たと自信満々に言うとあかりが笑みを浮かべた。その笑みはいつもの可愛らしいものではなく、不気味な感じがした。


「デートじゃん。」


心外だった。あの高橋とデートなんて堪ったもんじゃない。


「デート?」


相手があかりでなければ怒鳴っていた。


「そう、デ・エ・ト。」


にやにやしながら前のめりになり嫌味の様に言うあかり。


(こいつ…)


「誰があいつとデートなんかするか。」


ムキになってしまい、つい大きな声を出してしまった。話し声で溢れていた店内は一気に静まりかえり視線が集まる。


「ちょっと。」


ひろゆきをなだめる様にあかりが言う。それでもひろゆきの怒りは収まらなかった。


「もういい。帰る。」


一人で立ち上がりレジへ向かう。二人分の会計を済ませ店を出ると直ぐにタバコを咥え火を着けた。


月明かりで色が濃くなった煙が空気の中を漂い消えていく。一人になったからか、タバコを吸ったからかは分からないが段々と冷静さを取り戻し後悔が襲ってくる。


「はあ。」


ため息をつきながら自転車に股がる。連絡先を交換するはずだった携帯電話を取り出し時間を確認すると間もなく二時というところだった。


「さすがに置いて行ったらまずいか。」


自転車を降り、入り口に向かうとちょうどあかりが出てくるところだった。お互いの存在に気づき二人とも固まる。


「帰るぞ。」


ひろゆきが言うとあかりが頷き駆け寄る。「ごめん」とあかりが呟く。


「何が?」


「えっ、怒らせちゃったじゃん。」


「そうだっけ?」


怒った自分が恥ずかしくなり無かった事にしたかった。冷静になると怒る様な事ではなかったと気づいた。


「それより連絡先教えてよ。」


ここでようやく本題にたどり着いた。


「そっか。その為に来てくれたんだもんね。」


思い出したかの様に言いながら携帯電話を取り出す。


「ありがとう。乗りなよ。」


自転車の荷台に上着を巻き付けながら促すひろゆき。


「寒くないの?」


「寒い。けど良い。」


「ありがとう。」


ひろゆきに続きあかりが自転車に股がる。それとほぼ同時に背中にあかりが寄りかかり、両腕がひろゆきの腹の前で交差した。


「ちょっとは寒くなくなった?」


あかりの体温と優しい声が寒さを吹き飛ばす。


「あかり?」


「ん?」


思わず「好き」と言いそうになった。


「また公園寄る?」


「寒いから嫌。」


「残念。」


あかりの家がずっと遠くにあればいいのに。そんな事を考えながらいつもよりゆっくり自転車を漕いだ。

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