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夏(仮)  作者: ふゆか
過去
29/38

未定

「ごめん待った。」


「全然です。」


待ち合わせの時間より少し早く着いたのだが、既に高橋は待ち合わせ場所に居た。


「改めて思ったんですけど、やっぱり携帯あった方がいいですね。」


自分の携帯を印籠の様にひろゆきに向ける。


携帯を持っていないという話をしてからというもの、顔を見るたびに「携帯持たないんですか?」と聞いてくる高橋に根負けし、ついつい「持つ」と言ってしまった。実を言うと、山田やあかりとの連絡を取るためにもあった方が良いとは思っていた。ただ、携帯を持つ際には施設で手続きが必要でそれが煩わしくなかなか気が進まなかった。問題児の自分に果たして許可が出るだろうかと思っていたが、そんな心配は杞憂だった。施設側としても好き勝手やっているひろゆきとの連絡手段が出来、願ったり叶ったりといった様子だったのだ。


そうして携帯を持つことになり、理由は分からないが「一緒に選びに行きます」と言う高橋と携帯ショップへ行く事となった。


「高橋さん急に変わったよね。」


「何の事?」と言った目でひろゆきを見る。


「こないだまで滅茶苦茶無愛想だったじゃん。」


「あれは、人見知りしてたんです。」


「でも切り替えが凄いよね。」


「すいません。」


「謝りなくても良いよ。」


「…。」


ふと高橋を見ると耳を真っ赤にしていた。その姿があの日と重なり、すっかり忘れていたもやもやが蘇る。


「そういえばさあ、雰囲気違った日あったじゃん?あれって何が違ったの?」


「えっ?」


何を今更というような反応だった。


「実はあの時聞こえなかったんだよね。」


「ちょっとだけ化粧変えたんです。」


「ああ、そういう事か。」


その後熱心に変えたところを話していたが、よく分からず、それ程興味もなかったひろゆきは聞き流していた。


暫く歩くと携帯ショップに着いた。


「ここですよ。」


店内に入ると無数の携帯電話のサンプルが置かれていた。


「携帯って種類こんなあんの?」


高橋に救いを求める様に小声で聞いた。


「そうですよ。」


そうこうしていると店員が寄ってきた。


「本日はどうされましたか。」


いかにもといった作り笑顔が感にさわる。


「彼が携帯探してて。」


即座にそう答える高橋の姿が頼もしく見えた。


その後店員が何種類かの機種をプレゼンし、飽きてきたひろゆきはその時たまたま店員が手にしていた物に決めた。


「では、二時間程後でお渡し出来ます。」


「二時間。」


直ぐに手に入ると思っていたひろゆきは驚いた。その姿を見た高橋が笑う。


「どっかで時間潰そうか。」


携帯ショップを出た二人は近くの喫茶店に入った。


ひろゆきはコーラ、高橋はカフェラテを注文し向かい合って座った。日曜の店内はカップルが大半を占めていた。


「竹田さんって結構可愛いとこありますよね。」


「どこが?」


可愛いという表現が少し引っ掛かる。


「何か、天然って言われません?」


「言われたことない。」


タバコを取り出し火を付ける。吸い込んだ煙を勢いよく天井に向かって吐き出した。


「バイト間に合うかな?」


時刻は午後二時半。バイトまであと二時間だ。


「多分大丈夫ですよ。」


二人は携帯を受け取れる時間まで喫茶店で時間を潰した。最初は面倒臭いという思いもあったが、意外と会話が盛り上がりあっという間に時間が過ぎた。


携帯ショップに戻り、無事携帯電話を受け取るとそのままバイトに向かった。


店に着くと「あれ?二人一緒?」と店長がにやにやしながら聞いてきた。ひろゆきは「しまった」と思った。変な誤解をされたら後々面倒だ。


「たまたまそこで会って。」


そのまま更衣室へ向かう。急いで着替えていると、


「何であんな嘘ついたんですか?」


「変な誤解されたら嫌じゃん。」


「私は構いませんよ。」


さっきまで楽しそうだったくせに、手のひらを返したかの様に不機嫌になる高橋。


(何だこいつは…)


「じゃあ、先行くね。」


バイトが始まってからも不機嫌だった高橋だが、暫くすると日中の様に戻っていた。一緒に働くバイト仲間からは「いつの間に仲良くなったの?」といじられる始末。


そんないじりを乗り越え無事バイトを終えた。


携帯を手にいれた事を伝えるためにであかりの所へ行かなくては。急いで店を出ようとしていると、高橋に呼び止められた。


「竹田さん。連絡先。」


「忘れてる」と言わんばかりにひろゆきに携帯を向ける。


「ああ。」


始めて登録する相手が高橋かと戸惑ったが、一刻も早く終わらせる為に連絡先の交換を済ませた。

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