未定
ファミレスを出た二人はゆっくりと歩き始めた。
「寒いね。」
沈黙が気まずかったのもあり、どうでもいい話しをした。
「そうだね。」
会話が続かない。二人は無言のままあかりの家に向かってひたすら歩いた。
ファミレスで突然泣き出したあかりは、涙が止まるといかにもわざとらしい笑顔を作った。その顔はとても辛そうな、寂しそうな表情に見えた。
ひろゆきはそれをただ見ている事しか出来なかった。
「ねえ。寄ってかない。」
「えっ?」
家にかと思い驚いてあかりを見ると正面に見える公園を指差していた。
「ああ、いいよ。」
二人は再開を果たした日のようにベンチに隣り合って腰掛けた。
無言のまま二人は空を眺める。
「私ね。高校生じゃないんだ。」
唐突に切り出したあかり。あまりに突然で頭が追い付かず「そっか」と返す。
「驚かないんだ。」
そう言われ、驚く事なのだと気がついた。
「驚かない。」
今度はあかりが「そっか」と返す。
「あかり?」
「ん?」
「本当に楽しい?」と聞こうとしたがやめた。きっとまた泣かせてしまうことが容易く想像出来てしまったのだ。
「何?」
「呼んだだけ。」
何とか誤魔化そうと出た言葉だった。
「何それ。」
僅かだかあかりの表情が緩む。隣を向くとあかりがぼんやりと空を眺めている。月明かりに照らされた横顔は何処か寂しそうだか、とても綺麗だった。見とれているとあかりがこちらを向いた。
「ん?」
にこりと投げかけられた笑顔にひろゆきの鼓動が早くなる。
「何でもない。」
暫くの間、二人は隣り合って空を眺めた。時々、ポツリと何でもないやり取りをし、また沈黙という事を繰り返した。不思議とその沈黙が心地よく感じた。
視線の先にあった月が頭上まで来た頃、あかりの体がひろゆきに寄りかかってきた。眠ってしまったのかとあかりの顔覗き込むと目があった。
「うわっ。」
驚いたひろゆきにくすりと笑うあかり。
「どうしたの?」
「ひろ、こういうの慣れてないでしょ。」
いたずらっぽく言うあかり。
「ま、まあ…。」
図星だ。その事が凄く恥ずかしい。それと同時にあかりはこういうの慣れてるのかなと少し複雑な気分になった。
「何で連絡くれなかったの?」
何となく寂しそうに聞こえたが、まさかあかりが連絡を待っていた筈がないと自分に言い聞かせる。
「たかしと予定合わなくてさ。」
嘘をついた。たかしにはあかりと会った事は言っていない。三人で遊ぼうというあかりの提案で「また会える」と心踊っていたが、目の前でたかしと仲良くされる事を想像するだけで嫉妬心が溢れだす。それに加え、たかしとの関係も悪くなってしまっていた。
「まあ、たかしはサッカーしか頭にないしね。」
ひろゆきに寄りかかったあかりが上目遣いで笑いながら言う。
「うん…。」
あかりを騙してしまった申し訳なさで目を反らした。
「あかり?」
「何?」
言葉に詰まっていると
「また呼んだだけ?」
「違うよ。」
ひろゆきは意を決して聞く。
「たかしの事好き?」
聞かなくても答えは分かっている。その答えは聞きたくない。そんな質問をしてしまった事を後悔したが、これ以上一緒に居ると期待してしまう。それならばはっきりさせておきたかった。
「えっ…」
困惑するあかりを見て「やっぱり」と落胆した。




