未定
重い空気が流れる中あかりが口を開いた。
「たかしが自殺なんてするかな…?」
ひろゆきの方を見るあかり。そう言われると「確かに」と思った。たかしは誰よりも真っ直ぐで、自分に厳しく、常に困難には立ち向かう。そんなやつだった。途中から関係を拗らせてしまったがずっと傍で見てきたひろゆきも知っている。
「もしかすると何かしら理由というか、あったのかもね。」
真実は分からない。その時、たかしが何を見て、何を思い、何故そうなったのか。本人が居ない今、確認する手立てはない。それでも、何か事情があったに違いない。そう信じたい。
「お墓の場所って分かりますか?」
「それが、亡くなってからご両親がやって来てそれっきりなの…」
小野が申し訳なさそうに言った。「もう会えないんだな」そう思うと涙が伝った。その姿を見たあかりがひろゆきの手を強く握りしめる。
「せめて、事故があった場所に手合わせに行こう。」
「うん。」
小野に事故があった場所を聞き携帯にメモを取った。
その後、三人たかしとの思い出を思い思いに話した。やはり、たかしの事を一番知っていたのは小野だった。それでも、小学校でのたかしはあかりが一番知っており、中学校でのたかしはひろゆきが一番知っていた。
三人の知っているたかしはやはり、真っ直ぐなやつだった。
やがて日が傾き小学生達が帰宅し始めた。
「もうこんな時間ね。」
小野が時計を見ながら立ち上がる。
「じゃあ、私達はこの辺で。」
あかりが荷物をまとめる。ひろゆきはもう少しここに居たかった。思い出に浸っているのもあるが、もし、今昔の自分の様に思い悩んでいる子がいるのなら何か力になれないだろうかー。そんな事を考えていた。
「小野さん。もし、道を逸れそうな子がいたら…」
「力になります。」と言いかけたがやめた。自分は道を逸れたまま戻れなかった。戻り方を知りない。そんなやつが力になれっこない。
「ありがとう。でも、既にひろくんのお陰で沢山の子を救えてるのよ。ひろくんが居たから同じ様な子には早くから援助出来てるの。」
優しい笑顔が向けられる。
「何よりあんな大変な思いはもう懲り懲り。」
その言葉にあかりがくすりと笑った。
「あー。どうもすいませんでした。」
小野の意地悪な冗談にひろゆきも冗談で返す。
あの頃こんな風になれるとは想像もしていなかった。『未来は分からない』ものだと改めて思った。
施設を後にし、二人は宿泊先のホテルに向かった。二人が泊まるのは寂れたビジネスホテル。
「誕生日なのにこんな所で良かったの?」
「節約。」
人差し指を立てるあかり。こういう堅実なところも大好きだ。
「晩ごはんはちょっと良いところ予約してるから。」
「吉野家で十分なのに。」
そんな事を言いながらも嬉しそうなあかり。そんなあかりを見てひろゆきも嬉しくなった。
「良い時間だし行こうか。」




