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『月曜の歌』  作者: こうた
第一話 再生数の向こう側

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第四話 映ってはいけないもの

悠真は何度も動画を再生した。


白鳴隧道の入口。


自分がフェンスをくぐろうとする姿。


そして、その奥。


ライトの届かない闇の中に、確かに一人の少女が立っている。


白いワンピース。


肩までではなく、腰のあたりまで伸びた黒髪。


顔は暗闇に溶け込み、表情だけが見えない。


「……なんだ、これ。」


悠真は映像を一時停止した。


少女を拡大する。


画質は荒くなるが、人の形だけははっきりしていた。


撮影中、そこには誰もいなかった。


少なくとも、自分の目には。


「編集ソフトのバグか……?」


別のプレーヤーで再生する。


結果は同じ。


少女は消えない。


さらにフレーム送りで確認すると、奇妙なことに気付いた。


悠真が一歩進むたび、少女も一歩だけ前へ出ている。


だが歩く姿は映っていない。


コマが切り替わるたびに、少しずつ距離が縮まっているだけだった。


最後のフレームでは、入口から十メートル以上離れていたはずの少女が、フェンスのすぐ内側に立っていた。


背筋が冷たくなる。


「……冗談だろ。」


その時、編集ソフトが突然フリーズした。


画面には少女だけが映ったまま動かない。


マウスもキーボードも反応しない。


数秒後、スピーカーから「ザーッ」というノイズが流れ始めた。


音量は勝手に上がっていく。


ザーッ……


ザーッ……


そのノイズの奥で、一瞬だけ、人の声のようなものが混じった。


「……き……て……」


悠真は慌ててスピーカーの電源を切った。


部屋は静まり返る。


心臓だけが早鐘を打っていた。



---


翌日。


気持ちを落ち着かせるため、悠真は映像をオカルト仲間の岩城慎二へ送った。


慎二は昔から一緒に心霊スポットを巡ってきたカメラマンで、幽霊など信じない現実主義者だった。


一時間後、電話が鳴る。


「悠真、お前これ、本気で送ってきた?」


「何か映ってるだろ?」


「いや。」


慎二は即答した。


「何も映ってない。」


悠真は言葉を失った。


「白い服の女だよ。トンネルの奥に立ってる。」


「どこに?」


「だから、ここだ!」


画面を見せながら説明する。


しかし慎二は首をかしげるだけだった。


「お前、疲れてないか?」


「……見えないのか?」


「見えない。」


悠真は自分のスマートフォンを見直した。


そこには、確かに少女が映っている。


慎二のスマートフォンには、何も映っていない。


同じ動画なのに。


「そんなこと……。」


電話を切った後も、悠真は何度も確認した。


自分には見える。


他人には見えない。


それだけが現実だった。



---


夜。


シャワーを浴び終え、洗面所の鏡を見る。


疲れた顔が映っている。


髪を拭きながら顔を上げた、その時。


鏡の奥。


自分の背後に、白い服の少女が立っていた。


悠真は振り返る。


誰もいない。


恐る恐る鏡を見る。


もう少女はいなかった。


「……気のせいだ。」


そう言い聞かせる。


だが、鏡には曇った文字が浮かび上がっていた。


誰かが指で書いたように、ゆっくりと。


「あと三日」


悠真が息をのんだ瞬間、水滴は流れ落ち、文字は跡形もなく消えた。


鏡には、自分の怯えた顔だけが映っていた。


その頃。


白鳴隧道の奥深く。


誰もいないはずの闇の中で、美しい女の歌声が、一節だけ静かに響いた。


まるで、次の来訪者を待ちわびるように。

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