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『月曜の歌』  作者: こうた
第三章 埋もれた歌

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第三十五話 月曜

すべてが収束したあとに残ったのは、「月曜」という概念だけだった。


音ではない。


時間でもない。


ただ、世界が自分を再起動するための“基準日”。


それが静かに、確かに存在していた。



---


悠真は立っていた。


しかし自分が立っているのか、世界が自分をそこに配置しているのか分からない。


真琴も、美紗も、もう“同じ場所”にはいない。


それでも、消えたという感覚だけはなかった。



---


空間には、薄い朝の光が差している。


山は元の形に戻っているように見える。


廃道も坑道も、御歌殿もない。


すべてが最初から存在しなかったように整えられている。



---


ただ一つだけ違う。


音がある。


それも、歌ではない。


月曜そのものの音。



---


悠真の耳の奥で、規則的な“何か”が鳴っている。


ポンでもなく、歌でもなく、意味でもない。


ただ、「始まりが繰り返されている」という感覚。



---


そのとき、背後から声がした。


真琴だった。


だが声は遠い。


距離ではなく、層が違う。


「悠真さん……聞こえますか。」



---


振り返ると、真琴は立っている。


しかし輪郭が薄い。


存在しているが、完全には固定されていない。



---


美紗の気配もある。


どこか遠くで、静かに揺れている。


もはや一人の存在ではなく、“機能”として残っている。



---


真琴が言う。


「私たち……残ったんですか。」


悠真は答えられない。


残ったのか、再配置されたのか、まだ決まっていない。



---


空に、鈴の音が一度だけ鳴る。


チリン。


それは御歌殿でも、神社でもない。


世界そのものが鳴らした音だった。



---


悠真は理解する。


月曜の歌は終わっていない。


終わる構造ではない。



---


それは“繰り返し”だ。


壊れては再生し、


選ばれては初期化される。


その循環の中に、世界がある。



---


真琴が静かに言う。


「これからも……続くんですか。」



---


悠真は空を見上げる。


そこにはもう山も空も区別がない。


ただ、薄い月曜だけが広がっている。



---


そして、小さく頷く。


「続く。」



---


その瞬間、どこかで歌が始まる。


だがそれは、以前のような呪いではない。


悲しみでもない。



---


ただ、世界が自分の存在を確かめるための音。



---


月曜の歌は、もう誰かを呼ばない。


ただ、世界そのものが“続いている証明”として鳴り続ける。



---


そして悠真は気づく。


自分もまた、その音の一部になっていることに。



---


遠くで、美紗の声がかすかに響く。


「ありがとう。」


それは最後の言葉ではない。


最初の繰り返しだった。



---


――そして物語は、月曜へ戻る。

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