最終話 反復
月曜は終わらない。
それは曜日ではなく、状態だった。
世界が自分を維持するために必要な、最小単位の循環。
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悠真は、同じ朝を何度も見ていることに気づく。
山の形は安定している。
空の色も一定。
風も、鳥の声も、すべてが“正しい”はずだった。
それでも、どこかが決定的に違う。
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耳の奥で、微かに音が鳴る。
ポンでも歌でもない。
それは“繰り返しの開始点”だった。
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真琴の姿はすぐ近くにある。
しかし、距離ではなく位相がずれている。
話しかければ返事はある。
だが、同じ時間に存在していない。
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「また……月曜ですね。」
真琴はそう言う。
その言葉に疲れはない。
ただ事実としての確認だけがある。
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悠真は頷く。
「まただ。」
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美紗はどこにもいない。
しかし、いないこと自体が存在している。
風が吹くたび、歌の残響のようなものが混じる。
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山の奥を見る。
御歌殿も坑道も社もない。
それでも、“あった”という記憶だけが空間に残っている。
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悠真は理解する。
この世界は修復されたのではない。
再生され続けている。
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真琴が空を見上げる。
「これ、いつ終わるんでしょう。」
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悠真は答えない。
終わるという概念自体が、この世界にはもう適用されない。
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代わりに、耳の奥の音が少しだけ強くなる。
ポン。
それは始まりの合図ではない。
ただの確認。
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世界がここにあることを、もう一度確かめるための音。
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悠真は静かに歩き出す。
同じ道。
同じ山。
同じ月曜。
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だが一歩だけ違う。
ほんのわずかに、何かがずれている。
それは希望でも絶望でもない。
ただの“変化の可能性”。
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真琴もついてくる。
「また、何か起きますね。」
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悠真は小さく笑う。
「起きるさ。」
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その瞬間、遠くで歌が始まる。
それは呪いではない。
救いでもない。
ただ、世界が“次へ進む準備”をする音。
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月曜の歌は終わらない。
だが、繰り返しの中でわずかに形を変え続ける。
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そして悠真は気づく。
この反復の中で唯一変わり続けているのは、自分の“理解”だけだと。
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空の向こうで、かすかに声がする。
「また、月曜。」
それは誰の声でもない。
世界そのものの記憶だった。
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そして、物語は再び最初へ戻る。
だが同じではない。
少しだけ違う月曜へ。
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――『月曜の歌』完結。




