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『月曜の歌』  作者: こうた
第三章 埋もれた歌

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最終話 反復

月曜は終わらない。


それは曜日ではなく、状態だった。


世界が自分を維持するために必要な、最小単位の循環。



---


悠真は、同じ朝を何度も見ていることに気づく。


山の形は安定している。


空の色も一定。


風も、鳥の声も、すべてが“正しい”はずだった。


それでも、どこかが決定的に違う。



---


耳の奥で、微かに音が鳴る。


ポンでも歌でもない。


それは“繰り返しの開始点”だった。



---


真琴の姿はすぐ近くにある。


しかし、距離ではなく位相がずれている。


話しかければ返事はある。


だが、同じ時間に存在していない。



---


「また……月曜ですね。」


真琴はそう言う。


その言葉に疲れはない。


ただ事実としての確認だけがある。



---


悠真は頷く。


「まただ。」



---


美紗はどこにもいない。


しかし、いないこと自体が存在している。


風が吹くたび、歌の残響のようなものが混じる。



---


山の奥を見る。


御歌殿も坑道も社もない。


それでも、“あった”という記憶だけが空間に残っている。



---


悠真は理解する。


この世界は修復されたのではない。


再生され続けている。



---


真琴が空を見上げる。


「これ、いつ終わるんでしょう。」



---


悠真は答えない。


終わるという概念自体が、この世界にはもう適用されない。



---


代わりに、耳の奥の音が少しだけ強くなる。


ポン。


それは始まりの合図ではない。


ただの確認。



---


世界がここにあることを、もう一度確かめるための音。



---


悠真は静かに歩き出す。


同じ道。


同じ山。


同じ月曜。



---


だが一歩だけ違う。


ほんのわずかに、何かがずれている。


それは希望でも絶望でもない。


ただの“変化の可能性”。



---


真琴もついてくる。


「また、何か起きますね。」



---


悠真は小さく笑う。


「起きるさ。」



---


その瞬間、遠くで歌が始まる。


それは呪いではない。


救いでもない。


ただ、世界が“次へ進む準備”をする音。



---


月曜の歌は終わらない。


だが、繰り返しの中でわずかに形を変え続ける。



---


そして悠真は気づく。


この反復の中で唯一変わり続けているのは、自分の“理解”だけだと。



---


空の向こうで、かすかに声がする。


「また、月曜。」


それは誰の声でもない。


世界そのものの記憶だった。



---


そして、物語は再び最初へ戻る。


だが同じではない。


少しだけ違う月曜へ。



---


――『月曜の歌』完結。

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