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『月曜の歌』  作者: こうた
第三章 埋もれた歌

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第三十四話 選択

世界は止まっていた。


止まっているのに、崩壊も進行も同時に存在している。


矛盾した状態のまま、“月曜の歌”だけが淡く流れている。


それはもう音ではなく、規則そのものだった。



---


悠真の目の前には、無数の可能性が並んでいる。


世界が続く分岐。


誰かが消える分岐。


歌として固定される分岐。


そして、完全に終わる分岐。


どれも正しくて、どれも間違いだった。



---


真琴は小さく呟く。


「これ……選べるんですか。」


悠真は答えない。


選ぶという行為そのものが、もう重すぎて言葉にならなかった。



---


美紗が静かに近づく。


その存在はもはや“少女”ではない。


音と記憶の境界に立つ、均衡そのものだった。



---


「あなたは最初に名前を与えた人。」


美紗はそう言う。


「だから、最後も決める。」



---


悠真は目を閉じる。


脳裏に浮かぶのは、これまでのすべてだった。


消えた配信者。


声の墓。


御歌殿。


そして、美紗の泣き顔。



---


真琴が一歩前に出る。


「待ってください。」


「それは……一人で決めるものじゃない。」



---


その言葉で、空間がわずかに揺れる。


月曜の歌が、一瞬だけ弱まる。



---


美紗が初めて困ったように表情を変える。


「……二人は、残れない。」


「基準は一つだけ。」



---


悠真は理解する。


この世界は、複数の中心を持てない。


歌が崩れるからだ。



---


沈黙。


その間にも、世界は少しずつ“書き換え”を進めている。


山の形が変わる。


坑道が消える。


社が戻る。


何もかもが再配置されていく。



---


真琴は静かに笑う。


「じゃあ、簡単ですね。」


「選ばれた方が残ればいい。」



---


悠真は真琴を見る。


その表情だけで、すべてを理解する。



---


美紗が震える声で言う。


「それは……間違い。」



---


その瞬間、月曜の歌が一段階強くなる。


選択そのものを飲み込もうとするように。



---


悠真は一歩踏み出す。


そして、ようやく口を開く。



---


「俺は――」



---


その言葉と同時に、世界のすべてが収束する。


光も、音も、記憶も。


すべてが一つの点へ向かっていく。



---


美紗が目を閉じる。


真琴が息を呑む。


そして――



---


選択が確定した。



---


その瞬間、月曜の歌が完成する。



---


――第三十五話「月曜」へ続く。

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