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『月曜の歌』  作者: こうた
第三章 埋もれた歌

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第三十三話 再生

音が消えた。


正確には、すべての音が同じ一つの層に沈んだ。


それは静寂ではない。


何かが始まる直前の、“均一な満ち”だった。


悠真は立っていた。


だが、足元の感覚がない。


地面があるのかどうかすら分からない。



---


真琴の声が聞こえる。


しかし、それは耳ではなく“理解”として届く。


「ここ……現実じゃない。」


悠真は頷く。


もうその必要もないが、そうするしかなかった。



---


周囲に、光が戻り始める。


しかしそれは太陽ではない。


月曜の歌が形を変えた、“再構成の光”だった。



---


遠くで、何かが組み立てられている。


山。


トンネル。


坑道。


御歌殿。


すべてが分解され、再び組み直されていく。


まるで世界そのものが修復されているようだった。



---


「戻ってる……?」


真琴の声に、悠真は答えられない。


戻っているのか。


それとも、作り直されているのか。


区別がつかない。



---


そのときだった。


空間の中心に、美紗が再び現れる。


今度は少女の姿ではない。


人でもない。


音の輪郭そのものとして。



---


美紗は静かに言う。


「これは再生じゃない。」


悠真は問い返す。


「じゃあ何だ。」



---


「選び直し。」



---


その言葉と同時に、世界の一部が揺らぐ。


視界の奥に、無数の“別の可能性”が浮かび上がる。


白鳴隧道が存在しない世界。


歌が生まれなかった世界。


誰も消えなかった世界。



---


真琴が息を呑む。


「これ……全部……?」


美紗は頷く。


「月曜の歌は、世界を一度“初期化”する。」


「その代わりに、選ぶ。」



---


悠真は気づく。


自分が名付けた瞬間から、この世界はすでに分岐していた。


そして今、それが確定しようとしている。



---


そのとき、御歌殿の残響が再び響く。


遠く、しかし確かに。


まだ“歌になる前の声”が残っている。



---


真琴が叫ぶ。


「じゃあ……私たちは消えるんですか!」



---


美紗は一瞬だけ沈黙する。


そして、静かに答える。


「残ることもできる。」


「ただし、代わりが必要。」



---


悠真は理解する。


誰かが“基準”として残らなければ、世界は安定しない。


月曜の歌は完成しても、まだ終わっていない。



---


その瞬間、無数の選択肢が目の前に広がる。


・世界ごと消える


・誰かだけ残る


・歌を壊す


・歌として生きる



---


真琴は悠真を見る。


何も言わない。


だが答えはそこにあった。



---


悠真は静かに息を吐く。


そして一歩、前に出る。



---


美紗が小さく笑う。


「決めるんだね。」



---


その瞬間、世界が止まる。


すべての音が、再び一つの点へ収束する。



---


月曜の歌は、最後の選択を待っていた。



---


――第三十四話「選択」へ続く。

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