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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
9章・セドラル、再び

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第806話 堕ちた団長

 クリフは剣を高く掲げ、透明な赤いドーム状の結界?を広げた。

そしてその数秒後、ドームの範囲内に熱風が吹き荒れた。


俺は平気だったが、青空などは結構なダメージを食らっていた。

俺だけでなくメニィも大してきつく感じていないところを見るに、やはり火属性の攻撃か。


 また、その後間髪入れずにクリフは突っ込んできた。

その速度は、剣を振りかぶったのがわかった直後にはもう攻撃を食らっていた・・・というほどで、まさに瞬速と呼ぶべきものだった。


そして後方に払い抜けたかと思うと、すぐに方向転換してまた高速で払い抜ける。

2秒もしないうちに、前後から2発の攻撃を当てるよう意識して動いているように感じられる。


俺は2発目は咄嗟に振り向いて盾で防げて、隙を見て回復を行った。

幸いにも、2連撃直後の隙を潰す攻撃まではしてこないようだ。


 と思っていたら、剣に炎を纏わせて斬撃を3発続けて飛ばしてきた。

これはメニィが結界を張って防いだが、当のメニィはさっきの2連撃の初撃を食らい、深手を負っている。


他のメンバーとまとめて回復を行ったが、魔力まで回復する余裕はなかった。

というのは、傷を癒したかと思うとすぐまた攻撃してきたからだ。


「[炎は不滅だ!]」


 奥義のそれのような詠唱をしつつ、クリフはその場で剣を斜め上に振り上げる。

メニィと、そのすぐ近くにいた亮の足元から巨大な刃が飛び出す。

2人は大きく吹き飛ばされ、落ちてきたところを無属性の斬撃で切り裂かれた。


声をかける間もなく、クリフはこちらにも攻めてくる。

剣を片手に足首を捻り、なんと4人に分身して、一斉に俺を斬ってきた。


4方向からの同時攻撃となるとさすがに防げず、全身に手痛い攻撃を食らった。

そこに横から未菜が光の魔弾を飛ばすが、何なく避けられた上に距離を大きく詰められ、反撃を食らった。


 幸いにも未菜は扇持ちなので、うまいこと凌いだ・・・かに思われたが、クリフは巧みに立ち回って未菜のガードを捲り、隙をついて剣を突き立てた。


白い袴が破け、瞬く間に赤く染まっていく様は、まるで巫女が暗殺者に襲われているかの如き光景だ。


「・・・!」


未菜は懸命にクリフを掴んで反撃しようとしたが、奴はすぐに飛び退いて回避。

そのまま手を翳して、未菜を炎の球体に閉じ込め、飛び込むようにして斬った。



 このままではまずいと感じた俺は、咄嗟に龍神のほうを見た。

生前のこいつと関わりが一応あった龍神なら、何かこの状況を打破する方法がわかるのではないか、と藁にも縋る想いで頼ったのだ。


「なあ、何かわかるだろ?こいつの弱点とか、何とか!」


「そんなの知らん!クリフは、俺に負けず劣らずの実力を持つ吸血鬼狩りだ。そんな弱点なんて・・・!」


そこまで言って、龍神ははっとした。


「・・・強いて言うなら、攻撃の隙を突くことか。どんな奴でも、攻撃の前後には必ず隙ができる。そこを狙えば・・・!」


「・・・!」



 クリフは再び、瞬速の飛び込み斬りを放ってくる。

俺はそれを盾を構え、結界を張って前後からの攻撃をどうにか防いだ。そして、奴の攻撃が終わった直後の隙をついて斧を投げた。


クリフは剣を高く掲げ、足元から炎を噴き出してそれを防ごうとするが、その程度では止まらない。

回転する斧が、奴の左肩に命中した。


 その際に流れた血は、普通の異人と同じ赤いもの。

アンデッド特有の黒い血ではなく、見た目も普通の異人と大差ないので、アンデッドだとは思えない。


しかし、それでも間違いなくアンデッドなのだろう。

少なくとも、まともな知性はないに違いない・・・かつての仲間であったはずの者を、こうして襲っているのだから。


「[消えぬ炎よ、燃え滾れ!]」


 詠唱と共に、あの火山弾のような火球が降り注ぐ技を使ってきた。

龍神によるとこれはクリフの奥義で、「ボルガノン・ブレイク」という名前らしい。


「大した威力の技だと思ってたが、まさか喰らうことになる日がこようとはな!」


そう語る龍神は、異様なほど俊敏に動いて火山弾をすべて回避した。

俺は、言わずもがな盾と結界を駆使してガードした。


 そこで、最初に吹き飛ばされたエルとモールが戻ってきた。

2人は、かつての自分たちの団長だったクリフが変わり果てていたことを、まだ受け入れられていない様子だった。


「団長・・・どうして・・・」


「あなたは、そう簡単には死なない・・・そう思っていたのに!」


だが、悲しんでいる暇はない。

それは、俺にもよくわかった。


「泣くのは後にしろ!今は、こいつを何とかするんだ!」


 龍神はそう言いつつ、刀を掲げてあたりに雷を迸らせ、エルとモールを回復した。

その目は相変わらず冷酷で、落ち着いているが・・・どこか複雑な想いを感じられる、ような気がした。

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