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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
9章・セドラル、再び

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第805話 狩る者の行く末

「それじゃ、そろそろ本題に入ろう」


 モールに言われて、ここに来たそもそもの目的を思い出した。

そうだ、クリフの手がかりが残っていないか探すんだった。


「見たところ・・・それらしきものは何もない、な」


エルの言う通り、辺りには荒涼とした大地が広がるばかりで、人のいた痕跡など何も見当たらない。

しかし、キョウラは何かを感じたようで、「いえ、ここには・・・」と言葉を詰まらせた。


「どうした?」


「かつて、ここで戦った1人の異人・・・その力が、わずかながらこの地に残っています」


 キョウラは、クリフのことは知らないし、確実に彼がここで最後の戦いを繰り広げたという証拠はない。しかし、少なくとも数年前にこの場所でアンデッドの群れと異人の戦いがあった、ということは痕跡からして事実だと言った。


「相当激しい戦いだったのでしょう、彼はひどく傷つき、多くの血を流しました。その血には、殺人者固有の魔力が宿っていて・・・それがこの地に流れ、染み込み、今に至るまで残っています」


そこで、メニィが白い三角形の道具を取り出して宙に浮かべ、何かをしばらく観察した。

そして、小さく頷いた。


「確かに、殺人者の力は残ってはいますね。でも、血に宿る魔力は普通わずかなもの。数年経っても消えないとなると・・・」


「それなりにたくさんの血が流れていた、ということになります。そして、それだけの血を流せば・・・」


 キョウラがそこまで言うと、モールがおいおい、と食いついた。


「もしかして、あの人が死んだって言いたいのか?」


「そこまでは断定できません。ただ、彼は戦いに勝った後、あちらに歩いていったようです」


キョウラが指さした方向、崖の右伝いを見て、エルも頷いた。


「そうだ、確かに彼はあの後あっちの方に・・・となると、あっちにも痕跡があるかもしれない!」


「ええ。言ってみましょう」





 そうして、キョウラとメニィにだけ見える痕跡を追って進んでいき、それが途切れた場所には・・・何もなかった。


「ここで終わり?」


「ええ。道中で、地面に染み込んだ血が徐々に少なくなっていたので、このあたりで止血したのでしょう」


「そしてその後、彼はどこかへ歩いていった。その先は・・・」


キョウラは、急に言葉を切った。

そして、正面を見たまま硬直した。


「ん?どうした・・・?」


 その視線の先を追って、俺たちも驚いた。

目の前には、ゾンビのようなアンデッドが数体いた・・・のだが、問題はそれらの矛先だ。


奴らが注目しているのは、緑のジャンパーかコートを着た若い男。

黒い帽子を被り、わずかに茶色い髪を覗かせ、黒い手袋をつけ・・・緑のズボンと黒のブーツを掃いている。


「あ、あれは・・・!?」


 驚いている間に、男は剣を横に構えて叫ぶ。


「[消えぬ炎よ、燃え滾れ!]」


火山弾のようにも見える炎の塊が降り注ぎ、ゾンビたちをまとめて焼き払う。

その姿も、技名も、間違いなく以前見たあの男だと──すぐわかった。


「団長だ・・・クリフだ!」


 エルはそう叫び、男に向かって走る。

モールもまた、その後を追う。


「あっ・・・!ダメ!」


「いけません!その人は、もう・・・!」


メニィが手を伸ばして叫び、キョウラもまた2人を止めようと叫ぶ。

しかし、エルたちはそんなのおかまいなしに男に近づいた。


「団長・・・!生きてたんだな!」


「今までどこに行っていたんだ・・・!私たちにも、何も言わずに・・・!」




 喜びの声を上げるエルたち。

しかし、肝心の団長ことクリフは、依然として厳しい目で2人を見つめた。


そこで、キョウラが叫ぶ。


「・・・離れてください!その人は、アンデッドです!」



 直後、燃える剣が振るわれ、あたりの空気が揺らめいた。


エルたちは、炎のエフェクトとともにうめき声を上げ、ふらふらと後退し倒れた。


「エル!モール!」


2人は胸や首元を斬り裂かれているが、炎の熱で血管が焼き切られたのか血はほぼ出ていない。


「ぁっ・・・な、なぜだ・・・?」


「『デスマッシャー』ですよ」


 キョウラが、冷たく言い放った。

それを聞いて、エルとモールのみならず亮たちまでもが表情を変える。


「なんだ、それは?」


俺の問いかけに、キョウラは答える。


「滅多に現れない存在ではありますが、死後、何らかの理由で蘇った殺人者の屍・・・すなわち、殺人者のアンデッドです」


「殺人者は、別名をマッシャーとも言う。それが死んでいるから、デスマッシャーと呼ばれているんだ」


 龍神の言葉の後、クリフは俺たちのほうを見てきた。

その目は、黒と青を混ぜたような・・・光はないが、死んでいるようには見えない。

そんな、不思議な目だった。


「・・・危ない!」


未菜が割り込んできて、剣の攻撃を防いだ。

その時、クリフは──まさしく獲物を狙っている「狩人」のような目つきをしていた。


「クリフ・・・お前!」


 龍神が驚いた顔をし、顔を手で押さえる。

そしてその数秒後、彼は顔を上げた。


「結局、お前もなっちまったのか・・・そうか。なら仕方ない。みんな、構えろ!」


エルたちはもちろん、俺たちもその後ろ姿を見、追い続けていた組織の団長。

そいつは今、かつて自分が狩っていたはずの存在と同じ──生きた屍となって、そこに立っていた。

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