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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
9章・セドラル、再び

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第800話 死へ至る橋

 道を歩くこと数十分、ついに道の終わりが見えてきた。

・・・いや、厳密には「終わり」ではないが、ラド・テナの道を歩く者の大半が目的地とする場所が見えてきたのだ。


「おっ、あれだな?」


俺がそう呟くと、エルが正解の意を示した。


 荒涼とした大地に走る、大きな割れ目。

それは、空を飛ぶか橋を使わなければとても渡れないほどの幅があり、風が音を立てて吹いている。


少しばかり身を乗り出して中を覗き込むと、下は深い闇に覆われており見えない。

正確なことはわからないが、かなりの高さがあることがわかった。


「確かに、ここから身を投げれば確実に死ねるでしょうね・・・実際にやったやつがどれだけいるのか知らないけど」


 沙妃がそう言う傍で、キョウラは何やら神妙な面持ちで崖の下を見つめていた。

やはり何か感じるのか?と尋ねると、彼女は頷いた。


「さっきまでの道と比べると少ないですが、確かにここで命を絶った者はいるようです。特に多いのは、おそらくそこの橋の上から・・・」


キョウラが指差したのは、少しばかり錆びついた金属製の橋。

幅もデザインもごく普通の橋だが、両側のフェンスはそこまで高くはなく、乗り越えることは十分にできそうだ。


「あそこから飛び降りたやつが多いのか」


「ええ。多くの魂が縛りつけられているのは、あの橋の上です」


 その橋を見ていたエルとモールは、「ああ、あそこか」という顔をした。

聞けば、かつてクリフがアンデッドの群れと戦ったのがあの橋の上であったという。


「あの時は夜だったんだが、団長と団長の戦うアンデッドたちの姿ははっきりと見えた。団長の灯す炎は、奴らだけでなく周囲数十メートルの範囲を明るく照らしていた」


「僕らが見た時には、もうほとんど片付いていて、橋の上には死体の山が積み上がって、血がそこら中に飛び散ってたんだ。今はもうほとんど残ってないかもしれないけど、当時はすごかったぜ」


「・・・そうだったのでしょうね。私にはわかります」


 そう言ったのは、キョウラではなくメニィ。

手には、くるくると回転する装飾のついた青色の玉を浮かべている。


「メニィ、そりゃなんだ?」


「『魂の灯籠』・・・死者やアンデッドの魂、あるいはその残滓を検知する道具です。装飾の回転と、玉自体の光り方で、残された残滓の有無と強さがわかります」


玉の上下についている金色の装飾は、上が時計回り、下が反時計回りに回っている。

これは、この周辺にアンデッドの魂と、普通の死者の魂が漂っていることを示しており、玉自体の青い光はそれが持っている力やその残滓がかなり強いことを示している、とのこと。


「年月が経っても、この辺りには強い力・・・悲しみや恨み、怒り、怨念といった感情、魂の力が残っています。それだけ、ここで亡くなった人が多いのでしょう」


 とはいえ、さっきのラド・テナの道に比べれば、まだ弱いほうではあるらしい。

やはり、ここまでたどり着いて命を絶った者は、道と比べると少ないようだ。


「ふと思い出したが・・・あの時はそんなこと気にしてられなかったが、ここは自殺者やらアンデッドやらが多いせいか、いわくつきの場所としても有名なんだ」


エルは、唐突になんちゃって怪談を始めた。


「ある男が、昼間にこの橋の上にたたずむ若い女を見かけた。その女は割れ目のほうを眺めていたが、やがてこちらを見た。その時、男は気づいたんだ・・女の下半身が半透明で、頭がぐしゃぐしゃに割れ、顔が血まみれであることに」


 その男は自殺志願者だったのだが、ここから飛び降りたらそんな死に方をするのかと思うと怖くなり、慌てて逃げ帰ったという。


もちろん、この話が本当にあったことなのかはわからないが、個人的には自殺を試みる者へのせめてもの戒めというか制止として作られた話なのではないか、と考えている・・・とエルは言った。


「ただ、正直こんな話を流したところで、大した戒めにはならない気がする。自殺を考える者は、物理的に助けられない限りはいずれ死ぬ・・・もっとも、死人が化けて出ることはあるだろうが」


 そんなことを言っていると、エルは何かを見て目を細めた。


「ん?どうした?」


「あれは・・・なんだ?」


その視線の先には、向こう側まで続く何の変哲もない橋。

・・・いや、その上にたたずむ1つの人影。


「ん・・・?まさか、あれって・・・」


 俺たちは数秒間そいつを見ていたが、やがてキョウラが唐突に走り出した。


その直後、俺たちにも彼女の行動の意味がわかった。

橋の上に立つ男は、しゃがんで何かを地面に置いた後、橋のフェンスに登ろうとしたのだ。


この男・・・飛び降りるつもりだ。


「ま、待て!」


 俺たちは咄嗟に走り出した。

キョウラの後を追うように。罪人を見つけた役人のように。

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