表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
97/220

95戦い

真子は、ユリコの足の骨を透過状態にした。

このまま、その部分を動かせば綺麗に足の骨を切断することもできる。


だが…。


一旦別々の物質を透過状態にし、その間に骨の細胞を結合させる。

毛細血管を見るより、さらに細かい視力が必要だが、それは吉村先生に習っていた。

体内に細菌が繁殖していないか、など電子顕微鏡並みのスコープを、真子は持つ事が出来る。


結合できる…!


思いもよらない発想だったが、一旦透過状態にする事により、骨の細胞を超高速で修復する事が出来るように真子はなっていた。




勇気の周囲に水が集まってくる。

既に、梅雨のような湿度が勇気を取り巻いていた。


この時期、まだ冬からの乾燥した冷気が日本を取り巻いているため、普段の湿度は10~30度の間、と言うところだろう。

たまに雨が降っても50パーセントは超えないのではないだろうか。

だが、梅雨には70パーセント、80パーセントという湿度が当たり前になる。


着ている衣服が、重くなるような湿度だ。

これが霧状態になれば窓は結露し、衣服は自然と濡れ始める。

100パーセントなら、もう雨である。


勇気は影の身体強化&防御力アップのコスチュームに身を包んでいるから、中の衣服が濡れることは無かったが、コスチュームは種々のセンサーが組み込まれているので、湿度が上がっている事には気が付いていた。


「おじさんさぁ…」


勇気は、呆れたように話した。


「このスーツはスーパーヒーローのコスチュームだぜ。

水中行動も可能なんだよ!」


レインコート男の顔が、微かに動揺した。


「バッカじゃ無いの。

水くらいに負けるヒーローがいると思うのか?」


勇気にしてみれば、そんなのは常識だった。

ヒーローは強い。

火にも水にも負けない。

夏の暑さも、冬の寒さも敵では無いのだ。


元々子供が、ヒーローに憧れて無敵と設定した影のスーツだった。

科学の常識も世間の波風も知らない分、ある意味、どんな大人が考えるより、真実無敵なのだった。


どん、とチーターよりも早い速度で走り出した勇気は、一瞬で水使いの懐に入り込むと、そこから垂直方向に跳び蹴りを放った。


レインコート男の無精髭の生えた顎に爪先が突き刺さり、男を数メートルほど吹き飛ばした。


顎を揺さぶられた男は、一瞬意識が飛んだが、勇気の体重では、さすがにレインコート男から一撃KOまではもぎ取れなかった。


レインコート男は、頭を振りながら立ち上がろうとするが、その肩を巨大な手が、ズン、と掴んだ。


は、と振り向いたレインコート男のゴーグルには、怒り狂ったクロコダイルマンが映っていた。




来るな…。


福には判った。


魚(敵)のそういう意識の移ろいを、福はぼんやりと感じる事が出来る。


鮮明には何も見えない分、アバウトなグレーゾーンの中で、福は動物の意識、満腹か空腹か、好戦的か逃げようとしているか、などもなんとなく捉えられる、漁業に適した感知を持っている。


透明人間は、今、福を襲おうとしていた。


感知できると言っても、魚のように感じられるだけで、透明人間のロジックを読み取れるわけではない。


おそらく、擬態男が死んだのを見て、怒りを感じたのか、それとも戦略的に見て早めに敵を一人消しておこうと思ったのか、そこは判らない。


どの道、人も魚も、好戦的になる時の感覚は変わらない。


じり、と透明人間は動いていた。


福は、心の中で、銛を構えている。

福は影の形を持たなかったが、意識の中では、常に毒の銛を海の男らしく構えていた。


今日は、一撃必殺の毒をくれてやるべ…。


自分の名前にもなっている毒だ。

福は、毒の帝王、とそれを名付けていた。


テトロドキシン…。


これは無論、河豚を食べても数十分で命を停止させるが、福の銛で撃ち込めば、一瞬で相手を即死させる。

胃からの吸収、などを待たないためで、むろん濃縮したテトロドキシンを注射しても同じ効果が得られる。


福は、この毒を人間には使った事は無かったが、何度かやむなく野生動物には使っていた。

自分や仲間の身に危険が及んだときだけだったが、その力は絶大だった。


ただし透明人間も、その力は不明だったが、この1時間かそこらで10人以上の影繰りを殺している猛者だ。

もし福が仕損じたりしたら、死ぬのは福だろう。


そして、おそらく福の仲間の中に透明人間を倒せる人間はいないはずだ。


つまり、俺が負ければユリコ姉ちゃんも勇気坊やも真子さんも、良治さんやユリさんも死ぬことになる。

皆の命は、俺の肩に全て預かっているんだ…。


福は、ギリッ、と銛を強く握り締めた。


と、その服の動きを見切ったのか、突然、透明人間が動いた。


しまった!


どんな武器でもそうだが、あまり力を入れて持っていては、上手く取り廻せない。

ベテランの運転手のように、ラジオに笑いながら片手でハンドルを遊ばせているぐらいが丁度いい状態なのだ。


敵は確かに、何人もの人間を葬っている歴戦の猛者らしかった。


だが…。


福も、銚子の海で黒潮に揉まれた漁師だった。

このタイマンだけは、墨をつける訳にはいかなかった!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ