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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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94殺人

勇気はゴーグルの男に、三角定規銃を発射した。


電気が、空中に不規則な閃光を迸らせてゴーグルの男に命中する。


だが…。


ゴーグルの男が、のっそりと、地面に着地した勇気を振り返った。


「ゲームとかでは、わりと水系の魔術師の弱点が電気だったりするんだよな…、確かに」


にぃ、とレインコートから僅かに覗く口が笑って、


「何でだろうな?

海に雷が落ちたからって、魚が死ぬか?

むしろ水は絶縁体なんだよ、ま、餓鬼はそんな事知らないか…」


言ったときには、勇気の体の周囲は、どんどん湿度が上がってきた。


「空気中の水蒸気を俺は操る。

つまり、それは純粋なH2Oであり、完璧な絶縁体な訳だ、覚えとけよ小僧」




「勇気っ…」


ユリコは思わず立ち上がろうとするが、ついさっき骨折したばかりの足で、添え木があるからと言って立つのは無理だった。


しまった、まさか勇気がピンチになるなんて考えてもいなかった。

しかし影繰りとしての資質はともかく、勇気は小学生であり、決定的に戦闘経験が不足していた。

今まで、なんとか丘とかいう練馬の田舎で、仲間とヒーローごっこをしていたのだ。


単純な戦闘馬鹿が相手ならそこそこ戦えるはずだが、水を操る、などという影繰りならではの変化球戦士相手では常の力を発揮できない…。


真子は擬態男相手に睨み合っており、福は透明人間相手に大汗を流している。

良治は遠くにいるという敵に全神経を集中させていて、ユリという金髪少年は地底を動いている、という烏賊男と戦いに入っていた。


俺がやらなきゃ…!


ユリコは何とか動こうとするが、足に激痛が走り、呻いた。


「無理です!」


真子が、擬態男に顔を向けながら話した。


「この男を倒してから、僕が行きます!」





カカカ、と大柄な擬態男が笑った。


「言うじゃないか、小娘が!

どうやって俺を殺す?」


真子は、しかし冷静な瞳で男を見ていた。


「あなたの能力には不審があります。

例えば…」


真子は影の手を数メートル伸ばして、コンクリート内の鉄筋を30センチに切って、男に投げつけた。


男の体にホイールキャップが現れ、カン、とそれを弾く。


「そのホイールキャップです。

現実には、車のホイールキャップは軽量化のためにアルミなどで作られるはず。

つまり現実のホイールキャップであれば、鉄筋で作った槍は弾けない筈なんです…」


男は、ふふ、と笑い、


「なるほど、それが不審か?」


「元々擬態していた事なども考えると、あなたの能力は多分、鉄を操る力のはずです。

おそらく地面にも含まれている砂鉄を、瞬時に望む形に作り替えているのだと思います。

でも、不審はそこじゃない…」


真子は言った。


「影はイメージの世界だから、別に砂鉄が瞬時に鋼鉄になっても、そこは見逃せると思います。

ただ、不審は、なぜ現れた鋼鉄が、一瞬で消えるのか、って事なんです。

無尽蔵に鉄が作れるのならば、戦いに有利なだけではなく、おこずかいだって稼げるはずです。

鉄は鉄鋼会社が存在するほど高価に売買されている。

むろん金銀という程ではないが、好きに作れるのならば、それだけでも相当の利益は出せるはずです。

賞金首の賞金は5千万。

確かに馬鹿にならないお金ですが、命を張って戦ってまで獲得するより、地面から鋼鉄を作っていた方がなんぼか安全で有益なはずです。

そこが不審だ。

だから、あなたは鋼鉄を作れない、という方が自然、と考えます」


ほほぅ、と男は唸った。


「あなたは手持ちの鋼鉄を砂鉄に似た形状に保持して、それを大事に大事に使っている。

そして、その事実を隠すために、わざとホイールキャップにしてみたり、またカマイタチのように、さも何もない場所で人体を切断できるかのように見せているんだ」


「面白い意見だ。

だったら、どう俺を倒す、と言うのかな?」


真子は、なんとか影の手だけで男を倒そうと思っていたが、もう仕方がなかった。

勇気では、あの水使いには勝てない。

それに…。


あの水使いと烏賊男がいる、という事は、つまり一緒にツルんでいるこの男もまたAの一味という事だった。


ならば、本当の僕の敵だ!

僕が、人を殺すのを躊躇ってたりしたら、小学生や女の子が命を落としてしまう。


真子は、男に向かって、歩きだした。


「馬鹿な女だ!」


男はカマイタチを繰り出すが、真子は自分の体の周囲を透過していた。


「残念ながら、僕は傷を負っても自分で治す事が出来るんです。

僕には、カマイタチは効かない」


男は、明らかに狼狽えた。


カマイタチ男に、傷を瞬時に治療しているのではない、と気が付かれる前に男を殺す必要があった。


誠は、影の手で新たに作った鉄筋を投げた。


男はホイールキャップを造り上げた。


が、真子は透過能力がある。


ドスン、と鉄筋の槍は、男の左目の中央に突き刺さり、脳髄を破壊した。


擬態男は、即死し、背後の赤いカローラの天井に倒れ、突き抜けた鉄骨がカローラに刺さった。

鮮やかな赤い塗装を、鮮血が新たな赤に染め変えていった。


真子は、そのまま水使いのところまで飛ぼうと思ったが、颯太が変な事を囁いた。


「なーお前、それを使ったら、もしかして骨折も直せるんじゃね?」


え?


「つまり透過で物が切れるのなら、逆にくっつけることも出来そうな気がしない?」


真子は、近くのコンクリートから鉄骨を抜き、それを見えている鉄骨に重ねて、透過で一つに固着できるか、試してみた。


溶接したように固着した。


真子は、慌ててユリコの足に走り、足の骨を透過した。







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