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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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93 5人の敵

ユリには感知能力は無い。

と、いうか虫そのものがユリの感知能力なのだ。


虫の歩く場所をユリも見る事が出来るし、虫には人間同様の感覚器が備わっているので、匂いも音も、味さえ感じ取る事が出来た。


だがユリの課題は昔も今も、常に力のコントロールだ。


マッドドクターも、コントロールさえできれば最強の12人の中に入れるほどの影能力なのだぞ、と常にユリに語っていた。


だが…。


ユリは今まで、それが全くできなかった。

全くの落ちこぼれであり、しかも…。

ユリが暴走するたびに死者が出た。

虫が1匹付くぐらいなら動けなくなるだけだが、2匹3匹付いていくと心停止まで進んでしまう。

暴走したユリは、何万もの虫を輩出する。

そのため、ユリは意図ではなく既に100人を軽く超える人間を殺していた。


影繰りを殺せば強くなるという。

そういう話は、ユリの耳にも入っていた。

だが、ユリのようなのは殺したうちに入らないのか、ユリは全く伸びなかった。


今、ユリは3匹の虫を出した。


2匹のコントロールは、励ましてくれる良治やバタフライのおかげもあり、自信がついてきている。

だが、3匹目は、ちょっと怖い…。


だから、仲間のユリコさんや勇気君からは離れるように広げた。


少しでも、仲間の役に立ちたい。

それだけをユリは思っていた。


いくら練習で出来ても、実戦で失敗したら駄目なのだ。

ユリは唇を嚙みしめる。


目の前で、福君は透明人間を感知しようと、眼を瞑り大量の汗を流していた。


真子さんも、擬態男と向き合い、動けずにいる。

良治も遠距離にいる敵を、鋭い目で見張っていた。


だが、たぶん後二人、殺人鬼はいるはずだった。

そして、怪我人と子供であるユリたちを、そういう奴らが見逃すだろうか…。


虫の歩みは遅い。

大量に発生させれば、虫は同じ虫の上を滑って進めるので、急速な移動も可能なのだが、ただ歩かせるだけでは虫自体が小さい事もあり、非常に歩みは鈍いのだ。


ユリは、ユリコの座ったバイクの横に立っている。

背後は土と土に埋まった車の壁で、左右に道が続いていた。


背後はおよそ敵がいるような場所ではなかったが、真子さんが擬態男が隠れているのを発見した。


その擬態男は、今はユリたちからは離れている。

真子さんが、立ち位置をユリたちを庇うように動いてくれたので、擬態男は、僅かだがユリたちから離れたのだ。


虫は、今のところクロコダイルマンのいる倒壊したビルの山の裾に向かって歩いていた。

仲良く並んでいても仕方ないので、1メートル程離れて、横に広がって進んでいた。


揺れてる…!


不意にユリは気が付いた。


3匹の虫の内、真ん中の1匹が微かな揺れを感知した。


1メートル間隔の虫の真ん中だけが感じる揺れ?


ユリは戸惑うが、揺れはすぐに消えてしまった。


なんだ…。


透明人間はそこにはいないはずだし、揺れは極めて局所的だ…。


地上に何も見えず、透明人間でもないと言うのなら…。


地下なのか?


ユリは足元を見た。


瞬間、ユリのスニーカーとスニーカーの間に、白いものが現れ、ユリの足を掴んだ。


地下を進む影繰りか!


ユリは、ずっ、と土の中に引き摺り込まれたが。


咄嗟、虫を手元に戻らせた。


虫は、歩むのは遅いが、影なので、戻るのは一瞬で戻せる。


そして、数メートル以内ならば、任意の場所、例えば構えた良治のナイフの上にでも、出現させることが出来た。


ユリの足を、敵は離した。


虫を2匹、敵に貼り付かせた。


ユリは腰まで地面に埋まっていたが、勇気に助けてもらって地上に戻れた。


誠の力によく似た敵だ。


しかも、どうも自由に土の中を泳ぐことができるらしい。


「ユリさん、それは多分、地下を自在に泳ぐ巨大な人間イカです」


真子がユリに話した。

真子はどうも、前にこの敵と戦ったことがあるらしい。


ええっ、と勇気は驚いて、


「地下なんて、攻撃できないぜ!」


と慌てふためくが、ユリは、


「地下か。

地下なら、何も怖れることは無い…」


薄く笑った。


ユリは自分の周辺数メートルなら、どこでも任意に虫を出せるし、もっと多く虫を出すことも可能だ。

ただ、コントロールできず、敵味方関係なく襲い掛かってしまうから困っていたのだ。


だが地下ならば、そんな事を気にする必要はない。

そこには敵しかいないのだから。


ユリは素早く、地下のあらゆるところに虫を出現させた。




と、不意にクロコダイルマンが、ゲフッ、と叫んだ。


見ると、クロコダイルマンの顔の部分数十センチが、楕円形の水に覆われてしまっていた。


「あ、おじさん!」


勇気が叫ぶ!


勇気は、ちら、とユリコを見た。


ユリコは、


「何、気にしてるんだ!

人が殺されそうになってるんだぞ!

行って助けてこい、勇気!」


と叫んだ。


うん!


返答し、勇気はヒーローコスチュームのまま、想像を絶する加速で走った。


影なので、あくまでグレーの濃度の問題ではあるが、勇気ことレッドアローは、スピードが売りのヒーローなのだ。

ビルの残骸を、丁度いい足場のように跳ね飛んで、すぐにクロコダイルマンのいる場所に着いた。

ハイジャンプでおよそ10メートルを浮かび、周囲を見ると、傍の岩陰に暗褐色のレインコートを着て、ゴーグルで目を覆った、明らかに妖しい男が蹲っていた。






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