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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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男の能力を知るのには、戦うのが一番だ。

たぶん相手は隠すことなく自分の能力を使ってくるだろうし、運が良ければ見ることもできるかもしれない。

だが、それが一撃必殺の影ならば、真子はそれで命を終えることになるかもしれなかった。

とはいえ、睨み合っていても仕方が無いのだが…。


この男の、ニヤニヤ笑いながら、ただ待っている、という態度は気にかかる。

殺人鬼であることは認めたうえで、男はただ笑って立っているのだ。


むろん、真子が小柄な少女である、と見たうえの態度なのは理解できる。

だが、向こうもこの暗黒の中、男の擬態を感知した真子がそれなりの影繰りなのは理解しているはずだ。

が、男は平然と、見事に発達した胸筋を見せびらかすように腕を腰に当てて笑っていた。


透過は使えない…。


真子は思ったが…。


「ほら、さっき金髪の餓鬼のギプスを作っただろ?

あーゆー風に使えば、鉄筋を槍にだってできるんじゃないか?」


颯太に言われて、なるほど、と真子は気づいた。

鉄筋なら、泥と共に、至る所に落ちている。


真子は影の手を伸ばして、手近な鉄筋から、先端を斜めにカットした1メートルほどの槍を作り出し、ピュン、と男に投げた。


ガン、と男の側頭部に、不意に車のホイールキャップが現れ、真子の槍を弾いた。


「なかなか面白い能力だな。

だが、生憎、俺との相性は最悪だ。

俺は、どんな攻撃も防げるうえ…」


真子は、颯太に引っ張られて、横に飛んだ。


「上手く避けたな!」


何だ…?

何も見えなかった…?


「あれは、たぶんカマイタチ、みたいな能力だぜ…」


颯太が呟く。


そうか…。

あれが、鋭い刃物、の正体だったのだ。


相手がカマイタチを自在に使う影繰りなら、確かに笑って待っていればよい。

任意のタイミングで、好きに相手を切り刻めるのだから、戦闘ポーズなどをする必要も無かったのだ。


真子はしかし、微かな疑りを持った。


二つの影を持つ影繰りは少ないのだ。


自分が2つの影を持っている上で言っても、あまり見たことは無い。

アクトレス教官は、色々に変身するが、元々の影である黒犬からの派生であって、全く別物ではない、という事だった。


男の、防御の、任意にホイールキャップ? を出す力と、カマイタチは別の力なのか、それとも根は同じ能力の攻防の姿なのだろうか…。




一方、福は、未だクラッシュした車の残骸の前で汗を流して立っていた。


福の頭には、いつでも茫洋とした海の底が、水のレンズに時折歪みながら見え続けている。


福の感知は、つまりここに敵の姿を捉える、というものだったが、距離はそう問題にはならない。

なぜなら、海は沖に出るほど深くなり、すぐに何百メートルかに深まっていくのだから。


福の、この海の底に映るものは、姿ではない。

もっと、あいまいな生命の鼓動のような物である。


福は、闇に目を凝らす。


いるのは、判っている。


奴は、どこか近くで、じっと福を狙っていた。


福の感知は、敵が逃げた場合は、それとすぐに判るのだ。

その感知能力は何処までも漁師に適したもので、魚が餌に興味を失い、場所を離れたならばそれと判る。

漁では、逃げた魚をいつまでも待っていても仕方が無いからだ。


その場合は、ある程度なら、どっちに逃げたのかも追える。

また、別の魚を探すことも出来た。

諦める物は諦め、追うものは追わなければ漁師は務まらないからだ。


方位は、たぶん北だ。


その方位、だいたい百メートル以内に敵はいる。


たぶん、さっき福が敵の攻撃を交わしながら毒を放ったのは、敵も気が付いている。

おそらく致命傷ではなくとも傷ついているか、皮膚に炎症を起こしたか、その程度には認識しているはずだ。


福は、今、海毛虫の毒を使っていた。

触れただけでも酷い炎症を起こす厄介な毒だ。

致死量を体内に入れられれば、むろん殺せるが、それより激しい痛みを覚えれば、戦闘不能に追いやれる。


海毛虫は、海底などにいる不気味で厄介な毒虫であり、全身毒針に覆われたゴカイと思えばいい。

網から外すのは本当に苦労する奴だ。

ただし、その毒を利用するには、頼れる毒ではあった。


だが、まだ敵は戦意を持っている。

痛みを覚えたがゆえに、復讐心を持ったのかもしれない…。


また、透明人間であるという優位性が通用しない敵は潰しておきたいのかもしれなかった。


どっちにしろ…。


福もまた、闘志を燃やしている。


男は、舐められたら終わりだぞ…。


兄の言葉が、福を動かしているのだ。

福は、その兄の言葉に従って、兄のようなヤンキースタイルに身を染めた中学生だった。





良治は、数百メートル離れた場所からこちらを伺う影繰りに注視していた。

遠距離攻撃だとしたら、怪力で引き千切る、という事はなさそうなので、鋭い刃か、幾何学模様か、苦悶に歪む、か原因不明、という事になる。


「嬢ちゃん、そいつの力は判ったかい?」


良治が聞く。


「はい。

鋭い刃、現実にはカマイタチのようです」


真子が教えると、擬態男は、ほぅ、と感心した。


「よく気が付いたな。

何か特殊な感知能力を持っているようだな」


真子は返答はしなかったが、良治は3つに絞られた攻撃を考えていた。


この遠距離の敵が、何らかの攻撃をするとしたら、苦悶なのか幾何学模様なのか原因不明なのか、という事だ。


良治もこの世の全ての影を知っている訳ではなかったが、アメリカで影繰りしてた兄貴バタフライの話では、遠距離攻撃をする影繰りは、たいてい良治のように単純にナイフを飛ばす、などのシンプルな技であることが多い、らしい。


そう考えると、幾何学模様と言うのがどういう物だか、実は良治は見ていなかったのだが、目ざとい少女たちがそう言い交わしていたものは、遠距離攻撃としては似つかわしくないのかもしれない。


苦痛か無傷って事か。

だが、どちらの能力にせよ、それだけでは何も判らないに等しかった。








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