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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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91擬態男

小柄な金髪ヤンキー少年、福が、目を瞑り集中して周囲を探っている。


福は兄と共に千葉で漁師をしており、そのためか感知能力は、概ね水の中に獲物がいるかどうかを察する、という力だ。

具体的な動きまでは判らないが、魚がそこにいるのが判れば、釣り人であれば色々と工夫をして魚を獲るように出来るのだろう。


確かに透明人間対策として利用できそうな能力ではあったが、やや漠然とし過ぎているきらいもあった。

相手は、接近戦でなら敵の位置が見えなくとも判るクロコダイルマンと、互角にやり合っていた透明人間なのだ。


おそらく、この敵は今、真子たちが問題としている五人の殺人鬼、鋭い刃物か、強力な腕力で引き裂く、か、全く外傷がない、か、幾何学的な穴を体に開けるか、苦しみ悶える、かのどれかを引き起こす相手に違いなかった。


この穴自体がいつ崩れてもおかしくない上に、生きているのは多分、真子が治療した数名以外は全て影繰りのはずだ。

そういう相手に、死体の山を築いている強敵だった。

まず、こんな危険極まりない場所で人を襲い続ける目的が不明だが、真子は5人は何らかの同じ意図を持った5人組なのではないか、と思った。


もしかしたら、協力し合っているのかもしれない。

そうであれば、あの異様な殺戮数も理解できる。


真子は改めて周囲を見回した。


仲間がいるかもしれない…。


そう思うと、現在の状況は思う以上にひっ迫しているのかもしれなかった。

福が戦えば済む、というものではない可能性があるのだ。


「みんな、注意して。

透明人間だけが敵じゃ無いかもしれないよ…」


ち、とユリコが舌を鳴らした。


「そういう事かよ。

敵は5人組って事か!」


「あの数の影繰りを無傷で殺している、と考えるとそれが自然だと思うんだ。

今は、とにかくそれぞれの感知能力で周りを感知して、警戒をしよう」


真子も周囲を探ったが、真子の感知範囲に、物陰に隠れた敵、等はいなさそうだった。


「オレは匂いを感じる感知能力なんだよ。

こういう場所だと、色々匂いがあり過ぎて不利なんだ」


ユリコは唸った。

確かに、事故現場でもあり、それでなくとも崩壊した土砂や崩れた建築物の埃臭い臭いが立ち込めており、匂いで精度の高い感知は無理かもしれなかった。


「俺のスーパーレーダーは半径百メートルの敵の姿が判るんだ。

今、見えているのはクロ…、ワニの人だけだよ」


と勇気。


「勇気君。

透明人間の姿は見たの?」


「何度かは。

ただ、変なんだ。

まるでバッタみたいに飛び跳ねているんだよ。

それが、なんかときどき三つに分かれるみたいに見えるんだ…」


3つに分かれる?

分身能力的なものだろうか?

だが、透明になれるのに分身する意味もあまり解らないが…。


「何かいるぜ!」


良治が囁いた。


「あっちの方角だ。

感じでは、長距離攻撃でこちを狙っているように思える」


クロコダイルマンの立っているビルの残骸よりも奥、数百メートル開けた空間の先に誰かがこちらを狙っているらしい。

しかし、それだけ距離がある場合、必ずしも敵とは限らないかもしれない。

見ているだけ、というのも意味不明ではあるが、戦闘がある事に気が付き、遠くから探っている、とも考えられた。


福は、目を瞑って立ち続けている。


その額に微かに汗が浮かぶのは、緊張もあったが、地下の世界は風も吹かないために外と比べると温かい事にもよる。

おそらく、既に桜が咲くぐらいの気候に、地下はなっているのではないか?


真子も透視で周囲を探った。

真子たちの背後は車の残骸が壁を作り、その奥は土だと思っていたが、一応視線を走らせる。

と…。


車の残骸が壁になり、崩れた土に鼻を埋めたすぐ横に、何やら金属部品のような物があった。

それが真子の透視では…。


人間の内臓を持っていた。


え、と凝視すると、バレたと勘づいたのか、金属部品が動き出した。


体に金属部品を貼り付けた、大柄な男だった。


「貴様、よく俺の擬態に気が付いたな」


真子は立ち上がった。


「もしかして、あなたが人を殺しまくっているんですか?」


擬態男は、薄く笑い。


「そうだが?

それがどうかしたかね?

どのみち、こんなところにブラブラしているのは、ろくでもない奴らばかりだ。

殺したところで、どう、という事もあるまい?」


敵が5人だとすれば真子たちはかなり不利になる。

ユリコとユリは怪我をしており、戦えるのは勇気と良治、福と真子ぐらいなのだ。


ユリは虫を出すのが能力なので、幾分は戦えるともいえるのだが、もしユリが本気で虫を出してしまったら、この穴の全ては死で埋め尽くされてしまう。

前回のAの東京襲撃では、ユリの虫が、最終的な東京破壊の手段だった。


だから、とにかくこの擬態男は真子が倒さねばならなかった。

だが、透過を封じられている以上、真子は影の手を主力にせざるを得ない。


相手は、相当の実力者であることは間違いなかった。


「どうしたね?

戦ってきたらいいだろう?」


擬態男が薄気味悪く笑う。

真子は早急に、男の力が、鋭利な刃物なのか、怪力なのか、死因不明なのか、幾何学模様なのか、苦悶に歪むのか、を察知する必要があった。





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