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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
92/220

90意図

トカゲマンが鋭く腕を突き出すが、どうもそれは空振りだったようだ。

むっ、とトカゲマンは唸り、周囲を見回し、下で見上げている真子たちに気が付いた。


「おい、そっちに行くかもしれねーから、気をつけろよ!」


気安げにトカゲマンは声をかけてきた。


「何がだ?」


勇気が問う。


「透明人間だよ!

どうも、他人と見れば襲って歩いているらしいな」


確かに、トカゲマンの姿は確認できたが、相手は全く見えなかった。


「福君、判る?」


福はもとより、必死に何かを察知しようとしていた。


「何かいるのは判る…。

待って…」


福は目を瞑り、意識を集中していた。


「あんたは、どうやって察知してたんだ?」


福の背中の、ユリコが聞いた。


「俺は肉弾戦中なら、敵の姿が背中ででも判る。

微弱な電気って奴でな、俺は知る事が出来るんだ。

まぁ、せいぜい半径3メートルってところだがな」


トカゲマンはトカゲの顔で、笑った。


真子は、考えていた。

今、この穴の中には最低5人の殺人者がいて、死体を量産しているらしい…。

五人の能力はそれぞれ、鋭利な刃物か、強力な力で引き千切るか、死因不明か、幾何学的な穴を体にあけるか、苦しみ悶える、かの5つだ。


透明人間がいてそれを起こした、のも1つの可能性ではあったが、もしかすると…。


トカゲマンも、力は強そうだったし、爪も鋭そうだった。

独演で戦うふりも、出来ない事ではない。

トカゲマン自身が、鋭利な刃物、やパワーで引き千切る、を行える可能性もあった。


が、もっと厄介なのは本当に透明人間がいた場合だ。

真子には、全く感知できない敵、という事になる。


「いたっ!」


福は叫び、右横を見た。


その時、地面のコンクリート片が、パキリと割れた。


「クソ、毒は当たらなかった!」


福が悔しがる。


「どんな奴だった?」


ユリコが聞くが、福は、


「俺は姿かたち、みたいなのは判らないんだよ。

ただ、あまり体は大きくない。

それは判った」


福が感知出来たなら、透明人間で確定だった。

真子には最悪の敵だ。

真子の能力では、全く存在すら理解できない…。


「へっへー、お困りのようだね」


颯太が口を挟んできた。


真子は、頭の中で話した。


「もしかして、颯太は判るのか?」


「つまり敵は、攻殻機動隊的な方法で透明になっているのさ!」


「なんだ、それ?」


映画はある程度見ていても、アニメは全く無知だった。


「まー体の表面に、カメレオン的に外の風景を描き出し、しかも動かすんだな」


なるほど…。

そう言われれば、真子にも、ふんわりとは理解できた。


「でも、それだと、横から見たら丸判りなんじゃないのか?」


「自分の能力を知っていれば、上手く立ち回れるって事さ」


「あの、トカゲマンさん!」


真子は叫んだ。


「俺はワニ人間だよ!

せめてクロコダイルマンと呼んでくれ!」


そう言われてみれば、顎の感じがトカゲより頑強そうだった。


「もし、僕の思う透明ならば、そこからならある程度位置が特定できると思うんです。

ご協力願いますか?」


ほう、とクロコダイルマンは唸り、


「良い考えだとは思うが、接近戦でそれじゃ、とても敵わないぜ」


確かに言われて反応する、その一瞬で透明人間は既に殺戮を終えているだろう。


「待って!

俺なら、たぶん奴と戦える!」


福が宣言した。


確かにあまり明瞭にでは無いにしろ透明人間を感知できるのは、この場では福だけだ。


「そうだな。

よし、じゃああたしを下ろして、戦えよ」


ユリコが言い、福は頷いてユリコを倒れたバイクの上に置いた。


福は、目を瞑って透明人間を感知しようと、集中した。


真子たちは、ユリコの周りに集まる。

敵が福とだけ戦おうと思うかどうかは、真子たちには判らないからだ。


福は、数台の車が派手にクラッシュしたらしい瓦礫を背景に、目を瞑って立っていた。


同時に真子も、何とか敵を感知できないのか、と頭を絞っていた。


「さっき、コンクリートが割れたよね」


と、真子は思い至った。

そういう事で、位置を特定できる可能性がある。


「ま、向こうも同じ失敗はしそうにないけどな」


ユリコは言うが、しかし対策にはなるはずだ。

真子は自分たちの周囲に、踏めば音がしそうなものを並べた。


「だけど、なんで人殺しをしてるんだ?

早く外に出ようとは思わないのかな?」


元気は首を傾げた。


「あれじゃねーか。

思いっきり影能力を使ってみたい、的な奴」


ユリコが推測する。


「一人ぐらいはいるかもしれないけど、5人も同時に現れるかな?

しかもその5人が、筋金入りに強いって凄い偶然だよ」


真子は疑問を募らせていた。

疑惑、と言ってもいいかもしれない。

何らかの意図があり、示し合わせて殺害を行っている五人組ではないか、という疑惑だ。





ピッピの背中に乗って、竜吉は新宿まで東京の空を旅してきた。

今は新宿駅ビルの屋上から、穴を見ていた。


「どうするの竜吉?

やつら、もう1時間以上も穴の中でしょう?」


「…ああ…」


竜吉のノートPCで、穴の中の状況もある程度は判る。

だが、どうにも解せない動きが幾つも見られていた。


1つは、大量の死体を、誰かが運んでいる、という事。

そしてもう一つは、5人の殺人者が現れ、無作為に人を襲っているらしい、という事だ。


そして小田切誠の消息が消えたのも新宿で、あの穴が発生したのと同時だった。


SNSで無作為に呟き、状況をコントロールしようと思った竜吉だったが、どうも今の状況は、他の誰かがコントロールしているように感じられた。


「やはり、穴に飛び込むしかないのか…」


竜吉が呟いた時、


「いやー、やっぱりここにいましたねぇ」


五人の男が、ピッピたちの前に現れた。

キャスケット帽をかぶった小柄な少年に率いられた男たちだった。


「僕は伸介。

1度、小田切誠たちと出会い、コテンパンにやられたんですよ。

ただね…」


少年はニヤリ、と笑うと、彼の手には一枚のカードがあった。


「魔術師のカード…、つまり誰かが糸を引いているのを理解した。

だから、君たちに合流しようと思ったんですよ」


キャスケット帽の少年は、薄く、笑った。

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