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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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良治の腕から、危険な血がユリの腕に流れていく。

真子は早めに輸血を終えた。


ユリの顔色は、白人だからか、とても分かりやすかった。

蒼白だった顔が、血色が良くなったのが、すぐに判った。


ただし、これで全ての治療が終わったわけではない。

ユリの腕も、骨が折れていたからだ。


だが、さっきのユリコの場合とは話が違った。

呑気に勇気や福に添え木などを探してもらうには、危険すぎる状況だ。

影繰りを頭から喰らう怪物が、何体も見つかっているのだ。


どうするか…。


近場で添え木と三角巾を入手したい…。


目の前にあるのは、ポルシェと潰れた二台の車だった。

一台はペシャンコに潰れている日本製の乗用車だった。

真子は車種など覚えるつもりもないので、ただの日本車としか判らなかった。

トヨタとかニッサンとか、そんな感じだ。


上にあるのは、トラックだった。

これはかなり原型をとどめている。

下になってしまった乗用車が、ペシャンコに、トラックの重さでなってしまったものらしい。


ユリは、ちょうど二台の車に挟まれてしまったのだが、変なところに挟まれず、二台の間に腕が入ったため、真子も簡単に治療ができた。


だが骨折は外傷の治療だけでは終わらない。

骨が再生するまでの安静が重要だった。


そのためには腕の固定が必須なのだが、車と瓦礫以外、ここには無かった。


車か…。


車のボディは、おそらく軽量金属だろう、と真子は思った。

トラックは鋼鉄のように見える。


車のボディぐらいの重さならば、とりあえずの添え木にはちょうど良さそうだったが、真子の影の手は、力はあるが、破壊には向かない。

ちょっとどうにかなるような物では無さそうだった。


本当にそうか…?


真子は真剣に考えた。

影の力は、イマジネーションで変わっていく力のはずだ。


真子が思ったのは、腕の添え木にしたい部分を残し、周囲を透過できないか、というアイデアだ。

型抜きのように周りを透過できれば、ちょうどいい添え木にも、もしかしたらギプスにも、車の軽量金属はなるのではないか?


僕は小田真子であり、小田切誠とは違う発想ができる…!


そう思ってみた。


ユリの腕に合わせて、曲線を抜き出す。


周り部分を透過し、そこを影の腕で抜き取るのだ。


比較的形の残っていた車の前輪の上部分で、真子は楕円をイメージし、そして影の手でめくっていく。


それは、夏の日の日焼けした皮膚のように、ペロリと剥がれた。


ユリの腕に当てて、透過の筋をつけるように曲げていく。


予想の通り、丁度ユリの腕にハマるように曲線が作れた。


後は三角巾か…。


ポルシェの座席は、どうもレザーのようだった。


真子は一瞬、良治にレザーを切ってもらおうか、と思うが、それだと見ず知らずの女子高生が良治の力を知っている事になるな、と思い、躊躇った。


だが車のボディが切断できて、レザーが切れない訳もなかった。

素早く、影の手を透過して黒いレザーでユリの腕を吊った。


「おお、お前、凄い腕だな!」


良治は感嘆している。

ユリも、


「ありがとう、助かったよ」


と照れたように語った。

どうも、美鳥のメークの腕は相当なものであるらしい。


「さ、早く、あの地下道まで登ってしまいましょう。

ここはおそらく、もうすぐ崩れる…」


ユリコや元気も天井を見て、気が付いたようにおぞけた。


「みんな、大丈夫かな?」


勇気は、不安そうに呟いた。


「とにかく今は、自分たちを守るしかありません。

仲間の事は、信じるより仕方がありません」


真子は皆に語った。


「そうだな…」


とユリコも同意する。


「小百合やハマユは大丈夫だよ。

それに樹怜悧やれいな、愛理、義郎もきっと無事だ。

信じて進もう」


と勇気を励ました。


福はユリコを背負い、


「俺はもちろん、兄貴を信じているべ。

あの兄貴が、こんなところで死ぬわけがない。

地の底だなんて、おれら兄弟の死に場所は海だけさ」


「あぁ、今は力を合わせような」


良治が、普通の人のような事を話していた。


彼はユリを支えて、立ち上がらせた。


どうしてユリが無事だったのか、何故良治たちと一緒なのかは判らなかったが、ユリは良治に良い影響を与えているようだった。

11月に見たときは、マズい薬でも決めてるような目をしていたが、今は普通の大人のようにふるまっている。


「そうです。

とにかく力を合わせないと、この難局はしのげません。

僕もSNSで賞金の事を知ったんです。

絶対、地上に帰りましょう!」


みな、目的は同じだった。

力強く頷き、瓦礫を登り始めた。


良治に連れられて、だいぶ横道にそれていた。

死んだ蛇のように捻じれているのは、たぶん新宿通りの道路そのものだろう。

位置的には、伊勢丹付近と思われた。

伊勢丹は明治通りに隣接していたから、穴の、最後尾に近い。

新宿三丁目の駅が近いはずだ。


地下道好きの誠にとっては、この辺の、年季の入った地下街も大好きな場所の一つだ。

古い地下街ランキングで言うなら、浅草、銀座の次ぐらいに好きかもしれない。

なにより、高円寺から近いのが良い。


丸の内線の新宿三丁目は古びた改札で、誠には痺れる昭和を感じさせる地下の趣があった。

確か副都心線も通っていたはずで、あれはかなり深い場所に作られた駅だったはずなので、鉄道ファンではない誠は駅に降りたことはないが、おそらく現在の深さであれば最も近い地下駅であるはずだった。


ルートは、どうだったかな?

地下鉄駅も誠の守備範囲なのだが、新宿はほかに面白い駅も多すぎて、あまりこっちに来ていいなかった。


「あ、副都心線の看板だ!」


それは土中に斜めになって突き刺さっていた。


「もし、副都心線のホームが無事なら、階段を使って上がれるかもしれません。

ちょっと見て見ましょう」


誠を先頭に、6人に増えた影繰りたちは、泥とコンクリ片だらけの足場を、駅に向かって歩いた。

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