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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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81新しい敵

毒マスターの福少年と戦隊ヒーローと共に、JKに扮装した誠が新宿の地下、およそ50メートルに作られた巨大な空洞の中を歩いていく。


巨大洞窟の上空は白昼の空が広がっていたが、陥没した左右のビルが崩れてきたため普通人には視界がとても悪い。

そんな中を影繰りだけが自在に歩いていた。


誠たちは崩れ落ちたビルの側壁をよじ登り、傾いた岩盤の上に立った。


「こっちだ!」


不幸か幸いか、道行きに治療できそうな生存者はいなかった。

この付近の天井は、おそらくAが無数の支柱を爆破して大規模な落盤を仕掛けた時、なんとか崩壊を免れたものらしく、二十メートル近いアーチを描いて上の地面を支え続けていた。

が、アーチの天井部分は支柱の崩壊で崩れており、上にあった地下道、地下鉄線の駅、上のビルなどが、まるでミルフィーユのように崩れ落ちて潰れているのが、岩盤から見下ろせた。

誠たちは、その潰れたミルフィーユの、僅かな隙間からここまで登ってきたことになる。


こう見ると、さすがに影繰りでも不慮の事故が起これば、逃れられなくても無理はない。

誠も、仲間の無事が心配だった。

が、今は助けなければならない人がいた。


傾いた岩盤を坂道のように登っていくと、激しく落盤が起きた場所に出た。

天井の、落盤部分が大きく穴になって、天井には、どうやらビルの地下の天井部が、鮮やかなセールののぼりと共に残っていた。


その上のビルは、何とか上の地盤に残っているようだが、基礎も何もかもが失われているのでは、いつまでも持つとは思えなかった。


「ここなんだ!」


その、ダモクレオスの剣の真下のような場所に、大岩のくぼみを見つけ、一人の少女が蹲っていた。

金髪に染めた髪が、ぼさぼさになって顔にかかっている。


「ユリコねーちゃん、傷を治せる人を連れてきたぜ!」


これは…。


誠は唸った。


足の骨が、脛から飛び出してしまっていた。

出血がひどい。


失った血は、誠に直すことは出来ない。

だが、ヒーロー君には助けられていたし、何とかしてやりたい…。


「君、彼女の血液型を知っている?」


早速、影の手で、足を持ち上げ、治療を始める。


「僕は治療は出来るけど、麻酔をする能力は無いからね。

痛みは、我慢して」


呼びかけるが、少女は朦朧としているようだ。


おそらく出血多量だろう。


「お、俺は今日、知り合ったところなんだよ。

小百合姉ちゃんかハマユ姉ちゃんなら知ってるだろうけど…」


「…O型だ…」


金髪の少女が、ボソり、と呟いた。


「O型か…」


A型なら誠の血を輸血でき、それなら何とか影で血管を作る事ぐらいは出来そうだったのだが、無理そうだ。


「俺、O型だよ!」


福少年が名乗り出た。


誠は、横目で金髪の少年を見て、


「輸血していいかい。

と、言ってもこの場で僕が血管を繋ぐんだ。

とてつもなく危険だし、成功するとは限らない。

もしかしたら、君の命も危うい」


「そんなん、決まってるべ」


福少年は笑った。


誠は頷く。


輸血するなら、早い方が良かった。


ユリコの静脈から福少年の動脈血をダイレクトに影の血管でつなぐ。


輸血と言うのは、確か400ミリリットルとか600ミリリットル、輸血側の負担も考えるとそのぐらいの量のはずだ。

まぁ、ペットボトル一本分、と思えばいいか…。


誠は考えながら、骨を接ぎ、傷を塞ぐ。

細胞レベルで傷を修復し、毛細管も再生出来たところに、福少年からの、動脈血をユリコに注ぎ込んだ。


動脈血なので、ペットボトル1本分は一瞬だ。


すぐに輸血は終わる。


この程度で、大丈夫なのだろうか?


そこまでの事は、誠の勉強では判らない。

基礎的な応急手当や医学の初歩を習っているだけなのだ。


「傷は塞いだけど、骨折はすぐには治らない。

添木と、縛る紐、出来れば布が必要だ」


「俺、探してくるよ!」


福少年は輸血したばかりで、誠はまだ細かい治療を続けていた。

ヒーロー少年が走り出した。


「いやぁ、面白い絵だねぇ」


ユリコを安置した岩陰の上に、学生服の少年が立っていた。

赤いスニーカーを履いているところが、中学生らしく見えた。


「何が面白い?」


誠は治療をしながら、聞いた。


「可愛い女の子が、二人も動けないでいるなんて、面白くないと思うの?」


よほど美鳥さんの化粧術は凄いのだろうか?


と、さすがの誠も考え始めていた。

自分の顔が、女子の服を着ただけでこうもモテる筈は無いと思う。

これほどのモテ方ならば、平素も多少は女子にチヤホヤされても良いはずだからだ。

それとも小柄なのが災いして、顔は良くても女子の対象外なのだろうか?


顔が良いなんて話、親にも聞いたことが無いけどな…。


少年は、ニヤリと笑うと、空中に浮きだした。

いや、浮いたのではなかった。


少年の背中に、黒々とした昆虫の節足が、何本も伸びており、それで本体を浮かしたのだ。

誠は、しばらく手が離せず、福少年は、立とうとするが、よろめいた。

思うより、多くの血を、福少年から抜いてしまったらしかった。


このまま、どこまで戦えるか…。


誠は、微かに汗ばんだ。





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