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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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68靖国通り

ユリはバタフライのバイクの後ろに乗り、新宿へ向かっていた。


こうしてバイクの後ろに乗るのも、日本に来てからの事だ。

風がユリの長髪を、豪快にかき回し、とっても痛快だった。


バタフライはメグロという大きな黒いバイクに乗っており、3人で移動するときにはユリはバタフライの後ろに乗る。

良治のボルトは二人乗りしにくいためだが、もうすぐ免許が取れるようになったらユリもカブに乗りたい、と思っていた。


靖国通りを丸井の前まで走り、一旦バイクを降りた。


「新宿に来ちゃ見たが、ここから小田切誠を探すとなると、エラい仕事だな」


バタフライは新宿の雑踏を見渡した。

ユリには、初めての新宿だった。

ガブキチョウがとっても面白い、とはユリも聞いている。


こうしてバイクを降りて見ても、ユリの横を楽しそうな白人の家族連れが通り過ぎていく。

金持ちの、白人だ。

ウクライナの貧民街に育ったユリには、全く関係の無い人々だった…。


だが別に、今のユリには彼等への羨望も嫉妬も無い。

毎日、普通の事が凄く楽しいからだ。

白いライスも大好きだし、箸だって上手く持てる。

日本は食料も豊富で、みんな旨い。


「よー兄ちゃんたち、ゴッついバイク乗り回してんな」


判りやすい革ジャン姿の男たちが、ふとバタフライに話しかけた。


187センチで、明らかに鍛え上げられているバタフライと、172センチで痩せ細ってはいるが、モヒカンヘアで耳をピアスだらけにした良治に、普通はなかなか正面から喧嘩を撃ってくる奴はいないのだが、まだ世間知らずなのか、向こうっ気の強そうな若者だ。


「まぁな…」


バタフライは薄く笑った。


若者は、見たところ真新しい革ジャンを着た、尖がっただけの子供だ。

体も鍛えていないのは一目で判る。

革ジャンというものは着れば着るだけ着た者の体に馴染んでいくものだが、若者の革ジャンは、店頭で吊られたままの新品だった。


「うん、スゲー身体だ」


若者は気軽げにバタフライの腕を叩いた。


ん…。


何気ない動作だったが…。


良治もユリも、気が付いた。

影の気配だ。


同時に左右から影の気配がした。


一人は、丸井の前に立っていた平凡な作業着の男からだ。

もう一人は、ガードレールに座ってスマホを弄っていた優男に見えていた。


「驚いたな…」


バタフライの腕には、黒い影の草が巻き付いていた。

どうやら蔦のようなものが、若者の触った箇所からバタフライの腕に巻き付いてどんどん広がり、今は胴体にまで広がりそうだった。


作業着の男は、若者よりも一回り年上のようで、熊のような大男だった。

良治が男に向かった。


優男と、ユリが向かい合う。


「山本、岸さん、こんな奴ら、俺だけでやれるよ」


若者はバタフライを鼻で笑いながら、声をかけた。


「吉田。

うぬぼれんじゃねぇ。

その大男を、しっかり足止めして置け」


岸さん、らしい作業着の男が、吉田と呼ばれた若造を叱りつける。


良治は、抜き打ちに小型のナイフを、岸さんの胸に真っ直ぐ飛ばした。


が。


ナイフは、岸さんの作業着の三十センチ手前で、ピタリ、と止まった。


作業着の岸さんはキキキと笑い、


「にーちゃん、その手の飛び道具は、俺には効かんのだわ」


優男の背中には、天使のような翼が生えていた。

まぁ影なので、悪魔のよう、と言うようにも見えたが…。


ユリは、習った空手の構えをする。


「坊や。

僕に近接戦闘は通用しないよ」


優男は、ウットリ笑い、黒い羽根を飛ばす。


えっ、ユリは、くるん、と45度、身体が回転してしまった。

斜めを向いたユリの首元に、優男がとどめの蹴りを撃ち込んだ。







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