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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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切断

男の叫びに対して、歯科の少年は、


「おいおい、あんまり舌を動かすと、誤って切断しちゃうよ…」


言って、キシシと笑う。


涎を垂らしそうな、嫌な笑い方だ。

明らかに、拷問を心から楽しんでいるようだった。


「兄さん、あれ酷いよ…」


カブトが囁くが、レディは。


「俺たちの能力じゃあ、あれは救えない…」


と呟いた。

カブトもレディも、広範囲の攻撃は得意だが、男に傷をつけずに、周りの少年たちだけを攻撃することは出来ないのだ。


「君達、質の悪い悪戯はやめなさい…」


声を上げたのは、サラリーマンらしい服装の60近い老人だ。

どうもハンズで買い物をした帰りらしく、袋をぶら下げていた。


「止められるものなら、止めて見ろよ」


一人、腕組みして立っている背の高い少年が、意外に高い声で言う。

身長は176、7センチ、まあ高い部類だろうが、身体は細い。


老人は皺が垂れ下がった眠ったような目でジ、と少年を見ていたが、意を決して近づいていく。


だが…。


拷問場所から数メートルに近づくと、突然、バン、と電気がショートしたような音がせて、老人は弾き返され、アスファルトに転倒した。


老人は驚愕したように、目を見張る。


どうも、電気のバリアが張られていて、誰も近づけないようにしているらしい。


「なるほど。

よく出来た拷問チームね。

これなら商売ができるかもしれないわ」


美鳥は変なところに感心していた。


「しかし、これは拷問ですらありません!

ただ、いたぶっているだけじゃないですか!」


誠は激昂するが、熱くならない! と美鳥に叱られた。


「いたぶってるのよ。

むろん、それは良くないわ。

でも影繰りである以上、勝てないまでも逃げられないのなら、それは自分が悪いのよ。

この世界に、正義のヒーローなんて存在しないし、そもそも司法が通用しない世界なのよ。

自分が、既に法に守られない世界に住んでいる事を自覚しなさい!」


ぴしり、と美鳥は誠の義憤を切って捨てた。


「ヒヒヒ…、行くぜ…」


歯科の少年は、既に男に覆いかぶさり、男の歯に意味の無い穴をあけようとしていた。


ドリルの小さな金属音だけが辺りに響いている。


が…。


あ…。


と何か腑抜けた声が響くと、男の右手が、大きく上がっていた。


「ほら、手を上げてやったぞ。

ドリルを止めろ!」


右手を抑えていた少年の腕が、ゴロン、と転がった。


すっかり拷問する世界に没頭していた歯科の少年は、一瞬反応が遅れて、わぁ、と仰け反った。


が、その影のドリルは、切断され、ガシャン、と床に落ちた。


大男は、既に影を纏っていた。


姿が変わった訳ではないが、強力な近接戦闘用の影な事は誠にも判った。


「ど、どうやって!」


歯科の少年は、反転攻撃される側になって、女のように甲高い声を上げていた。


「ふん、知りたいか…」


大男は、手からゆっくりと影の刃物を出していく。


それは、日本刀のようだった。


「この剣は何でも切れる。

コンニャクでも切れるんだよ」


双子のうち、右手を抑えていた少年は肘の上から腕を切断され、悲鳴を上げている。


左手を抑えていた少年は、どこかに逃げ去っていた。


「いや…。

でも太一に触れられている限り、身体が動かせない…」


殆ど泣きそうになりながら、歯科の少年はたどたどしく反論する。


大男が顎で指し示す。


太一と呼ばれた肥満気味の少年は、既に額から血を吹きだして倒れていた。


ヒィ!


バリヤと椅子の少年も、脱兎のように逃げていく。


歯科の少年は、しかし黄色い声だ叫んだまま、立ち竦んでいた。

細身のズボンが、濡れていく。


「自分が死ぬとは思っていなかったか…」


大男は、黒い剣を少年の首に、ピタリ、と当てた。


大男は歯科の少年を睨む。

少年は、


「ご、ごめんなさい…!」


と鳴き声を上げてしゃがみこんでいた、が男は、ふと足元を見た。


誠が、切断された少年の腕の接合に入っていた。


3か月、吉岡先生のレッスンを受け、誠の接合術は見事な上達を見せていた。

1分とかからず、男に切断された腕は繋がっていた。


「何をしている…」


大男は、静かに聞いた。


「治療です。

あなたも実害は無かったんでしょう?

そのぐらいにして置いたら、どうですか?」


歯科の少年は、誠を援軍と見て、


「ごめんなさい、ごめんなさい、反省してます!」


と鳴きながら叫んでいた。


「君は、変わった奴だな」


男の顔から殺気が消えていた。


誠は太一少年にも屈み込み、


「出血はどうにもできませんが、傷は塞げそうです。

なんとか、それで手打ちに出来ませんか?」


「手打ち?

君は、彼らの仲間なのか?」


「そういう趣味はありません。

ただ、死者が出たら騒ぎが大きくなる。

僕も新宿に用がって来ているんです。

あなたは?」


誠が男を見上げると、男は爽やかに笑った。


「ああ。

ちょっとABCマートで買い物をするんだった」




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