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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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65代々木界隈

「影繰りの資質のある子供たちは、大きな社会的混乱や暴力、特に昨年末の東京で起こったような、住む街や国が崩壊するかもしれない、という大きなバイオレンスに晒されると資質が目覚めやすくなるのです。

それは、事件の顛末を知っている桜庭学園の生徒などよりは、何が起こったのかまるで判らない近郊の普通の子供たちの方が、何倍ものストレスに感じます。

誰も本当の事は言わないが、あの日何かとんでもないことが確かにあった、というような潜在意識下のストレスが引き金になり、影に目覚めてしまうのです。


この現象は、戦争など明確な脅威に対するよりも、報道管制などが敷かれた事件の場合の方が格段に高くなる統計もあります。

例えば戦争をしている国よりは、その戦争に関係して激しい影繰り同士の戦いが行われている周辺国の子供たちにニューウェーブが現れやすいのです。


それは、発現してないとはいえ影能力を潜在的に有する子供たちの、影への感知能力、と言えるのかもしれません。

今、一番注視すべきなのは、その子供たちを把握し、彼らを社会の攪乱者にしない事なのです」


井口は、しかし戸惑ってもいた。

今現在の、井口の一番の敵は、空飛ぶ影繰りと、箱使い、それに誠を襲ったという水使いと品川駅爆破グループなのだ。


そんなニューウェーブの子供なんて、どう相手をすりゃあいいんだ?




まず美鳥が代々木駅の地上に登って、周辺の探査をした。

大江戸線代々木駅からA2出口を通って、JR線の高架を潜り、タイムズスクエア側に出る。

そこからレディの行きつけの、おそらくは大変いかがわしい服飾屋へはすぐであるという。


「こっち側は人通りが少ないのね?」


美鳥も、あまり新宿駅には降りたことが無かった。


「ああ。

高架の上はタイムズスクエアとか言って賑やかなんだが、地上は人目につかないんだ」


レディは涼やかに語る。


「えー、賑やかな方に行きたいな」


カブトは駄々をこねる。


「変装が済めば行けるさ。

まー順調に済めば1時間後には自由に歩き回れる」


レディは保証した。


「誠ッち、この辺は地元なんじゃな無いスか?」


川上は、すっかり心を許して誠に話しかける。

が、誠は、そう言う間柄の人間を持った経験がないため、なにか落ち着かない気分だ。


「そうだね…。

紀伊国屋書店とかには専門書を探しに来たりするんだけど、こっち側を歩くのは今日が始めてなんだ」


新宿というよりは、新宿御苑に近いせいもあってか、静かな空気が流れているような場所に感じる。


「うっかり影とか使わないのよ。

影を出した途端、他の影繰りに感知される恐れがあるわ」


美鳥が警告する。


「普通、その程度でバレないよね?」


カブトは不思議がった。


「たぶん今のここは、影繰りの密度がものすごく高いわ。

微かにも能力を使ったら、えらい事になりそうに感じる…」


美鳥も、何か戸惑っているような感じで。


「なんで新宿にこんな数の影繰りが集まっているのかしら?」


もっと平穏な平日の午前を予想していた美鳥は、戸惑った。


美鳥の通り過ぎる巨大家具店の手前のベンチに座り、渡辺龍がハワイのTシャツの上から厚手のジャケットを羽織っていた。


ゴゥと賑やかな音を立ててスケボーに乗り、アイチが先のローソンで買った飲み物を持って渡辺龍の元に戻ってきた。


「何か今日は、餓鬼が多いな?」


それほど繁華街とも言えない新宿と代々木の間のこの辺にも、複数の子供たちが集団でフラフラしていた。


「あれだろ?

卒業式の後の休みな訳さ」


渡辺龍の説明に、アイチはああ、と頷き、


「4月7日とかまで、ずーと休みな訳だ。

いいねぇ、若者は!」


渡辺龍は苦笑する。

アイチも24歳、渡辺から見たら若者も良いところだ。


彼ら二人は、偶然中野で知り合って、現在興信所を経営している。

社員は2名。

渡辺龍とアイチだ。


影繰りなので荒事に強く、別にホームページを作るでもないが、そこそこ仕事は途絶えない。

とはいえ、会社と言うのはいくら金があってもいい。

5000万があれば、事務に可愛い女の子の一人も雇えようというものだ。


とはいえ、ただ新宿をブラブラしていても賞金首がどこにいるのか皆目見当がつかないのでSNSを調べようか、とニトリまで出てきたが、前に呟いた発信者は、それ以後沈黙を続けているようだ。


新宿、とかでも検索しようか、と思ったところ…。


「てめぇ影繰りだろ!」


不意に路上で起こった叫びに、美鳥たちは足を止め、渡辺龍とアイチは、ベンチを立ち上がって、道を覗いた。


体は大きいが、中学生か高校生らしい男子の6人組が、より巨大な1人の男に突っかかっていた。

巨大な男は、ゆうに180センチを超えており、少年たちの間から見える肩幅もずっしりと広がっている。


「なんでそんな事を言う?」


巨大な男は、低音の声でそんな事を穏やかに返している。


「バァーカ、俺の感知能力は影繰りそのものを感知できるんだよ!」


へぇ、と誠は感心した。


「便利な感知能力ですね」


「とも言えないわね」


美鳥は言う。


「こっちには気が付かないで、目立つ男だけに突っかかるのではね」


巨大な男は薄く笑った。


「…それで、どうするというんだ…?」


影を感知できるという少年は勝ち誇っていった。


「ぶっ殺す!」


同時に、6人が影を纏っていた。

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