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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
62/220

60 1ミリ

キリュウが予備動作もなく、トンと地上3メ-トルに跳び上がった。


噛みつきか、或いはもう一つの必殺技、炎のダンスか!


焦りながら川上は考えるが…!


どうもコマンド入力の音を聞く限り、複雑な入力をしたような気がした。


だとしたら炎のダンスだ。


問題は、川上が炎のダンスがどういう技かを知らない事だった。

イメージとしては、レディさんの分銅の爆発ような大破壊技を考えるが、しかし。


これは格ゲーなはずだ。

現に俺は、ゲームの世界に入り込んでしまっている。

つまり、複数人にダメージを与える技など意味が無い、はずだ…。


ベーシックな格ゲーの技で考えるなら、飛び道具的な技とか、火炎を吐くとかそんなものではないか?

一対一で有利に働くロングスパンの攻撃。

キリュウというキャラの戦いのバリエーションと考えるならば、大きなダメージを与える接近技の噛みつき、があるのならば、距離を取って放つタイプの技はゲームバランス上、一つは必要な気がする。


ただし、ドーンファンタジーはヘックス画のゲーム。

川上が知っているような格闘ゲームとは、やや思想が違ってもおかしくはない。

黎明期ならではの実験や、後世には残らなかったアイディアがあってもおかしくはない。

第一、今年30のオタク男が、わざわざ思い入れのある自分世代のゲームを離れて、己の武器に選んだのだ。

そこには、何かの意味が存在するような気がした。


避けなければならない!


川上は、急いで左右に視線を走らせた。


背後は鋼鉄製の扉であり、逃れようがない。

左右は…。


右は、扉があり、そこから数メートル奥に座席があった。

左は、1メートル先は、熊のような大男が革ジャンを着て、サングラスをかけ、試合を観戦している。


スペースがあるのは右だった。

が、なぜか川上の本能は左に走り、キリュウの側面を接近するコースを取っていた。


川上の予測通りロングレンジの攻撃なのであれば、横に逃げるより接近した方が相手の意表を突けるのではないか、と瞬間、考えたのだ。


キリュウは、空中でクルクルと回り始めた。

やはり炎のダンスだ!


もし予想通りに遠距離攻撃なのだとしたら、回転しているのはどういう意味だ?

乱打撃ちをするような技という事だろうか?


川上はキリュウの背後に逃げる事を考えていたのだが、もし弾を四方にばらまくような技なら背後を取る意味が無い。


そして。


キリュウに近づいてみると、3メートルという高さ、それほどに届かない高さではなかった。

バスケットボールのゴール程度の高さだ。


蹴りならば、届くんじゃないのか…?


瞬間、躊躇した川上だが、心を決めた。


逃げ回るだけでは勝てないのだ。

とにかく一度、キリュウを倒す必要があった。


川上は鋼鉄の床を蹴り、跳び上がった。


そうか!


俺もゲームの中にいる訳だ!


川上は、自分がさっき、キリュウの噛みつき攻撃を避けられた奇跡を思い出した。


俺の動きも、現実の運動能力とは違っているのだ。

これは、公平なゲームの中だからこそだった。


川上は、キリュウの足元から飛び跳ねて、垂直にキリュウの顎に、スニーカーの爪先を食い込ませた。


キリュウの顎から、火が噴き出した。

キリュウが、何故か爆発したのだ。


燃えながら床に落ち、さらに盛大に炎を吹き上げた。


演出か?


それとも勝ったのか?


川上は、急いでキリュウの上のゲージを見上げた。

凄い勢いで、少なくなっていた。


やった、と思うが、同時に嫌な予感もする。

格ゲーは、最後に1ミリ、ゲージが残って、そこから逆転、等という現実の戦いでは考えらないことが起こる場所だ!


川上は息を呑んでゲージを見つめた。


ゲージが止まった。


やっぱり!


ゲージは、ほんの1ミリ、赤い帯が残っている。


ゆらり、とキリュウは立ち上がった。


リアルにこの姿を見ると、まるでホラ-映画のゾンビのようだ。


ヤバい、オタク男もこのゲージでは本気を出すだろう。


とにかく、川上には必殺技などないし、現実空間よりは俊敏に動けるとはいえ、キリュウの優位は変わらない。

さっきの爆発の意味は解らないが、おそらくゲームの設定的な事なのだろう。


問題は、やはりオタク男が、誰もが知ってる格ゲーではなく黎明期のドーンファンタジーをあえて選んだ真意だった。


たぶん理由はあるハズだ。


噛みつきが、エグいからか?


しかし、その割に多用しない…。


今まで見た限りでは、メジャーなゲームよりキリュウが優れている点として思えるのは、噛みつきの4メートルという射程と2メートルという攻撃範囲の無茶苦茶な広さだった。


しかし謎解きをしている場合ではなかった。


1発。


1発、攻撃が入れば、川上は勝てるはずなのだ。


ここはともかく、迅速に攻撃を入れるときだった。

小パンチでも何でも、とにかくダメージを入れさえしたら、勝てるのだ。


川上はキリュウに突進した。


キリュウは、意表をついてか川上と正面衝突するように走った、と思うと横に飛び、さっきの革ジャン親父の脇に飛び込んだ。


なんだ?


思う間もなく、キリュウは親父の胸に腕を突っ込む。


ブスリ、とキリュウの腕が革ジャンの中に入ってしまう。


そして…。


これがレトロゲームの理由だったのか…!


レトロゲームには、裏技や隠しアイテム、知っていなければ得が出来ない、反則技が存在している!

マリオの隠しルートとか、秘密の部屋などだ。


キリュウが親父の胸から取り出したのは、リボルバー式の拳銃だった。



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