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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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誠とサラリーマンが、目の前のボディビルダーと共に早くなったのだ!


あたしが遅くなっていた…。


相手の影は、対戦相手を遅くする性質があるようだ。


だが、それだけでは解けない謎があった。

美鳥の蝶を粉砕する能力だ。


影繰りは、様々な物質を影を使って作り出すが、基本、その性質は影繰りのイマジネーション、いやもっと根源的な精神の無意識的なリビドーに影響されている。


美鳥の蝶が相手の体に貼り付いて取れなくなるのは、だから美鳥の無意識的性質によるところが大きいのだ。

美鳥は思い当たる節もある。


美鳥は、影繰りになる前、一人の大人の男と付き合っていた。

美鳥は、女として付き合っていたつもりだった。

が、相手はそうではなかった。


そして別の、大人の女とその男が付き合っているのを知ったとき、美鳥に生まれた感情は、まさに黒い蝶だった。貼り付いて絶対に離れない黑い蝶。

この蝶が、男を殺した…。


あたしがそういう女だっていうのを、この蝶は嫌でも思い出させてくれるんだ。


どこか自分の性質が、アクトレスやミオさんのような、男だろうが戦車だろうが粉砕して前進する、というようなタフネスとは違うものであることは、美鳥も不満ながらも理解をしていた。

でも、この蝶だって、使いようでは、二人に負けないような破壊力を持ちうるはずだ。


そう思い、日々研鑽する美鳥だったが、誠や青山、井口など新しい影繰りが仲間に加わるごとに、単純な体力では、すぐに男子に追い抜かれる事実は感じていた。


最近は、まだ貧弱な体つきの誠にも、やられてしまう事もある。


しかし影なら、誰だって1発で殺せる…。


それは美鳥の矜持であったが…。


この男は、何故、美鳥の蝶をやすやすと砕くのだろうか…。

誰にも剥がせない、どんな力にも負けない、ある意味美鳥の怨念のような暗い力に満ちた影なのに…。


男は、美鳥を遅くして、超高速に美鳥には見えるスピードで、美鳥に巨大な体でタックルを繰り出してきた。

子供のような体格の美鳥を、寝技で仕留めてしまうつもりのようだ。


ん…。


美鳥は、自分が最初に男に感じた疑問に、再び立ち返った。


この男は、なぜ、ほとんど脂肪を体から追い出したボディビルダーのような肉体で、こんなに素早く動けるのだ?

そして、美鳥を遅くする力と言うのは、いったいどういう力なのか?


あたしの力か!


不意に美鳥は気が付いた。


男の子なら、RPGなどをよくするから、もっと早く気が付いたのかもしれない。


ドレイン…。


RPGなら、アンテッド系のモンスターなどが使う能力だ。


この男、あたしのエネルギーを吸い取って、脂肪燃焼を介さずにエネルギーを得ているのだ。


と、いう事は…?


あたしの蝶も、ドレインされて、粉々に散っていたのか…。


なるほど、面白い、変わった力だ。

男も、見た目ほど脳筋なリビドーの持ち主では無いらしい。

だが、蚊のように他人のエネルギーを吸い取るなど、判ってみるとなかなか不快なリビドーではあるが…。


だが、理屈が判れば、対応はできる。

誠のように、理屈が判っても対応できない影ではない。


美鳥はスカートのポケットから刃物を取り出すと、ボタンを押した。


ナイフが飛び出す、ジャックナイフと呼ばれる武器だ。

現在、その危険性ゆえ日本では使用を禁じられているが、内調を通じてならば、容易く入手できる。


超高速でタックルを仕掛けた男の目に、ナイフを突き立ててやった。


男は悲鳴を上げ、慌てて肥大した筋肉だらけの右手で、顔を庇った。


男は、血を吹きながら大江戸線の入り口と座席の間の鉄パイプに激突し、したたか頭を打った。


「あんたみたいなデッカイ蚊にエネルギーを吸い取られるんて、不愉快なのよ!」


黒い、よく磨かれたパンプス。

しかし、これは戦闘用で、安全靴でもあり、また足の指の操作でスパイクを出すこともできる。


鉄のスパイクを出した足で、男のピカピカの体を踏みつけてやると、男は丸まって止めてくれ、と哀願した。


美鳥は男の手に刺さったままのナイフを抜くと、男の喉笛に先端を軽く刺して、


「影繰りが対決したら、負けた奴がどうなるか、説明するまでも無いわよね」


と淡々と教えてやると、巨体の男は、泡を吹いて失神してしまった。

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